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大切な人
大切な人 第23話
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「虎に頼まれてたんだよ。『葵にちょっかい掛ける奴は全員教えてくれ』って」
「教えるだけ? 違うよね?」
「面倒事起こしそうな相手には『制裁』、それ以外の連中は『監視』。葵がちょっとでも傷つくようなことがあれば、俺と瑛大が虎から鉄拳制裁だったよ。……藤原、お前楽しんでるだろ」
教えられる秘密。
それに僕は驚きを隠せない。
「楽しんでないよ。っていうか、やっぱり監視されてたんだ? 俺」
「最初だけな。お前は面倒事起こすタイプ以上に厄介な『ライバル』だったからな」
「勝手にライバル視してきて牽制されるとか、本当、迷惑この上ないんだけど!」
不機嫌を露わにする慶史は腕を組み、「どうせ今でも結城使って監視を続けてるんでしょ」と茂斗に確認した。
瑛大が自分達と一緒に中等部進学時にゼウスからクライストに編入したのは虎君の指示だったんだろうと。
「まぁ、そうだな」
「本当、過保護っていうか異常だよね。あの人の葵への執着」
肩を竦ませる慶史は僕を振り返ると尋ねてくる。あの人の本性を知って逃げたくならない? と。
「逃げたくなんてならないけど、でも、本当なの? 瑛大のこと……」
「本当だよ。あいつ、俺にも言ってきたしな」
そう昔を思い出す茂斗は凪ちゃんを振り返って、「流石に無理だって断ったけどな」と笑った。
(そっか。クライストに編入してたら凪ちゃんと一緒に居る時間が無くなってたもんね)
虎君が僕を最優先してくれるように、茂斗の最優先は凪ちゃんだ。いくら虎君のお願いとはいえ、『分かった』と言えないのも無理はない。
そして虎君を実の兄のように慕っている瑛大が虎君の『お願い』を聞かないわけがない。
「そっか……。瑛大、虎君に言われたからクライストに……」
僕と慶史がクライストに編入すると分かった時に激怒した瑛大。
それなのに自分もクライストに編入すると言ってくれたのは、僕達が親友だからだと思っていた。
けどそうじゃなくて、本当は虎君の『お願い』だったからだなんて、自分の勘違いが恥ずかしい。
すると、落ち込んでいる僕に茂斗は「瑛大の名誉のために言っとくけど」と口を開いた。
「確かにあいつにとって虎の命令は絶対だけど、クライストに編入したのはそれだけじゃねーからな?」
「え……?」
「あいつもお前らが心配だったから『監視役』を引き受けたんだよ。全寮制の学園に葵と藤原の二人を放り込んで何かあったら大変だからって」
今瑛大がクライストに居るのは、瑛大本人の意志だ。
そう言った茂斗は僕じゃなくて何故か慶史を見て、
「虎の言葉はただの切欠で、あいつを動かしたのはお前等なんだよ」
そう伝えた。
「……なんで俺に言うわけ?」
「別に。ただあいつにもう少し優しくしてやって欲しいだけだよ。あいつ、空まわると葵に八つ当たりするからな」
「はぁ? 俺はいつだって優しいでしょ?」
言いがかりは止めてくれない?
慶史はそう眉を顰めるも、いつものような辛辣な言い方とは違っていたから思うところがあるようだ。
「……虎のこと、嫌になったりしてねぇよな?」
「え? 当たり前でしょ? なんでそんなこと聞くの?」
慶史を思って神妙な顔をしていた自覚はあるけど、茂斗のコレは酷い勘違いだ。
僕は、嫌いになるわけないでしょ? って茂斗に尋ね返す。何でそんな勘違いするの? って。
「だってさ、藤原じゃねぇーけど、普通さ、引く、だろ?」
言葉を探しながらも見つからなかったのか、茂斗は言葉を小さく尋ねてくる。
そして茂斗の視線が一瞬凪ちゃんに向いたのを僕は見逃さなかった。
(そっか。凪ちゃんに同じように思われないのか心配なんだな、きっと)
茂斗の全然秘められてない想い。それを凪ちゃんが迷惑だと思っていないか、不安なんだろう。
僕はそんな双子の片割れにちょっと呆れてしまう。今凪ちゃんが手を握っているのはどうしてか。それを考えれば僕の答えなんて要らないだろうに。と。
「僕は、虎君がずっと僕のことを大切にしてくれてるって分かって嬉しいよ?」
「! 本当か?」
「こんな嘘ついてどうするの。……むしろ、虎君のこともっともっと好きになったよ」
虎君に貰ってきた愛を、想いを、僕もこれからちゃんと返していきたいって思ったよ。
そう虎君を想って笑ったら、茂斗は安心したように笑い返してくれた。
「教えるだけ? 違うよね?」
「面倒事起こしそうな相手には『制裁』、それ以外の連中は『監視』。葵がちょっとでも傷つくようなことがあれば、俺と瑛大が虎から鉄拳制裁だったよ。……藤原、お前楽しんでるだろ」
教えられる秘密。
それに僕は驚きを隠せない。
「楽しんでないよ。っていうか、やっぱり監視されてたんだ? 俺」
「最初だけな。お前は面倒事起こすタイプ以上に厄介な『ライバル』だったからな」
「勝手にライバル視してきて牽制されるとか、本当、迷惑この上ないんだけど!」
不機嫌を露わにする慶史は腕を組み、「どうせ今でも結城使って監視を続けてるんでしょ」と茂斗に確認した。
瑛大が自分達と一緒に中等部進学時にゼウスからクライストに編入したのは虎君の指示だったんだろうと。
「まぁ、そうだな」
「本当、過保護っていうか異常だよね。あの人の葵への執着」
肩を竦ませる慶史は僕を振り返ると尋ねてくる。あの人の本性を知って逃げたくならない? と。
「逃げたくなんてならないけど、でも、本当なの? 瑛大のこと……」
「本当だよ。あいつ、俺にも言ってきたしな」
そう昔を思い出す茂斗は凪ちゃんを振り返って、「流石に無理だって断ったけどな」と笑った。
(そっか。クライストに編入してたら凪ちゃんと一緒に居る時間が無くなってたもんね)
虎君が僕を最優先してくれるように、茂斗の最優先は凪ちゃんだ。いくら虎君のお願いとはいえ、『分かった』と言えないのも無理はない。
そして虎君を実の兄のように慕っている瑛大が虎君の『お願い』を聞かないわけがない。
「そっか……。瑛大、虎君に言われたからクライストに……」
僕と慶史がクライストに編入すると分かった時に激怒した瑛大。
それなのに自分もクライストに編入すると言ってくれたのは、僕達が親友だからだと思っていた。
けどそうじゃなくて、本当は虎君の『お願い』だったからだなんて、自分の勘違いが恥ずかしい。
すると、落ち込んでいる僕に茂斗は「瑛大の名誉のために言っとくけど」と口を開いた。
「確かにあいつにとって虎の命令は絶対だけど、クライストに編入したのはそれだけじゃねーからな?」
「え……?」
「あいつもお前らが心配だったから『監視役』を引き受けたんだよ。全寮制の学園に葵と藤原の二人を放り込んで何かあったら大変だからって」
今瑛大がクライストに居るのは、瑛大本人の意志だ。
そう言った茂斗は僕じゃなくて何故か慶史を見て、
「虎の言葉はただの切欠で、あいつを動かしたのはお前等なんだよ」
そう伝えた。
「……なんで俺に言うわけ?」
「別に。ただあいつにもう少し優しくしてやって欲しいだけだよ。あいつ、空まわると葵に八つ当たりするからな」
「はぁ? 俺はいつだって優しいでしょ?」
言いがかりは止めてくれない?
慶史はそう眉を顰めるも、いつものような辛辣な言い方とは違っていたから思うところがあるようだ。
「……虎のこと、嫌になったりしてねぇよな?」
「え? 当たり前でしょ? なんでそんなこと聞くの?」
慶史を思って神妙な顔をしていた自覚はあるけど、茂斗のコレは酷い勘違いだ。
僕は、嫌いになるわけないでしょ? って茂斗に尋ね返す。何でそんな勘違いするの? って。
「だってさ、藤原じゃねぇーけど、普通さ、引く、だろ?」
言葉を探しながらも見つからなかったのか、茂斗は言葉を小さく尋ねてくる。
そして茂斗の視線が一瞬凪ちゃんに向いたのを僕は見逃さなかった。
(そっか。凪ちゃんに同じように思われないのか心配なんだな、きっと)
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「僕は、虎君がずっと僕のことを大切にしてくれてるって分かって嬉しいよ?」
「! 本当か?」
「こんな嘘ついてどうするの。……むしろ、虎君のこともっともっと好きになったよ」
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そう虎君を想って笑ったら、茂斗は安心したように笑い返してくれた。
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