特別な人

鏡由良

文字の大きさ
513 / 552
初めての人

初めての人 第71話

しおりを挟む
 拗ねる僕に虎君はもう一度キスを落としてくると「恥ずかしいって泣いても止めないからな」って苦笑を見せた。
「『恥ずかしい』……? 『痛い』じゃないの?」
「間違えてないよ。……ほら、ちゃんと足開いて?」
 極力痛い思いをさせたくないからもっとちゃんと慣らさないと。
 そう言った虎君はもう一度キスをくれると漸く痛みが引いてきた箇所に手を添えてきた。
 舌を絡めとる深いキスを受け取る僕は、普通なら人に触れることのない箇所を優しく撫でるように触れられて反射的に身体がビクッと跳ねてしまった。
 きっとさっきの痛みを身体が覚えているからだろう。自分の身体なのに思うように制御できないことが凄くもどかしかった。
 優しい虎君がまた手を止めてしまったらどうしよう。
 そんな不安が胸を掠めたけれど、虎君はキスも触れる手も止めず僕を求めてくれるから、安心。
(虎君、好き……、大好き……)
 何度も何度も心の中で想いを反芻してしまうのは、途切れないキスで言葉に出せないから。
 どれほど『大好き』か伝えたいと思いながらも、もっと深いキスが欲しいから、ありったけの想いを込めて虎君からのキスに応えた。
 キスに夢中になる僕の身体の中に入ってくる異物は、虎君の指。
 今まで何度も内側から僕に触れてきた虎君の指に、身体は痛みよりも快楽を僕に届けてくれる。
 緊張して強張っていた身体からはいつの間にか力が抜け、今はただ与えられる快楽だけを追い求めることができる。
 体内で動かされる指が生み出す快楽は身体を蕩けさせ、もっと触れて欲しいと僕を浅ましくした。
「……痛くない?」
「きもちぃ……、とらく、もっと、もっとぉ……」
 キスを止めた虎君が投げかけてくるのは僕を気遣う言葉。それに僕は『平気』と返すよりも止められたキスを求めて甘えた声を出してしまう。
 虎君はそんな僕を見下ろし、笑う。
 近づいてくるかっこいい顔にキスしてもらえるとトキメキを覚える僕。でも虎君はキスじゃなくて僕の耳元に唇を寄せると低い声で囁いてきた。
「腰が揺れてる」
 と。
 エッチだと耳元で笑う虎君。僕はその声と言葉にすら感じてしまって堪らなくなる。
 恥ずかしいと感じる余裕もなく虎君を求めてぎゅっと抱き着いてしまう僕に、煽らないでと虎君はキスをくれる。
「葵が欲しくて限界なんだからな」
「僕も……、とらく、ほしぃ……」
 ついさっき痛いと泣いて虎君を困らせたくせに、それを忘れて虎君を求めてしまう。
 虎君と愛し合いたいと身体をくねらせ二人の距離を限りなくゼロに近づければ、虎君の喉元からごくりと息を呑む音が聞こえた。
「っ、……はぁ、……、くそっ」
「とらくん……?」
「可愛いのも大概にしてくれ……、勃ちすぎて痛い」
「! んぁあ! と、らくっ! やっ、やぁあっ!」
 突然激しくなる指の動きに翻弄され、悲鳴のような声が漏れる。
 反射的に身体が虎君の手から逃げるように動いてしまうけれど、虎君はそれを許さないと言わんばかりに僕を抱き寄せ、乱暴に僕の身体を拓いてゆく。
 こんな荒々しい手で触れられるなんて初めてで、少し怖い。でも、この手が他でもなく虎君のものだと分かっているから、怖さも堪えることができた。
(虎君、虎君、僕のこと、欲しいって言って……、僕のこと、全部欲しいって……)
 優しい虎君。いつだって大事にしてくれた虎君。大切な宝物だからと言ってまるで少し乱暴に触れれば壊れてしまうガラス細工のように僕に触っていた、僕の大好きな人。
 そんな虎君が今こんな乱暴な手で僕に触れている。その理由を考えれば、恐怖なんて無くなるに決まっている。
(虎君、虎君……)
「とらく、らいすきっ、らいすきぃ……」
「葵っ―――、愛してる、愛してるよっ」
 乱暴な手で攻め立てられているのに、僕の声はどんどん甘えたものに変わっていってしまう。まるでずっとこんな風に触って欲しかったと言わんばかりに。
 善がる僕の姿を虎君は一体どんな顔で見ているのだろう?
 そんなことを一瞬考えるも、すぐに霧散する理性。
 刹那刹那でしか正気を保てない程快楽に追い立てられ、淫らなまでに虎君を求める僕は腰を揺らしてもっと奥に―――虎君の指でも届かない程奥深くに触れて欲しいと願い、想像する。虎君のあの太くて硬いモノで貫かれたら……。と。
 虎君に身も心も丸ごと愛される様を想像したせいか、身体が素直に反応してしまった。僕自身はそれに気づかなかったんだけど、僕に触れている虎君にはすぐにわかったみたいだ。
 眉間に皺を刻んだ何処か苦し気な笑みを浮かべる虎君は、何を考えたんだと僕に尋ねてくる。何故そんなことを聞かれるのか分からない僕は、喘ぎながらも何のことか分からないと身悶えた。
「嘘を吐いてもすぐ分かるぞ。葵は身体も素直なんだからな」
 そう言って虎君は僕の中を弄っていた手である一点を押し撫でてきた。その手の動きは僕の身体に例えようもない程の快楽を与え、鮮明な快感に背中が仰け反ってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...