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恋しい人
恋しい人 第101話
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「虎君、今の話って―――」
「ん。明後日の約束の話だよ」
尋ねれば答えてくれる虎君だけど、その表情は苦笑交じり。
母さんと明後日の話をしていたんだから茂斗が明後日の話をしていることは分かってる。僕が知りたいのは、なんであんなに脱力しているのか、その原因だ。
虎君の苦笑は僕をますます混乱させて、意図が分からず思わず眉を顰めてしまう。
すると虎君は僕が不満を抱くことを見越していたのか、ますます困ったように笑う。でも、知りたいことは教えてくれない。
「なんで教えてくれないの?」
「そんな拗ねた顔しないでくれよ」
思わず頬を膨らませて見せれば、虎君は苦笑交じりに怒らないでと言ってくる。怒ってるわけじゃなくて拗ねてるだけだし!
知らない! ってそっぽを向く僕。すると僕の不機嫌を見兼ねた茂斗が何の話をしていたか呆れ口調で教えてくれた。
「明日ヤる気だったんだろ?」
「! なっ、なんでっ」
「だから分かり易過ぎるんだよ。あからさまに狼狽えやがって。あれじゃバラしてるようなもんだぞ」
歯に衣着せぬ茂斗の言葉に僕の顔は一気に赤くなる。
目敏い双子の片割れに恥ずかしすぎて両手で真っ赤になった頬を包み隠し言葉を失っていれば、僕の目の前に大きな背中が。虎君の背中だ。
「だから、俺相手に嫉妬すんなって……」
「心配するな。嫉妬じゃなくただの独占欲だ」
「どっちも一緒だろうが」
呆れ口調の茂斗は、「いちゃつくのは程々にしてさっさと戻って来いよ」と言って洗面所へと歩いて行ったようだ。足音が遠ざかって行ってるし。
僕はまだ熱い頬を隠したまま虎君を見上げる。虎君は僕を振り返り、濃い苦笑を滲ませ僕を見下ろしてきた。
「俺以外に可愛い顔見せちゃダメだろ?」
「だ、だって……」
「まったく……。こうなるから言わなかったのに」
虎君が見せるのは、仕方ないなって顔。僕は小さく唸りながらもごめんなさいって素直に謝った。
そうだ。虎君は僕に隠し事はしないって約束してくれてるんだから、後から僕にちゃんと説明してくれるつもりだったに違いない。
けど、今更そんなことに気づいても後の祭り。僕は虎君が茂斗と僕が分からない話をしてヤキモチを妬いて頭に血がのぼっていた自分に自己嫌悪を覚えた。
「……反省してる?」
「うん……反省、してる……」
虎君は一歩僕に近づき、優しく目尻を下げて笑いかけてくれる。
さっきまでの困った顔じゃなくて、とびきり甘い表情。僕を思い切り甘やかす時の顔だ。
「なら、もう俺以外に可愛い顔見せちゃダメだぞ?」
「うん。分かった」
顎に添えられる手。僕は僕を見つめる虎君の緑色の瞳を見つめ返し、ドキドキと速く鼓動する心臓の音を聞きながら目を閉じた。
これがキスを強請る仕草だと分かっている。分かっていて、キスが欲しいと甘えているのだ。
頬を覆い隠す僕の手に重なる虎君の手。そして、唇に触れる温もり。吸い付くような甘いキスに心が蕩けてしまうのは仕方ない。
「……独占欲強すぎてごめんな?」
「ううん。凄く嬉しい……」
僕の世界は虎君一色に染まる。
もう一度キスしたいと見つめれば、虎君は返事の代わりに深く微笑んでくれる。
(虎君、大好きぃ……)
好き過ぎて本当、堪らない。
甘えたくて抱き着こうとしたその時、近づいてくる足音が耳に届いた。普段よりも明らかに乱暴な足取りに、絶対にわざとやってるなと内心苦笑いだ。
「残念」
「キスはおあずけ?」
「ん。後で、な」
愛に満ちた笑顔は眩しい。僕はあまりの愛しさに胸が熱くなってちょっぴり泣きそうになってしまう。
「おい。お前らマジでいい加減にしろよ」
「分かってるよ。手を洗ってすぐに戻るから蹴り入れるのは勘弁してくれ」
「! お前、背中に目があるのか?」
今まさに蹴ろうとしていたところだったのだろう。茂斗は虎君の感覚の鋭さに本気で驚愕しているようだった。
「ん。明後日の約束の話だよ」
尋ねれば答えてくれる虎君だけど、その表情は苦笑交じり。
母さんと明後日の話をしていたんだから茂斗が明後日の話をしていることは分かってる。僕が知りたいのは、なんであんなに脱力しているのか、その原因だ。
虎君の苦笑は僕をますます混乱させて、意図が分からず思わず眉を顰めてしまう。
すると虎君は僕が不満を抱くことを見越していたのか、ますます困ったように笑う。でも、知りたいことは教えてくれない。
「なんで教えてくれないの?」
「そんな拗ねた顔しないでくれよ」
思わず頬を膨らませて見せれば、虎君は苦笑交じりに怒らないでと言ってくる。怒ってるわけじゃなくて拗ねてるだけだし!
知らない! ってそっぽを向く僕。すると僕の不機嫌を見兼ねた茂斗が何の話をしていたか呆れ口調で教えてくれた。
「明日ヤる気だったんだろ?」
「! なっ、なんでっ」
「だから分かり易過ぎるんだよ。あからさまに狼狽えやがって。あれじゃバラしてるようなもんだぞ」
歯に衣着せぬ茂斗の言葉に僕の顔は一気に赤くなる。
目敏い双子の片割れに恥ずかしすぎて両手で真っ赤になった頬を包み隠し言葉を失っていれば、僕の目の前に大きな背中が。虎君の背中だ。
「だから、俺相手に嫉妬すんなって……」
「心配するな。嫉妬じゃなくただの独占欲だ」
「どっちも一緒だろうが」
呆れ口調の茂斗は、「いちゃつくのは程々にしてさっさと戻って来いよ」と言って洗面所へと歩いて行ったようだ。足音が遠ざかって行ってるし。
僕はまだ熱い頬を隠したまま虎君を見上げる。虎君は僕を振り返り、濃い苦笑を滲ませ僕を見下ろしてきた。
「俺以外に可愛い顔見せちゃダメだろ?」
「だ、だって……」
「まったく……。こうなるから言わなかったのに」
虎君が見せるのは、仕方ないなって顔。僕は小さく唸りながらもごめんなさいって素直に謝った。
そうだ。虎君は僕に隠し事はしないって約束してくれてるんだから、後から僕にちゃんと説明してくれるつもりだったに違いない。
けど、今更そんなことに気づいても後の祭り。僕は虎君が茂斗と僕が分からない話をしてヤキモチを妬いて頭に血がのぼっていた自分に自己嫌悪を覚えた。
「……反省してる?」
「うん……反省、してる……」
虎君は一歩僕に近づき、優しく目尻を下げて笑いかけてくれる。
さっきまでの困った顔じゃなくて、とびきり甘い表情。僕を思い切り甘やかす時の顔だ。
「なら、もう俺以外に可愛い顔見せちゃダメだぞ?」
「うん。分かった」
顎に添えられる手。僕は僕を見つめる虎君の緑色の瞳を見つめ返し、ドキドキと速く鼓動する心臓の音を聞きながら目を閉じた。
これがキスを強請る仕草だと分かっている。分かっていて、キスが欲しいと甘えているのだ。
頬を覆い隠す僕の手に重なる虎君の手。そして、唇に触れる温もり。吸い付くような甘いキスに心が蕩けてしまうのは仕方ない。
「……独占欲強すぎてごめんな?」
「ううん。凄く嬉しい……」
僕の世界は虎君一色に染まる。
もう一度キスしたいと見つめれば、虎君は返事の代わりに深く微笑んでくれる。
(虎君、大好きぃ……)
好き過ぎて本当、堪らない。
甘えたくて抱き着こうとしたその時、近づいてくる足音が耳に届いた。普段よりも明らかに乱暴な足取りに、絶対にわざとやってるなと内心苦笑いだ。
「残念」
「キスはおあずけ?」
「ん。後で、な」
愛に満ちた笑顔は眩しい。僕はあまりの愛しさに胸が熱くなってちょっぴり泣きそうになってしまう。
「おい。お前らマジでいい加減にしろよ」
「分かってるよ。手を洗ってすぐに戻るから蹴り入れるのは勘弁してくれ」
「! お前、背中に目があるのか?」
今まさに蹴ろうとしていたところだったのだろう。茂斗は虎君の感覚の鋭さに本気で驚愕しているようだった。
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