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特別な人
特別な人 第198話
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「……なぁ、なんか空気、重くねぇ?」
「悠栖、黙って食べた方が良いよ。こういう時って悠栖は失言王なんだから」
「! そんなこと――――」
「あるの。だから黙って食べる」
「はい……」
目の前で悠栖と朋喜が聞こえる声で内緒話をしてて、いつもならそれに茶々を入れる慶史は黙って朝食を食べている。
悠栖は慶史をチラチラ見ながらも朋喜に言われた通り黙って朝ご飯を食べ始めるんだけど、やっぱり黙っていられないのか、結局朋喜の忠告を無視して慶史と、そして僕に向かって口を開いた。
「なぁ! 昨日俺らが寝てる間に何があったんだよっ!?」
お茶碗を音を立てて置くと、寝るまでは普通だったのに! って僕達を交互に睨む悠栖。
分かり易い態度をとってしまっているのだから、ちゃんと何があったか説明するのが筋だとは思う。
でも僕は自分が嫌な奴だと口にしたくないという保身に口を噤んで俯いてしまう。
慶史も、悠栖の声がまるで聞こえていないかのように静かに食事をとっていて……。
「おい! 聞こえてるんだろう!? 無視すんなよ!!」
焦れた悠栖が今度はテーブルを叩く。
その音は寮の食堂に響き渡って、まばらながらも朝食を取っていた他の寮生達が何事だと此方に視線を向けきた。
僕は音と悠栖の気迫が怖くてますます視線を下げてしまって、耳に届く恐らく朋喜のものだろう溜め息に、自分の醜さを見透かされているような気さえした。
「悠栖、煩い。黙って食べて」
「でも朋喜―――」
「悠栖はこんなところで問い詰められて喋りたいって思うの?」
「! そ、それは、思わないけど……」
場所を考えなよ。
呆れたと言わんばかりに息を吐く朋喜の言葉に、悠栖は意気消沈したように静かになった。
騒がしさを取り戻す食堂。その中で僕達が座るテーブルだけが別空間のようだ。
カチャカチャと食器の音が僅かに響くだけの空間は、時間の進みが遅く感じる。
僕は昨日までは美味しいと思っていた寮の朝食を水を使って必死に咀嚼する。
おなかは全く空いていないし、どんよりした気持ちに料理の味は全く感じなくて、食べても食べてもお皿の料理は全然減ってくれない。
(あ……どうしよう……、この感じ、ダメな奴かも……)
まるでゴムを食べているような感覚に苦痛を覚えていたその時、僕はある感覚を覚えて食事の手を止め水を求めた。
一気に水を飲み干して口の中を空っぽにするも、嫌な感覚は消えてはくれない。
(ダメだ、吐く……)
突如襲ってきた不快感。胃の中が逆流してくる予感を感じ、僕は慌てて席を立ってトイレへと走った。
「マモ!?」
「葵君どうしたの!?」
背後から聞こえる悠栖と朋喜の驚いたような声。
でも今はその声に応える余裕なんてなくて、僕は食堂から飛び出すとそのままトイレへと駆けこんだ。
折角頑張って食べた朝食は全部出てしまって、申し訳なさに心臓が潰されそう。
目尻に浮かぶ涙に僕は必死に泣くのを堪えるも、結局吐きながら泣いてしまっていた。
(苦しいっ、苦しいよ、虎君……)
虎君の本当の想いを知ってからずっと情緒不安定だったから、こうなる予感はしていた。
でも、この不安を、心を吐き出せる人はいなくなってしまった。
僕は口を拭って水を流した後、そのまま蹲って涙した。
だって、思い出しちゃったんだ。
今まで極度の不安を感じてこうなった時、僕の隣にはいつも虎君がいてくれた。虎君が話を聞いてくれていた。『大丈夫だよ』って言って、僕を宥めてくれていた。
いつだって優しく僕を支えてくれていた虎君。
その思い出は愛しいもののはずなのに、今はこんなにも辛い。
(虎君っ……虎君、ぼく、僕もう消えちゃいたいよ……)
昔を思い出す度、僕はずっとずっと虎君が好きだったんだと思い知る。それこそ、物心つく前からずっと。
でも、長い年月をかけて育った想いは行き場を失い、僕を蝕む物へと変わってしまった。
大好きな親友を傷つけてしまうほどの凶暴な感情は、この先消えることはあるのだろうか……?
「悠栖、黙って食べた方が良いよ。こういう時って悠栖は失言王なんだから」
「! そんなこと――――」
「あるの。だから黙って食べる」
「はい……」
目の前で悠栖と朋喜が聞こえる声で内緒話をしてて、いつもならそれに茶々を入れる慶史は黙って朝食を食べている。
悠栖は慶史をチラチラ見ながらも朋喜に言われた通り黙って朝ご飯を食べ始めるんだけど、やっぱり黙っていられないのか、結局朋喜の忠告を無視して慶史と、そして僕に向かって口を開いた。
「なぁ! 昨日俺らが寝てる間に何があったんだよっ!?」
お茶碗を音を立てて置くと、寝るまでは普通だったのに! って僕達を交互に睨む悠栖。
分かり易い態度をとってしまっているのだから、ちゃんと何があったか説明するのが筋だとは思う。
でも僕は自分が嫌な奴だと口にしたくないという保身に口を噤んで俯いてしまう。
慶史も、悠栖の声がまるで聞こえていないかのように静かに食事をとっていて……。
「おい! 聞こえてるんだろう!? 無視すんなよ!!」
焦れた悠栖が今度はテーブルを叩く。
その音は寮の食堂に響き渡って、まばらながらも朝食を取っていた他の寮生達が何事だと此方に視線を向けきた。
僕は音と悠栖の気迫が怖くてますます視線を下げてしまって、耳に届く恐らく朋喜のものだろう溜め息に、自分の醜さを見透かされているような気さえした。
「悠栖、煩い。黙って食べて」
「でも朋喜―――」
「悠栖はこんなところで問い詰められて喋りたいって思うの?」
「! そ、それは、思わないけど……」
場所を考えなよ。
呆れたと言わんばかりに息を吐く朋喜の言葉に、悠栖は意気消沈したように静かになった。
騒がしさを取り戻す食堂。その中で僕達が座るテーブルだけが別空間のようだ。
カチャカチャと食器の音が僅かに響くだけの空間は、時間の進みが遅く感じる。
僕は昨日までは美味しいと思っていた寮の朝食を水を使って必死に咀嚼する。
おなかは全く空いていないし、どんよりした気持ちに料理の味は全く感じなくて、食べても食べてもお皿の料理は全然減ってくれない。
(あ……どうしよう……、この感じ、ダメな奴かも……)
まるでゴムを食べているような感覚に苦痛を覚えていたその時、僕はある感覚を覚えて食事の手を止め水を求めた。
一気に水を飲み干して口の中を空っぽにするも、嫌な感覚は消えてはくれない。
(ダメだ、吐く……)
突如襲ってきた不快感。胃の中が逆流してくる予感を感じ、僕は慌てて席を立ってトイレへと走った。
「マモ!?」
「葵君どうしたの!?」
背後から聞こえる悠栖と朋喜の驚いたような声。
でも今はその声に応える余裕なんてなくて、僕は食堂から飛び出すとそのままトイレへと駆けこんだ。
折角頑張って食べた朝食は全部出てしまって、申し訳なさに心臓が潰されそう。
目尻に浮かぶ涙に僕は必死に泣くのを堪えるも、結局吐きながら泣いてしまっていた。
(苦しいっ、苦しいよ、虎君……)
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でも、この不安を、心を吐き出せる人はいなくなってしまった。
僕は口を拭って水を流した後、そのまま蹲って涙した。
だって、思い出しちゃったんだ。
今まで極度の不安を感じてこうなった時、僕の隣にはいつも虎君がいてくれた。虎君が話を聞いてくれていた。『大丈夫だよ』って言って、僕を宥めてくれていた。
いつだって優しく僕を支えてくれていた虎君。
その思い出は愛しいもののはずなのに、今はこんなにも辛い。
(虎君っ……虎君、ぼく、僕もう消えちゃいたいよ……)
昔を思い出す度、僕はずっとずっと虎君が好きだったんだと思い知る。それこそ、物心つく前からずっと。
でも、長い年月をかけて育った想いは行き場を失い、僕を蝕む物へと変わってしまった。
大好きな親友を傷つけてしまうほどの凶暴な感情は、この先消えることはあるのだろうか……?
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