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初めての人
初めての人 第24話
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呆けてる僕の手を引いて歩きだすのは朋喜。
僕達の前を歩く那鳥君は身体を張って慶史を宥めた悠栖にねぎらいの言葉をかけ、二人に追いつくと不機嫌な面持ちままの慶史に「ガキ」と悪態を吐いた。
「いきなりアクセル全開で暴走すんなよな」
「別に暴走なんてしてないだろうが」
「してるだろうが。俺達が声かけなかったら葵、泣いてたぞ。絶対」
フォローしてやった俺たちに感謝しろ。そう横柄な物言いで腕を組む那鳥君に慶史は僕達に聞こえるほど大きな舌打ちをして不機嫌を隠さない。
でも、反論しないところをみると慶史も那鳥君の言うとおりだと思ったってことだろうか?
僕は慶史に駆け寄るとその手をつかみ「ちゃんと話したい」と訴えた。今日は話を聞くまで絶対帰らないから。と。
「はぁ……。わかったよ。俺も、さっき態度悪くてごめん……」
葵に八つ当たりするつもりはなかった。
そう小さく呟いた慶史。僕は何に怒っていたのか部屋に戻ってからでいいからちゃんと聞かせてほしいと伝えた。同じことで慶史を怒らせたくないから……。
「分かった」
「よし。とりあえず話は纏まったみたいだな。なら、移動しようぜ? 廊下でする話でもないし」
「そうだね。慶史君の部屋で、だっけ?」
頷いてくれる親友に安堵の笑みが零れる。
すると、悠栖と朋喜が注目を浴びてると周囲の視線を気にして声をかけてきた。
僕はその言葉に確かに多くの視線が突き刺さっていることに気が付いて思わず俯いてしまった。
「え? 朋喜はともかく、悠栖も来るのか? なんで?」
「! はぁ? なんでそんな顔すんだよ? 誘ってきたのはそっちだろうが」
意外そうな顔をされてムッとしたのか、悠栖は迷惑ならそもそも初めから声をかけてくるなと拗ねた表情を見せる。
それに慶史は驚いた顔のまま「迷惑とかじゃなくて」と僕も抱いた疑問をそのままぶつけてくれた。
「部活はどうしたんだよ? 今まで一回もサボったことないって自慢してた奴がついにサボりを覚えたってことか?」
「あぁバカ。聞くなって」
「だね。聞くんじゃなかったって絶対後悔するよ」
慶史の問いかけを窘める那鳥君。朋喜も苦笑を漏らし、くだらなさにげんなりするよと冷ややかな視線を悠栖に送った。
僕たちの視線を一身に受けた悠栖はというと「だって仕方ねぇじゃん!」とこれは不可抗力だと抗議の声を上げる。
慶史はやり取りで何かを察したのか「そういうことか……」と肩を落とし、『理由』を口にしてくれるなと悠栖を威圧した。
悠栖は理不尽だと騒いだけど、正直僕には何のことかさっぱりだった。
「ど、どういうこと?」
「おサルさんはハッスルしすぎて足腰が使い物にならないんだって」
「?」
僕一人置いてけぼり。それが嫌で説明を求めるように慶史の袖を引っ張れば満面の笑顔と棘のある言葉で悠栖が部活を休んだ理由を教えてくれた。
でも、やっぱり僕には理解できない。頭にクエッションマークを体現するように首を傾げてしまうのはそれからすぐのことだった。
するとそんな僕に悠栖が近づいてきて、声を潜め内緒話のように耳打ちしてきた。
「マモだって本当は辛いだろ? 昨日とか先輩放してくれなかっただろうし……」
本当に何のことを言っているのか分からない。反応に困っていれば悠栖の腰を慶史が殴り、「葵をお前らサルと一緒にするな!」って怒りを露わにしていた。
よほど強く殴られたのか、ガクッと廊下に膝をつく悠栖。僕はそんな悠栖を心配してしゃがむんだけど、踏ん張りが効かないだけだと苦笑いが返ってきた。
「マジでボロボロだな。そんなに唯哉って激しいのか? いや、まぁ体育会系だし体力お化けっぽいけどさ」
「それもあるけど、テクがないから腰振るしかできないんでしょ」
「あー……。あのガタイでガンガン腰振られたらそりゃこうなるか……」
察したといいながら悠栖に憐みの眼差しを向ける那鳥君と汚いものを見るように見下している慶史のやり取りに、ようやく何のことか理解できた。
つまり悠栖は連日汐君と『仲良く』過ごしたせいで部活に出れないほど身体が辛いということだ。
「いや、でも待てよ。唯哉よりも葵の彼氏の方がガタイ良いよな?」
「あの人はゴリラだからね」
「それに、悠栖より葵の方が断然華奢だよな? え、葵、お前大丈夫か? 立ってるのが辛かったらおぶってやるから言えよ?」
詰め寄ってくる那鳥君は悠栖を押し退け、僕の心配をしてくれる。押し退けられた悠栖はその衝撃にも抗えないのか廊下に倒れこんでしまっていて、「ひでぇ……」と泣き声を漏らしていた。
悠栖を気にしながらも目の前の那鳥君の誤解を解かないと何もできなさそうで、困った。だって那鳥君、完全に誤解しているから……。
「はいはい。モンペは暴走しなーい。葵は大丈夫だから落ち着きましょー」
「なんでそんなこと言えるんだよ? 我慢してるだけかもしれないだろうが」
いくらテクがあろうとも体格差を考えれば負担はかなり大きいはずだと言う那鳥君。心配しているからこその言葉だと分かってるけど、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
僕達の前を歩く那鳥君は身体を張って慶史を宥めた悠栖にねぎらいの言葉をかけ、二人に追いつくと不機嫌な面持ちままの慶史に「ガキ」と悪態を吐いた。
「いきなりアクセル全開で暴走すんなよな」
「別に暴走なんてしてないだろうが」
「してるだろうが。俺達が声かけなかったら葵、泣いてたぞ。絶対」
フォローしてやった俺たちに感謝しろ。そう横柄な物言いで腕を組む那鳥君に慶史は僕達に聞こえるほど大きな舌打ちをして不機嫌を隠さない。
でも、反論しないところをみると慶史も那鳥君の言うとおりだと思ったってことだろうか?
僕は慶史に駆け寄るとその手をつかみ「ちゃんと話したい」と訴えた。今日は話を聞くまで絶対帰らないから。と。
「はぁ……。わかったよ。俺も、さっき態度悪くてごめん……」
葵に八つ当たりするつもりはなかった。
そう小さく呟いた慶史。僕は何に怒っていたのか部屋に戻ってからでいいからちゃんと聞かせてほしいと伝えた。同じことで慶史を怒らせたくないから……。
「分かった」
「よし。とりあえず話は纏まったみたいだな。なら、移動しようぜ? 廊下でする話でもないし」
「そうだね。慶史君の部屋で、だっけ?」
頷いてくれる親友に安堵の笑みが零れる。
すると、悠栖と朋喜が注目を浴びてると周囲の視線を気にして声をかけてきた。
僕はその言葉に確かに多くの視線が突き刺さっていることに気が付いて思わず俯いてしまった。
「え? 朋喜はともかく、悠栖も来るのか? なんで?」
「! はぁ? なんでそんな顔すんだよ? 誘ってきたのはそっちだろうが」
意外そうな顔をされてムッとしたのか、悠栖は迷惑ならそもそも初めから声をかけてくるなと拗ねた表情を見せる。
それに慶史は驚いた顔のまま「迷惑とかじゃなくて」と僕も抱いた疑問をそのままぶつけてくれた。
「部活はどうしたんだよ? 今まで一回もサボったことないって自慢してた奴がついにサボりを覚えたってことか?」
「あぁバカ。聞くなって」
「だね。聞くんじゃなかったって絶対後悔するよ」
慶史の問いかけを窘める那鳥君。朋喜も苦笑を漏らし、くだらなさにげんなりするよと冷ややかな視線を悠栖に送った。
僕たちの視線を一身に受けた悠栖はというと「だって仕方ねぇじゃん!」とこれは不可抗力だと抗議の声を上げる。
慶史はやり取りで何かを察したのか「そういうことか……」と肩を落とし、『理由』を口にしてくれるなと悠栖を威圧した。
悠栖は理不尽だと騒いだけど、正直僕には何のことかさっぱりだった。
「ど、どういうこと?」
「おサルさんはハッスルしすぎて足腰が使い物にならないんだって」
「?」
僕一人置いてけぼり。それが嫌で説明を求めるように慶史の袖を引っ張れば満面の笑顔と棘のある言葉で悠栖が部活を休んだ理由を教えてくれた。
でも、やっぱり僕には理解できない。頭にクエッションマークを体現するように首を傾げてしまうのはそれからすぐのことだった。
するとそんな僕に悠栖が近づいてきて、声を潜め内緒話のように耳打ちしてきた。
「マモだって本当は辛いだろ? 昨日とか先輩放してくれなかっただろうし……」
本当に何のことを言っているのか分からない。反応に困っていれば悠栖の腰を慶史が殴り、「葵をお前らサルと一緒にするな!」って怒りを露わにしていた。
よほど強く殴られたのか、ガクッと廊下に膝をつく悠栖。僕はそんな悠栖を心配してしゃがむんだけど、踏ん張りが効かないだけだと苦笑いが返ってきた。
「マジでボロボロだな。そんなに唯哉って激しいのか? いや、まぁ体育会系だし体力お化けっぽいけどさ」
「それもあるけど、テクがないから腰振るしかできないんでしょ」
「あー……。あのガタイでガンガン腰振られたらそりゃこうなるか……」
察したといいながら悠栖に憐みの眼差しを向ける那鳥君と汚いものを見るように見下している慶史のやり取りに、ようやく何のことか理解できた。
つまり悠栖は連日汐君と『仲良く』過ごしたせいで部活に出れないほど身体が辛いということだ。
「いや、でも待てよ。唯哉よりも葵の彼氏の方がガタイ良いよな?」
「あの人はゴリラだからね」
「それに、悠栖より葵の方が断然華奢だよな? え、葵、お前大丈夫か? 立ってるのが辛かったらおぶってやるから言えよ?」
詰め寄ってくる那鳥君は悠栖を押し退け、僕の心配をしてくれる。押し退けられた悠栖はその衝撃にも抗えないのか廊下に倒れこんでしまっていて、「ひでぇ……」と泣き声を漏らしていた。
悠栖を気にしながらも目の前の那鳥君の誤解を解かないと何もできなさそうで、困った。だって那鳥君、完全に誤解しているから……。
「はいはい。モンペは暴走しなーい。葵は大丈夫だから落ち着きましょー」
「なんでそんなこと言えるんだよ? 我慢してるだけかもしれないだろうが」
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