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大切な人
大切な人 第22話
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「け、慶史、おまえっ……」
「何っ!?」
「俺のこと、友達だと思ってたのか?」
「! コロス!!」
真っ赤な顔をした慶史の顔が修羅に変わって、今のタイミングで茶化すか普通!? って大激怒。
殴るだけじゃ足りないと暴れる慶史を、今度ばかりは僕も止めず見守ってしまうのは仕方ない。
「なぁ、アレ、止めねぇーの?」
「止めないよ」
やれやれ……って肩を竦ませる僕に、凪ちゃんとしっかり手を繋いだ茂斗が声を掛けてくる。
首絞められてるぞ。と指さされる先には、じゃれてるにしてはバイオレンスな慶史と悠栖の姿が。
自分こそ悠栖を殴ろうとしていたくせに、今の状況を心配する茂斗は優しいのかそうじゃないのか分からない。
「なんで?」
「あれは二人の友情確認の手段だから、だよね?」
死なねぇーか?
そう質問を重ねてくる茂斗に応えるのは朋喜で、僕に同意を求めてくる。
茂斗は『そうなのか?』って視線を向けてきて、そんな茂斗の後ろで凪ちゃんも同じ顔をしているから僕は苦笑交じりに「そうだよ」っと頷いた。
「へぇ……。ああいう藤原、瑛大相手にしか見たことなかったけど、へぇ」
「慶史君、結城君に対してああだったの?」
「おう。藤原って超ツンデレだろ? 懐けば懐くほど態度が凶悪になっていくから瑛大は毎日殴られ蹴られだったよな?」
「そうだね。あの頃の二人はそうだったね……」
殴られても蹴られても『愛情の裏返しだ』って笑ってた瑛大をドエムだと思ってた。
茂斗はそう昔を懐かしんでるけど、僕はいろんなことが頭に過って心臓が痛くなる。
「でも、葵君に対してはそんなことないよね?」
「当然だろ。葵を殴った時点で鉄拳制裁が待ってるからな」
「ああ、お兄さん――来須先輩から?」
なるほどと納得する朋喜。でも、茂斗はそんな朋喜に「違う違う」と訂正を入れる。
「虎だけじゃなくて、俺からもな。……いや、むしろ俺からか?」
「そうだね。僕にちょっかい掛ける人掛ける人みーんな蹴散らしてたよね」
軽口にすら制裁を下すから、友達を作るのが大変だった。
そう昔の茂斗を茶化せば、茂斗は「仕方ねーだろ」ってムッとした表情を見せる。
「うん。分かってるよ。僕が頼りないから茂斗が守ってくれてたんだよね?」
「それもあるけど、殆どは虎の命令だからな」
「え?」
頼りない弟が傷つかないように双子とはいえ兄として守ってくれていたんだと思っていた僕を驚かせるのは、茂斗の暴露だ。
僕は突然出てきた虎君の名前に、茂斗を見上げ、なにそれ? と詰め寄った。
「あ、やべ……」
僕の様子に、茂斗は口が滑ったとばかりにたじろぎ、後退る。
手を繋いでいた凪ちゃんはオロオロしているだけで動かなかったから、凪ちゃんと手を離さない茂斗はあっという間に僕に捕まってしまった。
「今の、どういう意味? 虎君の『命令』って、何?」
「な、何言ってんだよ! 俺、そんなこと言って―――」
「往生際が悪いんじゃない? もういいじゃない。先輩は葵をゲットしたんだし、あいつの悪行暴露しちゃいなよ」
「! てめ、藤原っ、お前他人事だと思いやがって……」
茂斗ははぐらかそうと必死。
でも、悠栖とのじゃれ合いを終えた慶史が僕の援護射撃をしてくれて、はぐらかしきれない。
「大丈夫だって。何を聞いても先輩への愛は変わらないよね? ね? 葵」
僕の肩に手を乗せる慶史は、『どんな衝撃的な事実を聞こうとも』と意味深な言い方をする。
意地悪な言い方だと思いながらも、でも僕の虎君への想いは揺るがないから、「当たり前でしょ!」って慶史の問いかけに大きな声を返してしまう。
「ほら、白状しちゃいなよ、茂斗」
「っ、お、俺がばらしたって言うなよっ! 絶対、絶対だからな!!」
しつこいぐらいに念を押してくる茂斗に僕は力強く頷く。
そして漸く教えられる。昔からもらっていた虎君の愛を。
「何っ!?」
「俺のこと、友達だと思ってたのか?」
「! コロス!!」
真っ赤な顔をした慶史の顔が修羅に変わって、今のタイミングで茶化すか普通!? って大激怒。
殴るだけじゃ足りないと暴れる慶史を、今度ばかりは僕も止めず見守ってしまうのは仕方ない。
「なぁ、アレ、止めねぇーの?」
「止めないよ」
やれやれ……って肩を竦ませる僕に、凪ちゃんとしっかり手を繋いだ茂斗が声を掛けてくる。
首絞められてるぞ。と指さされる先には、じゃれてるにしてはバイオレンスな慶史と悠栖の姿が。
自分こそ悠栖を殴ろうとしていたくせに、今の状況を心配する茂斗は優しいのかそうじゃないのか分からない。
「なんで?」
「あれは二人の友情確認の手段だから、だよね?」
死なねぇーか?
そう質問を重ねてくる茂斗に応えるのは朋喜で、僕に同意を求めてくる。
茂斗は『そうなのか?』って視線を向けてきて、そんな茂斗の後ろで凪ちゃんも同じ顔をしているから僕は苦笑交じりに「そうだよ」っと頷いた。
「へぇ……。ああいう藤原、瑛大相手にしか見たことなかったけど、へぇ」
「慶史君、結城君に対してああだったの?」
「おう。藤原って超ツンデレだろ? 懐けば懐くほど態度が凶悪になっていくから瑛大は毎日殴られ蹴られだったよな?」
「そうだね。あの頃の二人はそうだったね……」
殴られても蹴られても『愛情の裏返しだ』って笑ってた瑛大をドエムだと思ってた。
茂斗はそう昔を懐かしんでるけど、僕はいろんなことが頭に過って心臓が痛くなる。
「でも、葵君に対してはそんなことないよね?」
「当然だろ。葵を殴った時点で鉄拳制裁が待ってるからな」
「ああ、お兄さん――来須先輩から?」
なるほどと納得する朋喜。でも、茂斗はそんな朋喜に「違う違う」と訂正を入れる。
「虎だけじゃなくて、俺からもな。……いや、むしろ俺からか?」
「そうだね。僕にちょっかい掛ける人掛ける人みーんな蹴散らしてたよね」
軽口にすら制裁を下すから、友達を作るのが大変だった。
そう昔の茂斗を茶化せば、茂斗は「仕方ねーだろ」ってムッとした表情を見せる。
「うん。分かってるよ。僕が頼りないから茂斗が守ってくれてたんだよね?」
「それもあるけど、殆どは虎の命令だからな」
「え?」
頼りない弟が傷つかないように双子とはいえ兄として守ってくれていたんだと思っていた僕を驚かせるのは、茂斗の暴露だ。
僕は突然出てきた虎君の名前に、茂斗を見上げ、なにそれ? と詰め寄った。
「あ、やべ……」
僕の様子に、茂斗は口が滑ったとばかりにたじろぎ、後退る。
手を繋いでいた凪ちゃんはオロオロしているだけで動かなかったから、凪ちゃんと手を離さない茂斗はあっという間に僕に捕まってしまった。
「今の、どういう意味? 虎君の『命令』って、何?」
「な、何言ってんだよ! 俺、そんなこと言って―――」
「往生際が悪いんじゃない? もういいじゃない。先輩は葵をゲットしたんだし、あいつの悪行暴露しちゃいなよ」
「! てめ、藤原っ、お前他人事だと思いやがって……」
茂斗ははぐらかそうと必死。
でも、悠栖とのじゃれ合いを終えた慶史が僕の援護射撃をしてくれて、はぐらかしきれない。
「大丈夫だって。何を聞いても先輩への愛は変わらないよね? ね? 葵」
僕の肩に手を乗せる慶史は、『どんな衝撃的な事実を聞こうとも』と意味深な言い方をする。
意地悪な言い方だと思いながらも、でも僕の虎君への想いは揺るがないから、「当たり前でしょ!」って慶史の問いかけに大きな声を返してしまう。
「ほら、白状しちゃいなよ、茂斗」
「っ、お、俺がばらしたって言うなよっ! 絶対、絶対だからな!!」
しつこいぐらいに念を押してくる茂斗に僕は力強く頷く。
そして漸く教えられる。昔からもらっていた虎君の愛を。
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