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初めての人
初めての人 第27話
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「何か言いたそうな顔してるね、那鳥君」
「いや……。薄々感づいてはいたけど、朋喜も慶史に負けず劣らずいい性格してるよな」
「! あはは。はっきり言うね」
今確信したと言った那鳥君に朋喜は声を出して笑うと、「でも慶史君には劣ると思うよ」なんて可愛い笑顔を此方に見せてくれた。
僕は、言葉はともかくその笑顔をやっぱり可愛いと思い見惚れてしまう。
(前よりもずっとずっと男の子らしいけど、それでも可愛いってすごいなぁ)
可愛らしさの中に見える少年らしさ。それが以前よりもずっと朋喜を魅力的にしていると感じて、これからもっともっと可愛くてでもかっこよくなりそうだと親友の未来を想像して笑みが零れた。
「いやいや。朋喜も大概だからね?」
「うん。だからちゃんと自覚してるよ? 自覚した上で慶史君には勝てないと思ってるってこと」
「ほら、そういうところ!」
その笑顔が怖いと慶史は頭を抱え、「葵に移さないでよ」って何故か僕を巻き込んでくる。
「そんな心配しなくても、移そうと思って移せるものじゃないってことは慶史君が一番分かってるよね?」
「だよな。移るもんならマモの性格とっくに破綻してるよな?」
「僕は『破綻』までは言ってないけどね」
「ちょ、裏切んなよ!」
「ゆぅーずぅー」
「! ほら! ほら!! 俺ばっかり!!」
行き過ぎたからかいに怒った慶史は満身創痍ながらも走って逃げる悠栖を追いかける。追いかけられた悠栖は「なんで俺だけ!?」と一点集中する慶史の怒りに逃げ惑う。
そんな二人を眺めて僕たちはついつい笑いあって、穏やかな時間にホッとした。
(大丈夫。ちゃんと笑えてる。……どんな話を聞いても、大丈夫)
慶史からどんな話を聞いたとしても、それを顔に出したりしない。だって、二人きりで話すわけじゃないから。
僕はみんなに気を気づかれないよう気を引き締め、笑いながら寮までの道を歩いた。
寮に着けば中等部よりも少しこじんまりした建物に少しびっくりしてしまった。
いや、きっとこれは寮としては例外的な大きさなんだろうけど、中等部よりも敷地面積を含めコンパクトになっていたら、どうして高等部で規模が縮小するのかと思ってしまうのは仕方ない。
(普通、逆だよね? 高等部の方が広い寮になるはずだよね?)
だってここは男子校。これから成長する人がほとんどだ。それなのに寮を狭くするなんて、どう考えても変だ。
「葵? どうした?」
「あ、ごめん……。寮が小さくなってて、ちょっとびっくりしちゃって……」
「! え!? 小さい!? これが!?」
寮の外観をまじまじと眺めながらつぶやいた言葉に驚いた那鳥君の大きな声に僕も驚く。
肩を震わせ縮こまってどうしてそんな大きな声を出すのかと那鳥君を見れば、那鳥君は信じられないと言いたげな顔で僕を見ていた。
「これで小さいとか、お坊ちゃまってマジでスゲーな……」
「ち、違うよ? 十分大きいと思うけど、中等部の寮の方が大きかったと思うだけで……」
「これ以上とか、マジかよ」
那鳥君は半ば呆然と寮を見上げると、子供のくせに贅沢すぎると言葉を漏らした。
その姿に、一般常識とズレていると言葉が飲み込まれた気がしたのは僕の思い過ごしだろうか?
「高等部の寮は中等部の寮よりも2棟多いからね。寮生が分散されてるから中等部の部屋よりもずっと広いよ」
「! そうなんだ?」
「そうだよ。高校生っていってもごつくてむさ苦しいただの男だからね。部屋を広くしてもらわないと住めたもんじゃないんでしょ」
俺達みたいなのがレアなんだよ。
そう言って自分の美貌をアピールしてくる慶史。僕はそれに苦笑を返すも朋喜は『はいはい』とそれを受け流し、悠栖は中等部よりも寮の敷地面積が小さくなっていたことを今知ったと笑っていた。
「ほら、早く部屋に行こう。いい加減汗がやばい」
「それは慶史君が悠栖を追い回したからでしょ? 今日は涼しい方だよ」
「いや、涼しいって言っても暑いからね? てか、朋喜はなんでそんな平気な顔してるの? もしかして化け物?」
確かに、今日は敷き詰められた雲のおかげでマシとはいえまだまだ残暑は厳しい。
寮までの道のりを歩いていただけの僕ですら汗ばんでるんだから、じゃれる様に走り回っていた慶史と悠栖は額から汗がつたっていた。那鳥君も暑いと半そでの制服をまくり上げて汗をぬぐっている。
それなのに僕達とは正反対に朋喜一人涼しい顔をしていて、制服の上着もボタンを首元まで全部きっちりとめているにもかかわらず汗一つかいていなかった。
「あのね、暑いに決まってるでしょ? 決めつけるのは良くないよ」
「でも全然平気そうに見えるんだけど」
「朋喜はさ、暑いのは結構平気なんだよ。でも寒いのにはめちゃくちゃ弱くて部屋で長袖でも寒いって言ってるんだよな」
おかげで部屋のエアコンの温度で夏と冬はよく喧嘩すると言った悠栖はどうやら寒さには強いようだ。
「いや……。薄々感づいてはいたけど、朋喜も慶史に負けず劣らずいい性格してるよな」
「! あはは。はっきり言うね」
今確信したと言った那鳥君に朋喜は声を出して笑うと、「でも慶史君には劣ると思うよ」なんて可愛い笑顔を此方に見せてくれた。
僕は、言葉はともかくその笑顔をやっぱり可愛いと思い見惚れてしまう。
(前よりもずっとずっと男の子らしいけど、それでも可愛いってすごいなぁ)
可愛らしさの中に見える少年らしさ。それが以前よりもずっと朋喜を魅力的にしていると感じて、これからもっともっと可愛くてでもかっこよくなりそうだと親友の未来を想像して笑みが零れた。
「いやいや。朋喜も大概だからね?」
「うん。だからちゃんと自覚してるよ? 自覚した上で慶史君には勝てないと思ってるってこと」
「ほら、そういうところ!」
その笑顔が怖いと慶史は頭を抱え、「葵に移さないでよ」って何故か僕を巻き込んでくる。
「そんな心配しなくても、移そうと思って移せるものじゃないってことは慶史君が一番分かってるよね?」
「だよな。移るもんならマモの性格とっくに破綻してるよな?」
「僕は『破綻』までは言ってないけどね」
「ちょ、裏切んなよ!」
「ゆぅーずぅー」
「! ほら! ほら!! 俺ばっかり!!」
行き過ぎたからかいに怒った慶史は満身創痍ながらも走って逃げる悠栖を追いかける。追いかけられた悠栖は「なんで俺だけ!?」と一点集中する慶史の怒りに逃げ惑う。
そんな二人を眺めて僕たちはついつい笑いあって、穏やかな時間にホッとした。
(大丈夫。ちゃんと笑えてる。……どんな話を聞いても、大丈夫)
慶史からどんな話を聞いたとしても、それを顔に出したりしない。だって、二人きりで話すわけじゃないから。
僕はみんなに気を気づかれないよう気を引き締め、笑いながら寮までの道を歩いた。
寮に着けば中等部よりも少しこじんまりした建物に少しびっくりしてしまった。
いや、きっとこれは寮としては例外的な大きさなんだろうけど、中等部よりも敷地面積を含めコンパクトになっていたら、どうして高等部で規模が縮小するのかと思ってしまうのは仕方ない。
(普通、逆だよね? 高等部の方が広い寮になるはずだよね?)
だってここは男子校。これから成長する人がほとんどだ。それなのに寮を狭くするなんて、どう考えても変だ。
「葵? どうした?」
「あ、ごめん……。寮が小さくなってて、ちょっとびっくりしちゃって……」
「! え!? 小さい!? これが!?」
寮の外観をまじまじと眺めながらつぶやいた言葉に驚いた那鳥君の大きな声に僕も驚く。
肩を震わせ縮こまってどうしてそんな大きな声を出すのかと那鳥君を見れば、那鳥君は信じられないと言いたげな顔で僕を見ていた。
「これで小さいとか、お坊ちゃまってマジでスゲーな……」
「ち、違うよ? 十分大きいと思うけど、中等部の寮の方が大きかったと思うだけで……」
「これ以上とか、マジかよ」
那鳥君は半ば呆然と寮を見上げると、子供のくせに贅沢すぎると言葉を漏らした。
その姿に、一般常識とズレていると言葉が飲み込まれた気がしたのは僕の思い過ごしだろうか?
「高等部の寮は中等部の寮よりも2棟多いからね。寮生が分散されてるから中等部の部屋よりもずっと広いよ」
「! そうなんだ?」
「そうだよ。高校生っていってもごつくてむさ苦しいただの男だからね。部屋を広くしてもらわないと住めたもんじゃないんでしょ」
俺達みたいなのがレアなんだよ。
そう言って自分の美貌をアピールしてくる慶史。僕はそれに苦笑を返すも朋喜は『はいはい』とそれを受け流し、悠栖は中等部よりも寮の敷地面積が小さくなっていたことを今知ったと笑っていた。
「ほら、早く部屋に行こう。いい加減汗がやばい」
「それは慶史君が悠栖を追い回したからでしょ? 今日は涼しい方だよ」
「いや、涼しいって言っても暑いからね? てか、朋喜はなんでそんな平気な顔してるの? もしかして化け物?」
確かに、今日は敷き詰められた雲のおかげでマシとはいえまだまだ残暑は厳しい。
寮までの道のりを歩いていただけの僕ですら汗ばんでるんだから、じゃれる様に走り回っていた慶史と悠栖は額から汗がつたっていた。那鳥君も暑いと半そでの制服をまくり上げて汗をぬぐっている。
それなのに僕達とは正反対に朋喜一人涼しい顔をしていて、制服の上着もボタンを首元まで全部きっちりとめているにもかかわらず汗一つかいていなかった。
「あのね、暑いに決まってるでしょ? 決めつけるのは良くないよ」
「でも全然平気そうに見えるんだけど」
「朋喜はさ、暑いのは結構平気なんだよ。でも寒いのにはめちゃくちゃ弱くて部屋で長袖でも寒いって言ってるんだよな」
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