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恋しい人
恋しい人 第42話
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「葵、そんな意地悪言わないでくれ……頼むから……」
「き、聞いたのは虎君でしょっ」
「そうだけど。……葵にとっては何気ないことでも、俺にとってはめちゃくちゃ理性を揺さぶられることだって自覚はして欲しい……」
今もこのまま葵を襲ってしまいそうで怖い。
そう言って僕の手を握る虎君。
僕は唇を尖らせ不満を訴える。僕は虎君の傍に居たいって言ってるのに、ダメだって言ったのは虎君だからね?
「ほらまた……」
困ったような笑い顔。大好きな笑顔は何度見てもその度に『好き』が溢れてきて堪らない。
僕は虎君に「抱き着いていい?」と尋ねる。いつもならこんなこと聞かずに抱きついていたのに聞いたのは、虎君が我慢してるって分かってるから。
虎君は僕の問いかけに苦笑を濃くして「今はダメ」と僕の指にチュッとキスを落としてきた。
「なら、隣に座っても良い?」
「それなら喜んで」
おいでとベッドをポンポンと叩いてくれる虎君。
僕は隣に腰を下ろし、腕にぎゅっと抱き着くように寄り添った。
「……高校はどんな感じだった? 上手くやっていけそう?」
繋いだ手から伝わる虎君の愛。
虎君は僕の気を紛らわせるためか、それとも自分の気を紛らわせるためか、今日から始まる高校生活に不安はないかと話題を変えてくれる。
「うん、大丈夫だと思う」
「新しい友達はできた?」
「できたよ。ほら、新入生代表でスピーチした―――」
「姫神那鳥君、だっけ?」
今日知り合ったばかりの新しい友人の話をしようとしたら、先回りされる。
僕はそれにはしゃぐ。そうだよ! と。
「姫神君、すごく綺麗だよね! 初めて会った時、僕、見惚れちゃったもん!」
「ああ、そうだな。壇上に上がった時は講堂がざわめいてたな」
「だよね。みんな姫神君が綺麗だからびっくりしたんだろうね」
まだ知り合って間もない間柄とはいえ、友達を褒められるとやっぱり嬉しい。
綺麗なだけじゃなくて頭も良いんだよ!
そう言って姫神君を褒めれば、虎君は「代表に指名されるぐらいだからな」と相槌を返してくれる。
「外部からの編入で新入生代表を務めるなんて相当優秀なんだろうな」
「だよね」
「学園初の特待生なだけはあるな」
「うん!」
仲良くなれると良いなと言ってくれる虎君に、僕は元気よく頷く。
でも頷いた後、ある疑問を覚えた。姫神君が特待生だってこと、どうして虎君が知ってるんだろう? って。
(入学式で誰かが話していたの聞いたのかな?)
「なんだ?」
「虎君、姫神君が特待生だってなんで知ってるの?」
じっと見つめる視線に気づいた虎君に尋ねる。何故知っているの? と。
僕はその質問を大したことじゃないと思っていた。でも、虎君はあからさまに『しまった』と言わんばかりの顔をしていて、虎君にとっては聞かれたくないことだったと言うことは分かった。
『言いたくないなら言わなくていいよ』
そう言ってあげられたらいいんだけど、でも、気になるから言えない……。
「虎君? どうしたの……?」
「いや、その……。……、ごめん」
「? 何が『ごめん』?」
きっと一瞬はぐらかそうとしたんだろうな。でも、僕に嘘を吐きたくないと思い直してくれたんだろう。
虎君は気まずそうに口を開いた。
「実は、調べたんだ……」
「何を?」
「その、姫神那鳥君について、諸々」
口籠りながら紡がれる言葉は僕に対する説明なんだろうけど、よくわからない。
「『諸々』?」
「出身中学や家族構成や友人関係とか、まぁ、そんな内容のこと」
虎君の言葉に疑問は増す。だって虎君は『調べた』って言うけど、入学式で姫神君を知ってから調べる時間なんて数時間もなかったはず。
それなのにそんなプライベートなことまでわかっちゃうものなの?
「き、聞いたのは虎君でしょっ」
「そうだけど。……葵にとっては何気ないことでも、俺にとってはめちゃくちゃ理性を揺さぶられることだって自覚はして欲しい……」
今もこのまま葵を襲ってしまいそうで怖い。
そう言って僕の手を握る虎君。
僕は唇を尖らせ不満を訴える。僕は虎君の傍に居たいって言ってるのに、ダメだって言ったのは虎君だからね?
「ほらまた……」
困ったような笑い顔。大好きな笑顔は何度見てもその度に『好き』が溢れてきて堪らない。
僕は虎君に「抱き着いていい?」と尋ねる。いつもならこんなこと聞かずに抱きついていたのに聞いたのは、虎君が我慢してるって分かってるから。
虎君は僕の問いかけに苦笑を濃くして「今はダメ」と僕の指にチュッとキスを落としてきた。
「なら、隣に座っても良い?」
「それなら喜んで」
おいでとベッドをポンポンと叩いてくれる虎君。
僕は隣に腰を下ろし、腕にぎゅっと抱き着くように寄り添った。
「……高校はどんな感じだった? 上手くやっていけそう?」
繋いだ手から伝わる虎君の愛。
虎君は僕の気を紛らわせるためか、それとも自分の気を紛らわせるためか、今日から始まる高校生活に不安はないかと話題を変えてくれる。
「うん、大丈夫だと思う」
「新しい友達はできた?」
「できたよ。ほら、新入生代表でスピーチした―――」
「姫神那鳥君、だっけ?」
今日知り合ったばかりの新しい友人の話をしようとしたら、先回りされる。
僕はそれにはしゃぐ。そうだよ! と。
「姫神君、すごく綺麗だよね! 初めて会った時、僕、見惚れちゃったもん!」
「ああ、そうだな。壇上に上がった時は講堂がざわめいてたな」
「だよね。みんな姫神君が綺麗だからびっくりしたんだろうね」
まだ知り合って間もない間柄とはいえ、友達を褒められるとやっぱり嬉しい。
綺麗なだけじゃなくて頭も良いんだよ!
そう言って姫神君を褒めれば、虎君は「代表に指名されるぐらいだからな」と相槌を返してくれる。
「外部からの編入で新入生代表を務めるなんて相当優秀なんだろうな」
「だよね」
「学園初の特待生なだけはあるな」
「うん!」
仲良くなれると良いなと言ってくれる虎君に、僕は元気よく頷く。
でも頷いた後、ある疑問を覚えた。姫神君が特待生だってこと、どうして虎君が知ってるんだろう? って。
(入学式で誰かが話していたの聞いたのかな?)
「なんだ?」
「虎君、姫神君が特待生だってなんで知ってるの?」
じっと見つめる視線に気づいた虎君に尋ねる。何故知っているの? と。
僕はその質問を大したことじゃないと思っていた。でも、虎君はあからさまに『しまった』と言わんばかりの顔をしていて、虎君にとっては聞かれたくないことだったと言うことは分かった。
『言いたくないなら言わなくていいよ』
そう言ってあげられたらいいんだけど、でも、気になるから言えない……。
「虎君? どうしたの……?」
「いや、その……。……、ごめん」
「? 何が『ごめん』?」
きっと一瞬はぐらかそうとしたんだろうな。でも、僕に嘘を吐きたくないと思い直してくれたんだろう。
虎君は気まずそうに口を開いた。
「実は、調べたんだ……」
「何を?」
「その、姫神那鳥君について、諸々」
口籠りながら紡がれる言葉は僕に対する説明なんだろうけど、よくわからない。
「『諸々』?」
「出身中学や家族構成や友人関係とか、まぁ、そんな内容のこと」
虎君の言葉に疑問は増す。だって虎君は『調べた』って言うけど、入学式で姫神君を知ってから調べる時間なんて数時間もなかったはず。
それなのにそんなプライベートなことまでわかっちゃうものなの?
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