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my treasure
my treasure 第10話
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勘違いされていることに気づいた虎だが、桔梗から告げられた事実に勘違いを正す言葉は出てこなかった。
葵が大切過ぎて己の欲に必死でブレーキをかけていたわけだが、それが逆に葵を傷つけているとは思わなかった。
(不満に思っていたことは分かっていたけど、まさかそんな風に思わせていたなんて……)
一度でも葵を抱いてしまえば、二度と葵を手放せなくなると分かっていた。
だからこそ葵のためを想って死に物狂いで衝動を堪えていたわけだが、今になってそれらが全て桔梗が言った通り自身の『エゴ』だったと分かる。何故なら抱こうが抱くまいが葵を手放せるわけがないのだから。
考えればわかることだ。自分は『葵のため』と言いながら実際は一層葵に執着してしまうだろう自分が恐ろしくて抱くことができなかっただけなのだから。
(俺にとって綺麗なのも可愛いのも全部葵だけなのに……)
葵を傷つけるぐらいなら我慢なんてしなければよかった。そう後悔しても既に後の祭りなのだが。
過去の自分を殴りたいと頭を抱える虎。すると突然胸倉を掴まれた。当然、相手は桔梗だ。
「あんたも男ならいい加減ヘタレ根性返上しなさいよ」
蔑むような眼差しを向けてくる妹的存在。彼女は自分が言っている言葉の意味を理解してるのだろうか? 普段の桔梗なら未成年の弟とのセックスを強要するなんて事、するはずがないだろうに。
(それだけ葵が傷ついてたってことだよな……)
大切な弟の悲しむ姿を前にすれば常識なんて二の次になってしまうのだろう。
虎はその事実に今すぐ葵を抱きしめて自分の弱さのせいで傷つけてしまってごめんと許しを乞いたいと思った。
「ちょっと! 聞いてるの!?」
反応を返さない虎に痺れを切らした桔梗の怒号。それに我に返った虎はとりあえず後悔はこの猛獣と化した妹を宥めてからにしようと自分を睨みつける桔梗と向き合った。
だが、虎がアクションを起こす前に思わぬ横やりが入ってきた。
「盛り上がっているところ悪いが、それは玄関でしなければならない話じゃないだろう?」
「! パパ!」
「桔梗、不良も真っ青な顔つきになってるぞ。今年の目標は母さんみたいな女性になることだったはずだが、諦めたのか?」
苦笑交じりに桔梗を制してくるのは彼女の父であり虎にとって育ての父のような存在の茂だ。
かけられた言葉に慌てて手を離して一歩後ろに下がると「パパの意地悪」と不機嫌な面持ちを見せる桔梗。
先程までの鬼の形相とは打って変わって少女のような表情を見せる彼女に虎は純粋に感心してしまう。表情豊かな奴だ。と。
「大丈夫か、虎」
「大丈夫です。ありがとうございます、茂さん」
娘の頭をポンポンと撫でながら虎へのフォローも忘れない茂。
子供だからとぞんざいに扱うことなく一人の人間として気にかけてくれるその姿に、虎は改めて尊敬の念を抱いた。
「私の声、そんなに大きかった?」
「いや、帰ってきてるのになかなか顔を見せないから母さんが気にしてるんだよ」
「! そうだ! 聞いてよパパ! 虎ったらまた葵に我慢させたのよ! 昨日あそこまでしておいてまた直前でヘタレたのよ! 信じられないでしょ!?」
父の注意にしょんぼりしていたのは一瞬だったようだ。
桔梗は思い出したと言わんばかりにまた勢いを取り戻し、今度は虎ではなく父に詰め寄った。
指さして責め立ててくる桔梗に、勘違いだと訂正することを後回しにしていたと気づいた虎はどうしたものかと困ってしまう。
理解があるとはいえ流石に親を前に『葵を抱いた』と言えるわけがない。
どうしたものかと考え込んでいれば、桔梗を再び制す茂の声が聞こえた。それにぎょっとしてしまったのは仕方ない。
「ん? 俺はそんな報告は受けてないぞ?」
「え? どういうこと?」
「斗弛弥さん―――クライストの養護教諭から連絡があったんだよ」
「! 葵に何かあったんですか!?」
茂からの言葉に桔梗を押し退け詰め寄ってしまう。
何故自分に連絡をくれないのかと憤りを感じてしまう虎だが、体調を崩したのならまずは親に連絡するのが普通だろう。
いや、それでも今まで親に連絡するよりも先に連絡を貰っていたから血の気が引く思いなのだ。親の判断が必要な状況に陥っているのだろうか。と。
心配のあまり顔面蒼白になってしまっていたのだろう。茂は驚いたように目を見開き、落ち着けと制してきた。
「違う違う。鎮痛剤が過剰摂取にならない様にって情報共有してくれただけだ」
「でも―――」
「葵が保健室に行ったわけじゃないから落ち着け。な?」
苦笑を濃くして先程桔梗にしたように頭をポンポンと叩いてくる茂。
とりあえず葵は無事だということは理解できたが、それでも心配な事には変わらない。
宥められた手前一旦引いた虎だが、葵に何かあったらと考えてしまって生きた心地はしなかった。
葵が大切過ぎて己の欲に必死でブレーキをかけていたわけだが、それが逆に葵を傷つけているとは思わなかった。
(不満に思っていたことは分かっていたけど、まさかそんな風に思わせていたなんて……)
一度でも葵を抱いてしまえば、二度と葵を手放せなくなると分かっていた。
だからこそ葵のためを想って死に物狂いで衝動を堪えていたわけだが、今になってそれらが全て桔梗が言った通り自身の『エゴ』だったと分かる。何故なら抱こうが抱くまいが葵を手放せるわけがないのだから。
考えればわかることだ。自分は『葵のため』と言いながら実際は一層葵に執着してしまうだろう自分が恐ろしくて抱くことができなかっただけなのだから。
(俺にとって綺麗なのも可愛いのも全部葵だけなのに……)
葵を傷つけるぐらいなら我慢なんてしなければよかった。そう後悔しても既に後の祭りなのだが。
過去の自分を殴りたいと頭を抱える虎。すると突然胸倉を掴まれた。当然、相手は桔梗だ。
「あんたも男ならいい加減ヘタレ根性返上しなさいよ」
蔑むような眼差しを向けてくる妹的存在。彼女は自分が言っている言葉の意味を理解してるのだろうか? 普段の桔梗なら未成年の弟とのセックスを強要するなんて事、するはずがないだろうに。
(それだけ葵が傷ついてたってことだよな……)
大切な弟の悲しむ姿を前にすれば常識なんて二の次になってしまうのだろう。
虎はその事実に今すぐ葵を抱きしめて自分の弱さのせいで傷つけてしまってごめんと許しを乞いたいと思った。
「ちょっと! 聞いてるの!?」
反応を返さない虎に痺れを切らした桔梗の怒号。それに我に返った虎はとりあえず後悔はこの猛獣と化した妹を宥めてからにしようと自分を睨みつける桔梗と向き合った。
だが、虎がアクションを起こす前に思わぬ横やりが入ってきた。
「盛り上がっているところ悪いが、それは玄関でしなければならない話じゃないだろう?」
「! パパ!」
「桔梗、不良も真っ青な顔つきになってるぞ。今年の目標は母さんみたいな女性になることだったはずだが、諦めたのか?」
苦笑交じりに桔梗を制してくるのは彼女の父であり虎にとって育ての父のような存在の茂だ。
かけられた言葉に慌てて手を離して一歩後ろに下がると「パパの意地悪」と不機嫌な面持ちを見せる桔梗。
先程までの鬼の形相とは打って変わって少女のような表情を見せる彼女に虎は純粋に感心してしまう。表情豊かな奴だ。と。
「大丈夫か、虎」
「大丈夫です。ありがとうございます、茂さん」
娘の頭をポンポンと撫でながら虎へのフォローも忘れない茂。
子供だからとぞんざいに扱うことなく一人の人間として気にかけてくれるその姿に、虎は改めて尊敬の念を抱いた。
「私の声、そんなに大きかった?」
「いや、帰ってきてるのになかなか顔を見せないから母さんが気にしてるんだよ」
「! そうだ! 聞いてよパパ! 虎ったらまた葵に我慢させたのよ! 昨日あそこまでしておいてまた直前でヘタレたのよ! 信じられないでしょ!?」
父の注意にしょんぼりしていたのは一瞬だったようだ。
桔梗は思い出したと言わんばかりにまた勢いを取り戻し、今度は虎ではなく父に詰め寄った。
指さして責め立ててくる桔梗に、勘違いだと訂正することを後回しにしていたと気づいた虎はどうしたものかと困ってしまう。
理解があるとはいえ流石に親を前に『葵を抱いた』と言えるわけがない。
どうしたものかと考え込んでいれば、桔梗を再び制す茂の声が聞こえた。それにぎょっとしてしまったのは仕方ない。
「ん? 俺はそんな報告は受けてないぞ?」
「え? どういうこと?」
「斗弛弥さん―――クライストの養護教諭から連絡があったんだよ」
「! 葵に何かあったんですか!?」
茂からの言葉に桔梗を押し退け詰め寄ってしまう。
何故自分に連絡をくれないのかと憤りを感じてしまう虎だが、体調を崩したのならまずは親に連絡するのが普通だろう。
いや、それでも今まで親に連絡するよりも先に連絡を貰っていたから血の気が引く思いなのだ。親の判断が必要な状況に陥っているのだろうか。と。
心配のあまり顔面蒼白になってしまっていたのだろう。茂は驚いたように目を見開き、落ち着けと制してきた。
「違う違う。鎮痛剤が過剰摂取にならない様にって情報共有してくれただけだ」
「でも―――」
「葵が保健室に行ったわけじゃないから落ち着け。な?」
苦笑を濃くして先程桔梗にしたように頭をポンポンと叩いてくる茂。
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