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大切な人
大切な人 第26話
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慶史と朋喜の攻撃に悠栖は撃沈。半べそで「お前等……」って涙声を出されたら、放っておけない。
でも、悠栖の味方をしようと名前を呼ぶも、フォローの言葉が思い当たらなくて困った。
「マモも、思ってんの……?」
「えっと、それは、その……」
返答に困ってたら、それが答えとばかりに悠栖はまた落ち込む。マジでヒデと一緒のクラスになりませんように。と祈りながら。
激しく落ち込む悠栖をどう励ませばいいのかオロオロしていたら、見かねたからかそれとも単にからかい飽きたからか、慶史が「大丈夫だよ」と大袈裟に肩を竦ませて見せた。
「何が大丈夫なんだよ……」
「だから、俺達がクラスを離れることは絶対ないから、上野と一緒になっても大丈夫って事」
「はぁ? なんでそんなことお前に分かんだよ?」
膝をついて崩れ落ちていた悠栖の肩に手を乗せ意味深に笑う慶史。
僕も慶史の言葉の真意が分からず悠栖と二人揃って見上げれば、僕達はよっぽど頼りない顔をしていたのだろう。慶史だけじゃなく朋喜もプッと吹き出して笑った。
「慶史君、二人が可哀想だよ」
「可哀想って言う割に笑ってるじゃん、朋喜」
「だって、二人とも捨てられた子犬みたいな顔してるんだもん」
朋喜は笑いながら悠栖の頭をなでると、慶史を振り返って「慶史君が手を回してくれたの?」と尋ねた。
『手を回す』とは、一体どういう意味なんだろう?
「手を回すまでもないよ。教師は事なかれ主義ばっかりだし、面倒事は纏めておいた方が管理しやすいでしょ? だからだよ」
「別に僕達、面倒なことなんて起こさないよ?」
「男子校に可愛くて可憐な生徒が居ると、予期せぬ面倒事が起こったりするの。だから見張るにしても最低限の労力で済むようにって」
中等部で3年間一緒だった種明かしをする慶史は人差し指を立てると、
「高校生になったら、今まで以上に気を付けてよね。三人とも!」
と、僕達に注意を促した。
何を気をつけろというんだろう? と、僕が首を傾げたことを見逃さなかったのは、朋喜だ。
「男子高生の性欲って凄いって言うもんね。葵君、本当に気を付けて?」
「そうだな。穴を見たらとりあえず突っ込みたくなるってぐらい性欲が有り余るようになるらしいし。しかもヤリたいけど女子が周りが居ない環境となると身の危険は感じるよな。マモの」
「え!? 僕!?」
何故か僕の心配をする朋喜と悠栖。それに慶史は窘めるように怒りの声で二人の名前を呼んだ。
「俺の言葉、聞いてた? 三人に言ったんだけど!?」
「じょ、冗談じゃん……。そんな怒んなよ」
「お前の冗談は分かり辛いんだよ!」
言われなくてもちゃんと気を付けますぅ。
そうそっぽを向く悠栖。朋喜もそれに頷いて。
「いくら恋愛対象が男でも、好きでもない相手から無理矢理とか絶対嫌だしね」
「そりゃ初めてがレイプとか、一生トラウマだろ」
朋喜は恋愛対象が同性。でも、だからと言って誰でも良い訳じゃない。
そんな当然のことを言った朋喜に、悠栖が当たり前だと言いたげに肩を竦ませた。
僕は二人の会話に、思わず慶史を見てしまった。
(慶史……)
継接ぎだらけの慶史の心がバラバラになってしまわないか心配だったのだ。
でもそんな僕の心配を見透かしてか、慶史は僕の髪を乱暴にぐしゃぐしゃとかき乱してきた。
「そーそ! 泣いても喚いても助けなんて来ない。ろくに慣らさず無理矢理突っ込まれて流血とか、笑えないでしょ?」
僕が顔を上げられないように頭を押し込むように撫でまわしてくる慶史の手を、どうやっても払い除けられない。
いつもならすぐに『止めてよ』と手を払い除けられるのに、どうしても……。
「だから、本当に気をつけなよ? 危険と常に隣り合わせ! 分かった?」
「分かったよ」
「うん。僕もちゃんと気を付けるね」
「ならよし! ……葵も、だーい好きな先輩に『初めて』あげたいなら気を付けてね?」
緩められた手。慶史を見れば、にっこりと微笑まれる。
僕はそれに小さく頷くだけで、何も言えなかった……。
でも、悠栖の味方をしようと名前を呼ぶも、フォローの言葉が思い当たらなくて困った。
「マモも、思ってんの……?」
「えっと、それは、その……」
返答に困ってたら、それが答えとばかりに悠栖はまた落ち込む。マジでヒデと一緒のクラスになりませんように。と祈りながら。
激しく落ち込む悠栖をどう励ませばいいのかオロオロしていたら、見かねたからかそれとも単にからかい飽きたからか、慶史が「大丈夫だよ」と大袈裟に肩を竦ませて見せた。
「何が大丈夫なんだよ……」
「だから、俺達がクラスを離れることは絶対ないから、上野と一緒になっても大丈夫って事」
「はぁ? なんでそんなことお前に分かんだよ?」
膝をついて崩れ落ちていた悠栖の肩に手を乗せ意味深に笑う慶史。
僕も慶史の言葉の真意が分からず悠栖と二人揃って見上げれば、僕達はよっぽど頼りない顔をしていたのだろう。慶史だけじゃなく朋喜もプッと吹き出して笑った。
「慶史君、二人が可哀想だよ」
「可哀想って言う割に笑ってるじゃん、朋喜」
「だって、二人とも捨てられた子犬みたいな顔してるんだもん」
朋喜は笑いながら悠栖の頭をなでると、慶史を振り返って「慶史君が手を回してくれたの?」と尋ねた。
『手を回す』とは、一体どういう意味なんだろう?
「手を回すまでもないよ。教師は事なかれ主義ばっかりだし、面倒事は纏めておいた方が管理しやすいでしょ? だからだよ」
「別に僕達、面倒なことなんて起こさないよ?」
「男子校に可愛くて可憐な生徒が居ると、予期せぬ面倒事が起こったりするの。だから見張るにしても最低限の労力で済むようにって」
中等部で3年間一緒だった種明かしをする慶史は人差し指を立てると、
「高校生になったら、今まで以上に気を付けてよね。三人とも!」
と、僕達に注意を促した。
何を気をつけろというんだろう? と、僕が首を傾げたことを見逃さなかったのは、朋喜だ。
「男子高生の性欲って凄いって言うもんね。葵君、本当に気を付けて?」
「そうだな。穴を見たらとりあえず突っ込みたくなるってぐらい性欲が有り余るようになるらしいし。しかもヤリたいけど女子が周りが居ない環境となると身の危険は感じるよな。マモの」
「え!? 僕!?」
何故か僕の心配をする朋喜と悠栖。それに慶史は窘めるように怒りの声で二人の名前を呼んだ。
「俺の言葉、聞いてた? 三人に言ったんだけど!?」
「じょ、冗談じゃん……。そんな怒んなよ」
「お前の冗談は分かり辛いんだよ!」
言われなくてもちゃんと気を付けますぅ。
そうそっぽを向く悠栖。朋喜もそれに頷いて。
「いくら恋愛対象が男でも、好きでもない相手から無理矢理とか絶対嫌だしね」
「そりゃ初めてがレイプとか、一生トラウマだろ」
朋喜は恋愛対象が同性。でも、だからと言って誰でも良い訳じゃない。
そんな当然のことを言った朋喜に、悠栖が当たり前だと言いたげに肩を竦ませた。
僕は二人の会話に、思わず慶史を見てしまった。
(慶史……)
継接ぎだらけの慶史の心がバラバラになってしまわないか心配だったのだ。
でもそんな僕の心配を見透かしてか、慶史は僕の髪を乱暴にぐしゃぐしゃとかき乱してきた。
「そーそ! 泣いても喚いても助けなんて来ない。ろくに慣らさず無理矢理突っ込まれて流血とか、笑えないでしょ?」
僕が顔を上げられないように頭を押し込むように撫でまわしてくる慶史の手を、どうやっても払い除けられない。
いつもならすぐに『止めてよ』と手を払い除けられるのに、どうしても……。
「だから、本当に気をつけなよ? 危険と常に隣り合わせ! 分かった?」
「分かったよ」
「うん。僕もちゃんと気を付けるね」
「ならよし! ……葵も、だーい好きな先輩に『初めて』あげたいなら気を付けてね?」
緩められた手。慶史を見れば、にっこりと微笑まれる。
僕はそれに小さく頷くだけで、何も言えなかった……。
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