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初めての人
初めての人 第23話
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「相手は先輩、だよね?」
ホームルームが終わるや否や慶史は体ごとこちらを向くと呆れ顔で僕を見てくる。
とっさに何のことかはぐらかそうと思ったけど、不機嫌な慶史がそれを許してくれるわけもなく、顔が盛大に緩んでたと指摘されてしまった。
「先輩以外のこと考えてあんな顔するわけないよね?」
「あ、『あんな顔』ってどんな顔? 別に普通だったでしょ?」
「全然『普通』じゃないから。めちゃくちゃ可愛い顔してたから。本当、いつもの100倍可愛い顔してたから」
顰め面で「マジむかつく」って吐き捨てられたら、締りのない表情を見せた僕に怒っていると勘違いしても仕方ないと思う。
気圧されながらも「ごめん……」と謝れば、慶史はふんぞり返って無茶なことを言ってきた。
「悪いと思うなら、もう二度と先輩のこと考えてあんなかわいい顔しないって約束して」
「! そ、そんなの無理だよっ! そもそも『可愛い顔』なんてしてないしね!?」
「はぁ? 蕩けきった顔してたって言ってるでしょ? 今度写真撮って見せてあげようか?」
慶史は苛立ちを隠さず、不機嫌な面持ちのまま席を立つ。鞄を手にしたその姿に帰るつもりだとわかって僕も慌てて慶史を追いかけた。
すると慶史はこの後話をしようと言っていたことをなかったことにするつもりなのか、さっさと帰るよう言ってきた。
その刺々しい物言いに僕は腹が立つよりも怖いと思ってしまった。慶史がどうしてこんなに怒っているのか全然分からなかったから……。
「早く先輩に連絡しなよ。『逢いたい』って」
「な、なんでそんなこと言うの? 今日は慶史の部屋に遊びに行くってーーー」
「先輩に逢いたいのに我慢して遊びに来る必要ないでしょ。ほら、早く帰りなって」
「け、慶史っ!!」
こんな風に慶史から突き放されたことなんてなかった僕は状況が理解できず、恐怖に足が竦んでしまった。
それでも勇気を振り絞って名前を呼ぶも、慶史は立ち止まることも振り返ることもなく、「また明日ね」と手を振るだけ……。
(ど、どうしよっ……、僕、どうしたら……)
早く慶史を追いかけないと。そう思っているのに、追いかけて拒絶されたらどうしようって恐怖で動けないでいた。
すると、そんな僕の肩に誰かの手が乗せられた。
「あいつ、今度は何に拗ねてんだ?」
「な、那鳥君……」
「大方お兄さんのことだろうね。『我慢できるかな?』って思ってたけど、やっぱり無理だったかぁ」
「朋喜……」
振り返れば、呆れ顔の那鳥君と苦笑を漏らす朋喜が。
僕が戸惑いながらも二人に助けを求め縋りつけば、落ち着くようにと頭を撫でられた。
「ほら、悠栖。女王様を呼び止めてこい」
「えぇ……予想はしてたけどさぁ……」
「あれ? 許してもらえるなら何でも言うこと聞くんじゃなかったの?」
「うっ。……わかったよ。はぁ、絶対八つ当たりされるじゃん……」
過去一番の不機嫌さだぞ。そう言いながら僕達の隣を通り過ぎる悠栖は慶史を呼び止めるために駆けて行った。
呆然とその姿を見送った僕。那鳥君は「相変わらず葵への愛が重い」と肩をすくませ、朋喜は「葵君のSPだからね」と笑っている。
「でも昨日の夜もずっと愚痴ってたし、かなり我慢した方じゃない? 僕は朝一でああなると思ってた」
「それもまぁ、そうか。夏休み中腐ってたもんな」
慶史にしては我慢した方だと笑っている二人。
僕は理解が追い付かないまでも慶史が僕に対して何かをずっと我慢してたことは理解できたから、無意識のうちに親友に不快な思いをさせていたのかとショックを受けてしまった。
「お。説得できたっぽいな」
「なんだかんだ言って悠栖に甘いもんね、慶史君」
「本人は絶対認めないけど、葵の次に大事にしてるってバレバレだよな」
「ふふ。そうだよね。……葵君、行こう?」
呆然と立ち尽くしている僕を促すのは朋喜で、戸惑いながら「でも……」としり込みする僕。慶史は僕に怒ってるんでしょ? と。
すると朋喜も那鳥君もものすごく驚いたように目を丸くし、そのあと二人して声を出して笑い出した。
「慶史君が葵君を? そんなことあるわけないでしょ?」
「本当、葵の考えってたまに斜め上過ぎて驚くわ」
腹が痛いと言って大笑いする那鳥君と、笑いすぎて涙が出てきたと目じりを拭う朋喜。
僕は真剣に悩んでいるのに笑い続ける二人に八つ当たりと分かりつつもついつい腹を立ててしまう。
「で、でも! でも慶史、すごく怒ってるっ!」
慶史に今まであんな風に邪険に扱われたことがないと訴える僕に、那鳥君はまだ笑いながら「怒ってるんじゃなくて拗ねてるんだよ」って訂正を入れてきた。
ホームルームが終わるや否や慶史は体ごとこちらを向くと呆れ顔で僕を見てくる。
とっさに何のことかはぐらかそうと思ったけど、不機嫌な慶史がそれを許してくれるわけもなく、顔が盛大に緩んでたと指摘されてしまった。
「先輩以外のこと考えてあんな顔するわけないよね?」
「あ、『あんな顔』ってどんな顔? 別に普通だったでしょ?」
「全然『普通』じゃないから。めちゃくちゃ可愛い顔してたから。本当、いつもの100倍可愛い顔してたから」
顰め面で「マジむかつく」って吐き捨てられたら、締りのない表情を見せた僕に怒っていると勘違いしても仕方ないと思う。
気圧されながらも「ごめん……」と謝れば、慶史はふんぞり返って無茶なことを言ってきた。
「悪いと思うなら、もう二度と先輩のこと考えてあんなかわいい顔しないって約束して」
「! そ、そんなの無理だよっ! そもそも『可愛い顔』なんてしてないしね!?」
「はぁ? 蕩けきった顔してたって言ってるでしょ? 今度写真撮って見せてあげようか?」
慶史は苛立ちを隠さず、不機嫌な面持ちのまま席を立つ。鞄を手にしたその姿に帰るつもりだとわかって僕も慌てて慶史を追いかけた。
すると慶史はこの後話をしようと言っていたことをなかったことにするつもりなのか、さっさと帰るよう言ってきた。
その刺々しい物言いに僕は腹が立つよりも怖いと思ってしまった。慶史がどうしてこんなに怒っているのか全然分からなかったから……。
「早く先輩に連絡しなよ。『逢いたい』って」
「な、なんでそんなこと言うの? 今日は慶史の部屋に遊びに行くってーーー」
「先輩に逢いたいのに我慢して遊びに来る必要ないでしょ。ほら、早く帰りなって」
「け、慶史っ!!」
こんな風に慶史から突き放されたことなんてなかった僕は状況が理解できず、恐怖に足が竦んでしまった。
それでも勇気を振り絞って名前を呼ぶも、慶史は立ち止まることも振り返ることもなく、「また明日ね」と手を振るだけ……。
(ど、どうしよっ……、僕、どうしたら……)
早く慶史を追いかけないと。そう思っているのに、追いかけて拒絶されたらどうしようって恐怖で動けないでいた。
すると、そんな僕の肩に誰かの手が乗せられた。
「あいつ、今度は何に拗ねてんだ?」
「な、那鳥君……」
「大方お兄さんのことだろうね。『我慢できるかな?』って思ってたけど、やっぱり無理だったかぁ」
「朋喜……」
振り返れば、呆れ顔の那鳥君と苦笑を漏らす朋喜が。
僕が戸惑いながらも二人に助けを求め縋りつけば、落ち着くようにと頭を撫でられた。
「ほら、悠栖。女王様を呼び止めてこい」
「えぇ……予想はしてたけどさぁ……」
「あれ? 許してもらえるなら何でも言うこと聞くんじゃなかったの?」
「うっ。……わかったよ。はぁ、絶対八つ当たりされるじゃん……」
過去一番の不機嫌さだぞ。そう言いながら僕達の隣を通り過ぎる悠栖は慶史を呼び止めるために駆けて行った。
呆然とその姿を見送った僕。那鳥君は「相変わらず葵への愛が重い」と肩をすくませ、朋喜は「葵君のSPだからね」と笑っている。
「でも昨日の夜もずっと愚痴ってたし、かなり我慢した方じゃない? 僕は朝一でああなると思ってた」
「それもまぁ、そうか。夏休み中腐ってたもんな」
慶史にしては我慢した方だと笑っている二人。
僕は理解が追い付かないまでも慶史が僕に対して何かをずっと我慢してたことは理解できたから、無意識のうちに親友に不快な思いをさせていたのかとショックを受けてしまった。
「お。説得できたっぽいな」
「なんだかんだ言って悠栖に甘いもんね、慶史君」
「本人は絶対認めないけど、葵の次に大事にしてるってバレバレだよな」
「ふふ。そうだよね。……葵君、行こう?」
呆然と立ち尽くしている僕を促すのは朋喜で、戸惑いながら「でも……」としり込みする僕。慶史は僕に怒ってるんでしょ? と。
すると朋喜も那鳥君もものすごく驚いたように目を丸くし、そのあと二人して声を出して笑い出した。
「慶史君が葵君を? そんなことあるわけないでしょ?」
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僕は真剣に悩んでいるのに笑い続ける二人に八つ当たりと分かりつつもついつい腹を立ててしまう。
「で、でも! でも慶史、すごく怒ってるっ!」
慶史に今まであんな風に邪険に扱われたことがないと訴える僕に、那鳥君はまだ笑いながら「怒ってるんじゃなくて拗ねてるんだよ」って訂正を入れてきた。
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