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my treasure
my treasure 第12話
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ひとしきり笑うと茂は身体は大人になっても中身はまだまだ子供だと虎を揶揄し、そして落ち込んでいる息子に『大人』として言葉をかけた。
「色恋だけで言えばお前の判断は確かに間違っていたかもしれない。でも人生って長い目で見ればお前の判断は何も間違っちゃいない。だからそんなに自分を責めてやるな」
掛けられた言葉に困惑の表情を見せる虎。茂はその表情に今度は穏やかに笑うと、二人の息子に幸せになって欲しいという親心を告げてきた。
「『お互いが居ればそれでいい』。その想いだけで生きていければいいんだがな。……でも、そんなの無理だろう?」
「そう、ですね……」
「俺もお前ぐらいの時には樹里斗が居ればそれでいいって思っていたよ。でも、二人きりで生きていける程人間は万能じゃない。周りにいる家族や友人はもちろん、顔も知らない人たちに支えられて生きてるって言うのが実情だ」
茂がする現実的な話を理解するも虎の眉間には皺が刻まれ、悔しいと思っているだろうことが伝わってきた。
二人きりの世界で生きることは不可能だということは分かっていたが、限りなくそれに近い世界で生きることはできると思っていた。
しかしそれすら不可能だと諭されている。富も名声も得ている茂の言葉はそれが真理であることを語った。
「この先も二人一緒に居たいと思うのなら、一時の熱情に流されるべきじゃない。先を見据えて離れることも大切だ」
「でも、葵の身体を第一に考えれば今日は休ませた方が―――」
「葵が『辛いから休みたい』と言ったのか?」
「それは、言われてない、です……」
投げかけられた質問に俯く虎。
確かに葵は『休みたい』と言ったが、その理由は『身体が辛いから』ではない。
「虎と一緒に居たいから『休みたい』って我侭を言ったんじゃないか?」
「っ……」
「その気持ちは分かるが、でもそんな理由で1度でも学校を休んだらどうなるか、お前は分かっているだろう?」
「はい……」
答えを見透かしたような質問に虎はより深く俯いてしまう。
一度赦してしまえば、きっと後はなし崩しになってしまう。自制することができず、欲を優先して学業を疎かにしてしまうだろう未来を想像するのは実に容易かった。
己の弱さを知るからこそ葵の傍に居たい己の欲を押し殺した。
だが、それを葵の体調を第一に考えられなかった理由にしてもいいのだろうか?
「ありがとうな」
「え?」
「そこまで葵を大切に想ってくれて、だよ。我が子をこんなにも愛してくれる人がいるなんて親からすれば嬉しい限りだ」
茂はそう言うとそろそろリビングに戻ろうと促してきた。そろそろ桔梗の怒りも冷めているはずだ。と。
虎はその言葉に一瞬躊躇いを見せるも自分が敬愛する第二の父を信じて頷きを返す。
「しかし本当にお前は結城に似てないな」
「それは斗弛弥さんにも言われます。父さん似だって」
「確かに『ジュニア』って呼ばれてたな」
思い出したと笑う茂は再び虎の頭に手を置くと少々乱暴に髪を撫でると「良かったな」と言ってくる。
父のことは嫌いではない。どちらかと言えば尊敬しているぐらいだ。だが、父に似ていることを『良かった』と思うかと言われればそれは違う気がして虎は「良かったんですかね」と苦笑いを返した。
「なんだ。絃凉に似てると不満なのか?」
「『不満』というか、俺は似てると思ってないんで」
「ああ、見た目はそうだな。見た目は二人の子供だって言われたら分かる程度だな」
茂曰く、虎が父親に似ているというのはその容姿ではなく性格の話とのことだ。
斗弛弥からは見た目も似ていると言われていた虎はその言葉にちょっと驚いた。てっきり茂も容姿の話をしていると思っていたから。
「そりゃ昔は見た目も似てると思ってたさ。でも一人の男になったと思ったのは中学に上がったぐらいからかな」
昔を懐かしんでいるのか茂は当時を思い出すように笑う。そんな第二の父の横顔に目をやれば「葵が男に変えたのか?」と茶化された。
虎はその問いかけに苦笑を漏らし、「葵を好きになったのはそれよりも前ですよ」と否定した。
「ああそうか。5歳の頃からだったか?」
「そうですね。生まれたばかりの葵に全部奪われたんで」
「そうだったそうだった。その後結城が『母親なのに負けた』って大騒ぎしてたな」
あれは愉快だった。そう言って豪快に笑う茂。
その姿に虎は昔から自分の想いを否定せず肯定してもらっていたんだと改めて実感した。
(俺は昔から恵まれていたんだな……)
想いを否定されなかった。それだけでも幸運なことだが、実の両親も第二の両親も虎の想いを『当たり前』だと『普通』だと言ってくれた。そして、こうやって誰よりも『想い』を『応援』してくれた。
虎は改めて認めてくれた両親達に感謝し、誓う。誰よりも葵を愛し、幸せにしよう。と。
「俺、葵を好きになってよかったです」
「それは『幸せだ』ってことか?」
「そんな言葉じゃ足りないぐらい『幸せ』ですね」
この感情を言い表せる言葉が見つからないと笑えば、茂からは「まだまだこれからだぞ」と不敵な笑みが返された。
「色恋だけで言えばお前の判断は確かに間違っていたかもしれない。でも人生って長い目で見ればお前の判断は何も間違っちゃいない。だからそんなに自分を責めてやるな」
掛けられた言葉に困惑の表情を見せる虎。茂はその表情に今度は穏やかに笑うと、二人の息子に幸せになって欲しいという親心を告げてきた。
「『お互いが居ればそれでいい』。その想いだけで生きていければいいんだがな。……でも、そんなの無理だろう?」
「そう、ですね……」
「俺もお前ぐらいの時には樹里斗が居ればそれでいいって思っていたよ。でも、二人きりで生きていける程人間は万能じゃない。周りにいる家族や友人はもちろん、顔も知らない人たちに支えられて生きてるって言うのが実情だ」
茂がする現実的な話を理解するも虎の眉間には皺が刻まれ、悔しいと思っているだろうことが伝わってきた。
二人きりの世界で生きることは不可能だということは分かっていたが、限りなくそれに近い世界で生きることはできると思っていた。
しかしそれすら不可能だと諭されている。富も名声も得ている茂の言葉はそれが真理であることを語った。
「この先も二人一緒に居たいと思うのなら、一時の熱情に流されるべきじゃない。先を見据えて離れることも大切だ」
「でも、葵の身体を第一に考えれば今日は休ませた方が―――」
「葵が『辛いから休みたい』と言ったのか?」
「それは、言われてない、です……」
投げかけられた質問に俯く虎。
確かに葵は『休みたい』と言ったが、その理由は『身体が辛いから』ではない。
「虎と一緒に居たいから『休みたい』って我侭を言ったんじゃないか?」
「っ……」
「その気持ちは分かるが、でもそんな理由で1度でも学校を休んだらどうなるか、お前は分かっているだろう?」
「はい……」
答えを見透かしたような質問に虎はより深く俯いてしまう。
一度赦してしまえば、きっと後はなし崩しになってしまう。自制することができず、欲を優先して学業を疎かにしてしまうだろう未来を想像するのは実に容易かった。
己の弱さを知るからこそ葵の傍に居たい己の欲を押し殺した。
だが、それを葵の体調を第一に考えられなかった理由にしてもいいのだろうか?
「ありがとうな」
「え?」
「そこまで葵を大切に想ってくれて、だよ。我が子をこんなにも愛してくれる人がいるなんて親からすれば嬉しい限りだ」
茂はそう言うとそろそろリビングに戻ろうと促してきた。そろそろ桔梗の怒りも冷めているはずだ。と。
虎はその言葉に一瞬躊躇いを見せるも自分が敬愛する第二の父を信じて頷きを返す。
「しかし本当にお前は結城に似てないな」
「それは斗弛弥さんにも言われます。父さん似だって」
「確かに『ジュニア』って呼ばれてたな」
思い出したと笑う茂は再び虎の頭に手を置くと少々乱暴に髪を撫でると「良かったな」と言ってくる。
父のことは嫌いではない。どちらかと言えば尊敬しているぐらいだ。だが、父に似ていることを『良かった』と思うかと言われればそれは違う気がして虎は「良かったんですかね」と苦笑いを返した。
「なんだ。絃凉に似てると不満なのか?」
「『不満』というか、俺は似てると思ってないんで」
「ああ、見た目はそうだな。見た目は二人の子供だって言われたら分かる程度だな」
茂曰く、虎が父親に似ているというのはその容姿ではなく性格の話とのことだ。
斗弛弥からは見た目も似ていると言われていた虎はその言葉にちょっと驚いた。てっきり茂も容姿の話をしていると思っていたから。
「そりゃ昔は見た目も似てると思ってたさ。でも一人の男になったと思ったのは中学に上がったぐらいからかな」
昔を懐かしんでいるのか茂は当時を思い出すように笑う。そんな第二の父の横顔に目をやれば「葵が男に変えたのか?」と茶化された。
虎はその問いかけに苦笑を漏らし、「葵を好きになったのはそれよりも前ですよ」と否定した。
「ああそうか。5歳の頃からだったか?」
「そうですね。生まれたばかりの葵に全部奪われたんで」
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「俺、葵を好きになってよかったです」
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