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初めての人
初めての人 第76話
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「すごく大切にしてくれてるよ?」
「ならこれからも大切にさせて? 正直、これ以上煽られたら我慢できなくなるから……」
ぎゅっと僕を抱きしめる腕に力を籠める虎君は、これ以上僕は喋れない様にしているようだった。
(僕は我慢なんてして欲しくないのに……)
裸で抱き合っているから、分かる。硬く反応しているものが僕に虎君の興奮を教えてくれる。
虎君に愛されたいし、虎君に気持ちよくなって欲しい。僕は二人で沢山幸せな気持ちになりたいのに、虎君は違うのかな……?
「……身体は?」
「なに?」
「辛いところとか、無い? 痛いとか、違和感があるとか」
質問の後に緩められた腕に僕は虎君の胸から顔を上げ、平気だと言って再び顔を埋めた。目を合わせたままだとその言葉が嘘だとバレてしまうと思ったから。
でも、視線を逸らしただけで虎君に隠し事ができると思うこと自体間違いだ。僕のことを僕以上に知ってる人に隠し事なんてできるわけがないんだから。
「! なっ―――」
いきなりおしりを触られたら驚きの声が漏れてしまうのは仕方ない。
僕は突然のことにびっくりして虎君に視線を戻して戸惑いを訴える。でも虎君は僕のそんな視線を無視して優しいけど強引な手つきでおしりを触るだけじゃなくてふにふにと揉むように動かしてきた。
僕はくすぐったいと抗おうとするのだけれど、身を捩ろうとしたその時、下半身に鈍痛が走った。
「ひっ」
短い悲鳴というよりも息を吸い込んだ際に意図せず音が漏れたような呻き声が唇から零れ、その声を聞いた虎君は僕のおしりから手を離すとまたぎゅっと抱きしめてきた。
「今の葵はアドレナリンが出ていて痛みに鈍感になってるだけだぞ」
「ど、鈍感になってないよ。だって、凄く痛いもん」
「今のは急に動いたからより強い痛みが出ただけ。落ち着いたら動くのも億劫になる程身体が辛いかもしれないんだからな?」
そう言って僕を抱きしめる虎君は、その腕に力を込めて「ごめんな」って謝ってきた。
何に対する謝罪なのかと思っていたら、全然思っていた通りできなかったと苦しそうな声が続いた。
「それって僕とのエッチのこと……?」
「そうだよ。何回も―――、いや、何百回も想像してたのに全然ダメだった……」
想像でなら少しも痛い思いをさせることなく気持ちよくしてあげられたのに、実際に葵を前にしたら全部吹っ飛んだ。
そう言った虎君は僕を見下ろした。そのまなざしはいつも通り優しい。けど、優しいだけじゃなくて……。
「葵は可愛すぎるし、葵の中も訳が分からないほど気持ち良いしで、『優しく』どころか理性の欠片も残らなかった」
「そ、そんなことないよ」
「そんなことあるよ。……乱暴に腰を振るだけの獣だった自覚はある」
虎君は、だから僕の身体への負担は相当なものだっただろうと表情を曇らせた。
そのまままた僕を抱きしめる虎君は頼りない声で「本当にごめん」ともう一度謝ってきた。
誰よりも僕のことを大切に想ってくれている虎君だから、自分が許せないのだろう。
でも、僕はそんな風に自分を責めないで欲しいと思った。だって、僕は凄く、本当に物凄く幸せなんだから……。
「僕は嬉しいから謝らないで欲しいよ……」
「葵……」
「エッチって、二人でするモノでしょ? 僕は、僕だけ気持ちよくされても全然嬉しくないよ」
「俺も俺だけが気持ちいいセックスはしたくないよ。だから謝ってるんだろ?」
俺は二回も射精する程気持ちよかったけれど、葵は耐えてただけだろ?
そう言って気遣ってくれる虎君だけど、僕だって凄く気持ちよくなったからイっちゃったってこと忘れてるのかな?
「僕だってちゃんと気持ち良かったよ。我慢してるだけならしゃ、射精、しないよ……」
事実を伝えるために紡いだ言葉が何故か妙に恥ずかしくて、ついつい声が小さくなってしまう。でも、ちゃんと分かってくれるよね……?
反応を窺うよりも羞恥が勝って虎君の胸に顔を埋める僕。虎君はそんな僕を抱きしめて「良かった……」って嬉しそうな声とキスをくれた。
「葵もちゃんと気持ちよかったんだな」
「そ、そうだよ。それに、気持ち良かっただけじゃなくて、凄く、すっごく幸せだったんだからね?」
恥ずかしさはまだ残るけど、ちゃんと伝えたい。虎君とのエッチは今までで一番と言ってもいい程僕を幸せな気持ちにしてくれたんだよ。と。
「僕が虎君のこと大好きだから、虎君が僕のこと大切にしてくれるから、あんなに幸せなエッチができたんだよ」
「葵……。そうだな。俺も同じ気持ちだよ。ありがとう、葵。愛してるよ」
そう言って笑ってくれる虎君の表情に、僕の言いたいことはちゃんと伝わったと分かって安心する。
もらった愛の言葉に僕も同じ気持ちを伝えれば、近づく顔に目を閉じてキスを待つ。
程なくしてチュッと唇に触れるぬくもりはすぐに離れちゃったけど、僕の心を満たすには十分だった。
「ねぇ、虎君」
「ん?」
「またエッチ、しようね?」
エッチのことしか考えていないのかと呆れられるかもしれないと思いながらも、事実だから反論のしようがない。
でも、自分の欲の強さを恥ずかしいと思う僕を抱きしめてくれる虎君は「もう我慢はできないから覚悟しとけよ」って優しくも妖艶に笑った。
「いっぱい愛してくれる?」
「ああ。嫌って程、な」
逃げたくなってももう手遅れだからな?
そう言った虎君に僕は嬉しいと頬を緩ませ、これからたくさん愛してもらえる喜びのまま抱き着いた。
「虎君大好き。愛してる」
エッチする前よりもずっとずっと大きくなった想いのまま言葉を紡げば、虎君から返ってくるのは大きくも優しい『愛』だった。
初めての人 END...
「ならこれからも大切にさせて? 正直、これ以上煽られたら我慢できなくなるから……」
ぎゅっと僕を抱きしめる腕に力を籠める虎君は、これ以上僕は喋れない様にしているようだった。
(僕は我慢なんてして欲しくないのに……)
裸で抱き合っているから、分かる。硬く反応しているものが僕に虎君の興奮を教えてくれる。
虎君に愛されたいし、虎君に気持ちよくなって欲しい。僕は二人で沢山幸せな気持ちになりたいのに、虎君は違うのかな……?
「……身体は?」
「なに?」
「辛いところとか、無い? 痛いとか、違和感があるとか」
質問の後に緩められた腕に僕は虎君の胸から顔を上げ、平気だと言って再び顔を埋めた。目を合わせたままだとその言葉が嘘だとバレてしまうと思ったから。
でも、視線を逸らしただけで虎君に隠し事ができると思うこと自体間違いだ。僕のことを僕以上に知ってる人に隠し事なんてできるわけがないんだから。
「! なっ―――」
いきなりおしりを触られたら驚きの声が漏れてしまうのは仕方ない。
僕は突然のことにびっくりして虎君に視線を戻して戸惑いを訴える。でも虎君は僕のそんな視線を無視して優しいけど強引な手つきでおしりを触るだけじゃなくてふにふにと揉むように動かしてきた。
僕はくすぐったいと抗おうとするのだけれど、身を捩ろうとしたその時、下半身に鈍痛が走った。
「ひっ」
短い悲鳴というよりも息を吸い込んだ際に意図せず音が漏れたような呻き声が唇から零れ、その声を聞いた虎君は僕のおしりから手を離すとまたぎゅっと抱きしめてきた。
「今の葵はアドレナリンが出ていて痛みに鈍感になってるだけだぞ」
「ど、鈍感になってないよ。だって、凄く痛いもん」
「今のは急に動いたからより強い痛みが出ただけ。落ち着いたら動くのも億劫になる程身体が辛いかもしれないんだからな?」
そう言って僕を抱きしめる虎君は、その腕に力を込めて「ごめんな」って謝ってきた。
何に対する謝罪なのかと思っていたら、全然思っていた通りできなかったと苦しそうな声が続いた。
「それって僕とのエッチのこと……?」
「そうだよ。何回も―――、いや、何百回も想像してたのに全然ダメだった……」
想像でなら少しも痛い思いをさせることなく気持ちよくしてあげられたのに、実際に葵を前にしたら全部吹っ飛んだ。
そう言った虎君は僕を見下ろした。そのまなざしはいつも通り優しい。けど、優しいだけじゃなくて……。
「葵は可愛すぎるし、葵の中も訳が分からないほど気持ち良いしで、『優しく』どころか理性の欠片も残らなかった」
「そ、そんなことないよ」
「そんなことあるよ。……乱暴に腰を振るだけの獣だった自覚はある」
虎君は、だから僕の身体への負担は相当なものだっただろうと表情を曇らせた。
そのまままた僕を抱きしめる虎君は頼りない声で「本当にごめん」ともう一度謝ってきた。
誰よりも僕のことを大切に想ってくれている虎君だから、自分が許せないのだろう。
でも、僕はそんな風に自分を責めないで欲しいと思った。だって、僕は凄く、本当に物凄く幸せなんだから……。
「僕は嬉しいから謝らないで欲しいよ……」
「葵……」
「エッチって、二人でするモノでしょ? 僕は、僕だけ気持ちよくされても全然嬉しくないよ」
「俺も俺だけが気持ちいいセックスはしたくないよ。だから謝ってるんだろ?」
俺は二回も射精する程気持ちよかったけれど、葵は耐えてただけだろ?
そう言って気遣ってくれる虎君だけど、僕だって凄く気持ちよくなったからイっちゃったってこと忘れてるのかな?
「僕だってちゃんと気持ち良かったよ。我慢してるだけならしゃ、射精、しないよ……」
事実を伝えるために紡いだ言葉が何故か妙に恥ずかしくて、ついつい声が小さくなってしまう。でも、ちゃんと分かってくれるよね……?
反応を窺うよりも羞恥が勝って虎君の胸に顔を埋める僕。虎君はそんな僕を抱きしめて「良かった……」って嬉しそうな声とキスをくれた。
「葵もちゃんと気持ちよかったんだな」
「そ、そうだよ。それに、気持ち良かっただけじゃなくて、凄く、すっごく幸せだったんだからね?」
恥ずかしさはまだ残るけど、ちゃんと伝えたい。虎君とのエッチは今までで一番と言ってもいい程僕を幸せな気持ちにしてくれたんだよ。と。
「僕が虎君のこと大好きだから、虎君が僕のこと大切にしてくれるから、あんなに幸せなエッチができたんだよ」
「葵……。そうだな。俺も同じ気持ちだよ。ありがとう、葵。愛してるよ」
そう言って笑ってくれる虎君の表情に、僕の言いたいことはちゃんと伝わったと分かって安心する。
もらった愛の言葉に僕も同じ気持ちを伝えれば、近づく顔に目を閉じてキスを待つ。
程なくしてチュッと唇に触れるぬくもりはすぐに離れちゃったけど、僕の心を満たすには十分だった。
「ねぇ、虎君」
「ん?」
「またエッチ、しようね?」
エッチのことしか考えていないのかと呆れられるかもしれないと思いながらも、事実だから反論のしようがない。
でも、自分の欲の強さを恥ずかしいと思う僕を抱きしめてくれる虎君は「もう我慢はできないから覚悟しとけよ」って優しくも妖艶に笑った。
「いっぱい愛してくれる?」
「ああ。嫌って程、な」
逃げたくなってももう手遅れだからな?
そう言った虎君に僕は嬉しいと頬を緩ませ、これからたくさん愛してもらえる喜びのまま抱き着いた。
「虎君大好き。愛してる」
エッチする前よりもずっとずっと大きくなった想いのまま言葉を紡げば、虎君から返ってくるのは大きくも優しい『愛』だった。
初めての人 END...
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