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初めての人
初めての人 第73話
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「俺の葵はやっぱり可愛いな」
聞こえるのは優しい声。でも視界に映る表情は苦しそうで、それが僕の為の声だと分かる。
何処までも僕を優先してくれる虎君。感じる愛の深さに胸が締め付けられる。
「とらく、あいしてるぅ……」
込み上がってくる感情のまま想いを伝えれば、虎君の眉間の皺は深くなる。
歪んだ視界に映るのはとても苦し気な表情。けど虎君はさっきよりもずっと優しい声で「俺も愛してるよ」って笑ってくれる。
その時僕の胸を満たしたのは言葉では形容できないほどの幸福で、この感情を『幸せ』としか言えないことが歯がゆくてますます涙が零れてしまった。
感極まっている僕に虎君は覆いかぶさってきて、キスをくれる。その優しくて甘いキスは僕をいつも以上に夢中にして、気が付けば強張っていたはずの身体からは力が抜けていた。
虎君が欲しいと望む心を反映するように力の抜けた身体はゆっくりとだけど虎君を受け入れてゆく。どう頑張っても内臓を押し上げられる苦しさは無くならなかったけど、痛みは随分マシだった。
「大丈夫か?」
「だ、じょぶ……」
優しい虎君に声を切れ切れにしながらも返事をすれば、ポタっと何かがほっぺたに落ちてきた。
一体何かといつの間にか閉ざしていた目を開けば、そこには幸せそうな虎君の笑顔が。でも、その瞳には涙が浮かんでいるようだった。
「ど、したの?」
圧迫感に眉を顰めながらもシーツを掴んでいた右手を伸ばしてその頬に触れようとすれば、虎君は僕のその掌にチュッと口づけを落とし、そのまま頬をすり寄せてきた。
いつもは僕が甘える一方だったから、こんな風に虎君が甘えてくれるなんてもしかしたら初めてかもしれない。
僕はかっこよくてでも可愛い虎君がどうしようもない程愛おしくて、また泣きそうになってしまう。
「ごめん……、幸せ過ぎて泣けてきた……」
情けないところ見せてごめん。
そう言って苦笑いを見せる虎君に僕が返せるのは『虎君が大好き』という想いだけ。
虎君は僕を見つめ、「ありがとう」って言ってくる。その表情がとても幸せそうに見えたのは、僕の気のせいじゃないはずだ。
「俺のこと、受け入れてくれてありがとう……」
「そんなの、当たり前だよっ。僕、とらく、大好きだもんっ」
覆いかぶさってくる虎君は沢山沢山キスをくれる。
唇だけじゃなくて顔中に落ちてくるキス。僕は虎君の唇を受け取りながら、さっきよりも感じる圧迫感がマシになった気がした。
もちろんマシになったと言っても今も凄く苦しいし痛いんだけど、でもそれ以上に虎君が愛しくて堪らなかった。だから、虎君に僕で気持ちよくなって欲しいと思った……。
「とらくん、うごいていいよ……?」
「! ……葵は優しいな」
「やさしい、かな……?」
「優しいよ。俺に気を使ってくれてるんだろ?」
苦しそうに笑いながら額にチュッとキスを落としてくる虎君はどうやら誤解しているようだ。
だって、さっきの言葉は虎君の為に言ったとわけじゃないから。僕が、僕で気持ちよくなっている虎君を感じたいから言っただけだから。
「ぼく、エッチしたいだけだよ?」
「今してるだろ?」
「してるけど、虎君にちゃんと気持ちよくなって欲しいよぉ」
だからもっと愛し合いたいと強請れば、虎君は少し困ったように笑う。笑って、苛めないで欲しいと言ってきた。
思いもしなかった言葉に意味が分からない僕は何故そんなことを言うのかと不安を覚えた。僕はまた気づかないうちに虎君を困らせてしまったのだろうか? と。
「葵の中、気持ちよすぎるんだよ」
「え……?」
「まだ半分も挿れてないのにイきそうだからもう少しこのまま我慢させて?」
挿れてすぐイくなんてカッコ悪すぎるだろ?
そう言いながらキスを落としてくる虎君。僕はその言葉にびっくりしてしまう。こんなにおなかが苦しいのにまだ半分も受け入れられてないなんて信じられなかった。
「まだ半分も入ってないの……?」
「ん。……ごめんな? 無理に挿れたりしないから怖がらないで?」
虎君は、今でも十分気持ちいいからって言ってくれる。
僕はキスを受け取りながら虎君を感じるおなかを擦るように手を添えた。
(こんな奥まで入ってるのに、虎君の本当におっきいんだ……)
内臓を押し上げている虎君の熱を外側からなぞっていれば、聞こえるのは溜め息。
視線を上げれば虎君は僕の肩に頭を預けるように項垂れて、「頼むから煽らないでくれ……」って苦しそうな声を零した。
「? とらくん……?」
一体何が『煽る』なんだろう? なんて思ってしまう僕には虎君の苦悩が分からない。でも虎君は僕を抱きしめてくれるから、僕も虎君の背中に手を回した。
聞こえるのは優しい声。でも視界に映る表情は苦しそうで、それが僕の為の声だと分かる。
何処までも僕を優先してくれる虎君。感じる愛の深さに胸が締め付けられる。
「とらく、あいしてるぅ……」
込み上がってくる感情のまま想いを伝えれば、虎君の眉間の皺は深くなる。
歪んだ視界に映るのはとても苦し気な表情。けど虎君はさっきよりもずっと優しい声で「俺も愛してるよ」って笑ってくれる。
その時僕の胸を満たしたのは言葉では形容できないほどの幸福で、この感情を『幸せ』としか言えないことが歯がゆくてますます涙が零れてしまった。
感極まっている僕に虎君は覆いかぶさってきて、キスをくれる。その優しくて甘いキスは僕をいつも以上に夢中にして、気が付けば強張っていたはずの身体からは力が抜けていた。
虎君が欲しいと望む心を反映するように力の抜けた身体はゆっくりとだけど虎君を受け入れてゆく。どう頑張っても内臓を押し上げられる苦しさは無くならなかったけど、痛みは随分マシだった。
「大丈夫か?」
「だ、じょぶ……」
優しい虎君に声を切れ切れにしながらも返事をすれば、ポタっと何かがほっぺたに落ちてきた。
一体何かといつの間にか閉ざしていた目を開けば、そこには幸せそうな虎君の笑顔が。でも、その瞳には涙が浮かんでいるようだった。
「ど、したの?」
圧迫感に眉を顰めながらもシーツを掴んでいた右手を伸ばしてその頬に触れようとすれば、虎君は僕のその掌にチュッと口づけを落とし、そのまま頬をすり寄せてきた。
いつもは僕が甘える一方だったから、こんな風に虎君が甘えてくれるなんてもしかしたら初めてかもしれない。
僕はかっこよくてでも可愛い虎君がどうしようもない程愛おしくて、また泣きそうになってしまう。
「ごめん……、幸せ過ぎて泣けてきた……」
情けないところ見せてごめん。
そう言って苦笑いを見せる虎君に僕が返せるのは『虎君が大好き』という想いだけ。
虎君は僕を見つめ、「ありがとう」って言ってくる。その表情がとても幸せそうに見えたのは、僕の気のせいじゃないはずだ。
「俺のこと、受け入れてくれてありがとう……」
「そんなの、当たり前だよっ。僕、とらく、大好きだもんっ」
覆いかぶさってくる虎君は沢山沢山キスをくれる。
唇だけじゃなくて顔中に落ちてくるキス。僕は虎君の唇を受け取りながら、さっきよりも感じる圧迫感がマシになった気がした。
もちろんマシになったと言っても今も凄く苦しいし痛いんだけど、でもそれ以上に虎君が愛しくて堪らなかった。だから、虎君に僕で気持ちよくなって欲しいと思った……。
「とらくん、うごいていいよ……?」
「! ……葵は優しいな」
「やさしい、かな……?」
「優しいよ。俺に気を使ってくれてるんだろ?」
苦しそうに笑いながら額にチュッとキスを落としてくる虎君はどうやら誤解しているようだ。
だって、さっきの言葉は虎君の為に言ったとわけじゃないから。僕が、僕で気持ちよくなっている虎君を感じたいから言っただけだから。
「ぼく、エッチしたいだけだよ?」
「今してるだろ?」
「してるけど、虎君にちゃんと気持ちよくなって欲しいよぉ」
だからもっと愛し合いたいと強請れば、虎君は少し困ったように笑う。笑って、苛めないで欲しいと言ってきた。
思いもしなかった言葉に意味が分からない僕は何故そんなことを言うのかと不安を覚えた。僕はまた気づかないうちに虎君を困らせてしまったのだろうか? と。
「葵の中、気持ちよすぎるんだよ」
「え……?」
「まだ半分も挿れてないのにイきそうだからもう少しこのまま我慢させて?」
挿れてすぐイくなんてカッコ悪すぎるだろ?
そう言いながらキスを落としてくる虎君。僕はその言葉にびっくりしてしまう。こんなにおなかが苦しいのにまだ半分も受け入れられてないなんて信じられなかった。
「まだ半分も入ってないの……?」
「ん。……ごめんな? 無理に挿れたりしないから怖がらないで?」
虎君は、今でも十分気持ちいいからって言ってくれる。
僕はキスを受け取りながら虎君を感じるおなかを擦るように手を添えた。
(こんな奥まで入ってるのに、虎君の本当におっきいんだ……)
内臓を押し上げている虎君の熱を外側からなぞっていれば、聞こえるのは溜め息。
視線を上げれば虎君は僕の肩に頭を預けるように項垂れて、「頼むから煽らないでくれ……」って苦しそうな声を零した。
「? とらくん……?」
一体何が『煽る』なんだろう? なんて思ってしまう僕には虎君の苦悩が分からない。でも虎君は僕を抱きしめてくれるから、僕も虎君の背中に手を回した。
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