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恋しい人
恋しい人 第69話
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「陽琥さんよりもあの人に頼んだ方が良くない? 明らかに契約外でしょ、それ」
「え? 先輩も教えられるの?」
陽琥さんにお願いしてもきっと断られるだろうとは思っていた。でも、それなら悠栖も諦めるだろうから別にいいやと思っていたんだけど、ご機嫌斜めな慶史は不貞腐れながら余計なことを言ってくれる。僕は敢えて言わなかったのに!
『あの人』で通じるんだ……。って苦笑する朋喜は誰のことか分からないだろう姫神君に虎君のことを説明してる。
僕は聡い姫神君が僕と虎君の関係に気づかないかハラハラしちゃう。
でも、そんな僕のことなんて知らない悠栖はずいっと顔を近づけてきて、「なぁ、どうなの?」って質問に答えろとせっついてくる。
「えっと、その……」
「マモ?」
「先輩って初等部に進学する前から色んな武術を叩き込まれてたんでしょ? 『だから凄く強いんだよ!』って自慢してたのは葵でしょ」
「今のってマモの真似だよな? 慶史がするとすげぇこえぇんだけど……! あぶねぇ!」
どうやって誤魔化そうか考えていたら口籠っちゃった。
慶史からは鋭い突っ込みが入って、本当、機嫌が悪いのは分かっているけどやめて欲しい……。
悠栖は慶史が投げた筆箱をギリギリのところでキャッチしていて、その反射神経の良さに姫神君は驚きながらも素直な賛辞を口にした。
褒められた悠栖は慶史を無視して「これぐらい朝飯前だぜ!」とドヤ顔を見せる。
「ちょっと、姫神。調子乗らせないでよ。ウザいから」
「なんだ慶史、俺の反射神経が羨ましいのか? ん?」
「姫神っ!」
「お、おう……。なんか、悪い……」
慶史が不機嫌な事は分かってるだろうに、悠栖は敢えてそれを煽るように絡む。
悠栖のこういうところは純粋に凄いと思う。僕は友達が不機嫌だったら物凄く神経を使うから。
(でも、おかげで話逸れたし、このまま忘れてくれるかも?)
それは淡い期待だ。悠栖の性格を考えたら、話が逸れても自分が納得していなければすぐに元に戻しちゃうから。
「それより、先輩ってそんなに強いの?」
ほら、やっぱり。
僕は苦笑交じりに「うん。凄くね」と諦めて頷いた。
「どれぐらい? どれぐらい強いんだ??」
「『どれぐらい』って聞かれても困るけど、んー……。陽琥さんが手合わせしていてストップかけたぐらいかな?」
「え? それって凄いことなのか??」
ストップかけられたってことは違うんじゃないの?
そう首を傾げる悠栖。僕は悠栖が思っている理由とは真逆の理由でストップがかけられたんだよと説明する。
「本気で手合わせしないと自分が致命傷をもらいそうだって言ってたんだよね。陽琥さん」
「でも本気で手合わせしたら先輩が怪我しちゃうからでしょ」
「! ああ、そっか。なるほど」
「陽琥さんって凄く強いんだけど、特に接近戦になったら敵無しなんだって」
いろんな格闘技を習得している陽琥さん。それらの長所を最大限に生かす戦闘技術で戦うことができる人だから、父さんも安心して母さんを、僕達を任せているんだ。
そしてそんな陽琥さんが一目置いているのが、虎君だ。一般人にしておくのは勿体ないって言ってたし。
「マジかぁ……そんな話聞いたらその『陽琥さん』に教えて欲しいって思うって……」
「うん。だから陽琥さんに聞いて―――」
「でも、仕事の邪魔するのはやっぱり気が引けるし、その『陽琥さん』が一目置いてるなら先輩でもいいか!」
陽琥さんのことを気遣ってくれるのは嬉しい。
でも、その言い方、僕は好きじゃない。
「悠栖、悠栖。早く訂正するか謝るかしなよ。頼んでもらえなくなるよ」
「え? 何が?」
「葵君の顔、見なよ。凄く怒ってるよ?」
目敏い慶史と朋喜の言葉に悠栖が僕を振り返る。そして、「なんで怒ってんの!?」と凄く慌ててみせた。
(『なんで』、なんて聞かないでよ! 口にするのも嫌なのに!!)
ムッとする僕は何も応えず悠栖を睨む。
すると悠栖は慶史と朋喜に助けを求めるんだけど、二人は自分で考えろと僕の怒りの原因を口にしなかった。
「えぇ……。俺、何か不味い事言った……?」
「明らかに言っただろ。教えて欲しいってお願いする立場でなんで『でもいいか』って言えるんだよ。お前何様だよ」
「!! ごめん!! マモ!!」
僕に変わって怒りを代弁してくれるのはやり取りに見兼ねた姫神君。悠栖は姫神君の言葉に顔を真っ青にして土下座する勢いで謝ってきた。
「え? 先輩も教えられるの?」
陽琥さんにお願いしてもきっと断られるだろうとは思っていた。でも、それなら悠栖も諦めるだろうから別にいいやと思っていたんだけど、ご機嫌斜めな慶史は不貞腐れながら余計なことを言ってくれる。僕は敢えて言わなかったのに!
『あの人』で通じるんだ……。って苦笑する朋喜は誰のことか分からないだろう姫神君に虎君のことを説明してる。
僕は聡い姫神君が僕と虎君の関係に気づかないかハラハラしちゃう。
でも、そんな僕のことなんて知らない悠栖はずいっと顔を近づけてきて、「なぁ、どうなの?」って質問に答えろとせっついてくる。
「えっと、その……」
「マモ?」
「先輩って初等部に進学する前から色んな武術を叩き込まれてたんでしょ? 『だから凄く強いんだよ!』って自慢してたのは葵でしょ」
「今のってマモの真似だよな? 慶史がするとすげぇこえぇんだけど……! あぶねぇ!」
どうやって誤魔化そうか考えていたら口籠っちゃった。
慶史からは鋭い突っ込みが入って、本当、機嫌が悪いのは分かっているけどやめて欲しい……。
悠栖は慶史が投げた筆箱をギリギリのところでキャッチしていて、その反射神経の良さに姫神君は驚きながらも素直な賛辞を口にした。
褒められた悠栖は慶史を無視して「これぐらい朝飯前だぜ!」とドヤ顔を見せる。
「ちょっと、姫神。調子乗らせないでよ。ウザいから」
「なんだ慶史、俺の反射神経が羨ましいのか? ん?」
「姫神っ!」
「お、おう……。なんか、悪い……」
慶史が不機嫌な事は分かってるだろうに、悠栖は敢えてそれを煽るように絡む。
悠栖のこういうところは純粋に凄いと思う。僕は友達が不機嫌だったら物凄く神経を使うから。
(でも、おかげで話逸れたし、このまま忘れてくれるかも?)
それは淡い期待だ。悠栖の性格を考えたら、話が逸れても自分が納得していなければすぐに元に戻しちゃうから。
「それより、先輩ってそんなに強いの?」
ほら、やっぱり。
僕は苦笑交じりに「うん。凄くね」と諦めて頷いた。
「どれぐらい? どれぐらい強いんだ??」
「『どれぐらい』って聞かれても困るけど、んー……。陽琥さんが手合わせしていてストップかけたぐらいかな?」
「え? それって凄いことなのか??」
ストップかけられたってことは違うんじゃないの?
そう首を傾げる悠栖。僕は悠栖が思っている理由とは真逆の理由でストップがかけられたんだよと説明する。
「本気で手合わせしないと自分が致命傷をもらいそうだって言ってたんだよね。陽琥さん」
「でも本気で手合わせしたら先輩が怪我しちゃうからでしょ」
「! ああ、そっか。なるほど」
「陽琥さんって凄く強いんだけど、特に接近戦になったら敵無しなんだって」
いろんな格闘技を習得している陽琥さん。それらの長所を最大限に生かす戦闘技術で戦うことができる人だから、父さんも安心して母さんを、僕達を任せているんだ。
そしてそんな陽琥さんが一目置いているのが、虎君だ。一般人にしておくのは勿体ないって言ってたし。
「マジかぁ……そんな話聞いたらその『陽琥さん』に教えて欲しいって思うって……」
「うん。だから陽琥さんに聞いて―――」
「でも、仕事の邪魔するのはやっぱり気が引けるし、その『陽琥さん』が一目置いてるなら先輩でもいいか!」
陽琥さんのことを気遣ってくれるのは嬉しい。
でも、その言い方、僕は好きじゃない。
「悠栖、悠栖。早く訂正するか謝るかしなよ。頼んでもらえなくなるよ」
「え? 何が?」
「葵君の顔、見なよ。凄く怒ってるよ?」
目敏い慶史と朋喜の言葉に悠栖が僕を振り返る。そして、「なんで怒ってんの!?」と凄く慌ててみせた。
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ムッとする僕は何も応えず悠栖を睨む。
すると悠栖は慶史と朋喜に助けを求めるんだけど、二人は自分で考えろと僕の怒りの原因を口にしなかった。
「えぇ……。俺、何か不味い事言った……?」
「明らかに言っただろ。教えて欲しいってお願いする立場でなんで『でもいいか』って言えるんだよ。お前何様だよ」
「!! ごめん!! マモ!!」
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