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my treasure
my treasure 第31話
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「え……、『海音がライバル』って、お前、まさか―――」
「妄想は止めろ。俺が愛してるのは葵だけだ」
雲英の眉間に皺が寄ったのは、誤解が生まれたからだ。
そして虎はその誤解がどういったものか瞬時に理解し、雲英以上に表情を顰めて彼の想像にストップをかけた。
知り合ってから今まで一度たりともブレたことがない虎は、例え誤解でも葵以外に自分の気持ちがあると言われるのがどうしても許せないと言わんばかりだ。
「ならなんで海音がライバルになるんだよ? 彼氏的にはお前らの仲がそういう風に見えるってことじゃねーの?」
「だからなんでお前は全部恋愛に行くんだ。色惚けも大概にしろ。……俺の一番の理解者は海音になってるんだよ。葵の中で」
「え? それがなんで『ライバル』になるんだ?」
説明されても理解できないと言わんばかりの雲英の脳内は虎が言ったように色恋一色なのかもしれない。
首を傾げる雲英に、虎はため息を吐く。だが直ぐに今まで雲英に見せたことのない優しい表情を浮かべた。
「葵は俺の一番の理解者でありたいと思ってくれてるんだ。だから、海音には負けないってよく言ってる」
それは可愛い独占欲で、愛しい人からの想いが嬉しくて最近は『葵が一番俺を理解してくれてるよ』と言えなくなっている自分がいるから困ったものだ。
心配しなくとも、葵がいつだって一番なのに。
(そもそも一番とかじゃないんだよな。葵だけなんだから)
葵か、葵以外か。それが虎の認識だから、順位付けなど意味のない事だ。
「うげ……、恋人にはそんな甘ったるい顔見せてるのか、お前」
「甘ったるいかどうかは知らないが、葵以外にも笑えとはよく言われるな」
「あー。お前、全然笑わないもんな。俺が知ってるお前の笑い顔って人を馬鹿にしてるムカつくやつだけだし」
気持ち悪いけど、珍しいものを見れた。
そう言った雲英はこれまで海音から散々言われた言葉を続け、もう少し人間らしい生き方をしろと注意を投げてきた。
「海音が困るから、か?」
「そうだよ。お前の悪態のフォローばかりで可哀想だろうが」
「そうだな……。お前が素直に『羨ましい』って言えば考えてやるかな」
「! べ、別に羨ましくなんかねぇーし!」
海音のことが好きで好きで堪らないくせに、何故意地を張るのか。
自分にはもう全部バレているのだから、素直に認めても何の損もないだろうに。
ツンデレはお前だろうという言葉を飲み込んだ虎はあわあわと慌てふためいている雲英を横目に進みの遅い時間を確かめた。
時計を見れば、間もなく昼時という時間。葵の授業が終わるまであと3時間弱といったところか。
時間の進みは異様なまでに遅いが、それでも確実に過ぎているから安堵する。
(午前の授業は確か30分までだったはずだし、昼休みなら電話しても大丈夫だよな?)
葵の体調が心配だから。なんて、自分への言い訳だ。本当はただ声が聞きたいだけ。
虎は時計から雲英に視線を戻すと、そろそろ恋人を迎えに行くために帰ることを伝えた。
「漸くかよ」
「睡眠の邪魔して悪かった。……寝不足のせいで仕事でミスなんてしないでくれよ?」
「誰のせいで寝不足になるかもしれないと思ってんだ!」
お前は鬼か!
そう喚く雲英に、虎は意地悪く笑う。家に招き入れた方が悪い。と。
「暴君過ぎるな!? 確信犯の癖に!」
「『確信犯』か。確かにな。海音が居てお前が断るわけないって分かってたし」
「ああそうだな!?」
ムカつくと不貞腐れる雲英に、虎は「お邪魔様」と立ち上がる。
すると慌てて止めてくる男に、やっぱりバレたかと内心肩を竦ませた。
「なんだよ」
「海音、連れて帰れよ!?」
「なんで? 一緒に居たいだろ?」
「お前は俺を犯罪者にしたいのか!?」
「自室で二人きりだと我慢できないか?」
「当たり前だろうが! 絶対、絶対襲う!」
間髪入れずに認めた雲英は縋る眼差しで虎の腕を掴んでいる。二人きりになったら本気で不味いことになりそうなのだろう。
いっそ襲ってしまえばいい。と思わなくもないが、もしもこれが葵に好意を寄せる誰かだったら? と考えた虎は無責任な言葉を飲み込んだ。
「妄想は止めろ。俺が愛してるのは葵だけだ」
雲英の眉間に皺が寄ったのは、誤解が生まれたからだ。
そして虎はその誤解がどういったものか瞬時に理解し、雲英以上に表情を顰めて彼の想像にストップをかけた。
知り合ってから今まで一度たりともブレたことがない虎は、例え誤解でも葵以外に自分の気持ちがあると言われるのがどうしても許せないと言わんばかりだ。
「ならなんで海音がライバルになるんだよ? 彼氏的にはお前らの仲がそういう風に見えるってことじゃねーの?」
「だからなんでお前は全部恋愛に行くんだ。色惚けも大概にしろ。……俺の一番の理解者は海音になってるんだよ。葵の中で」
「え? それがなんで『ライバル』になるんだ?」
説明されても理解できないと言わんばかりの雲英の脳内は虎が言ったように色恋一色なのかもしれない。
首を傾げる雲英に、虎はため息を吐く。だが直ぐに今まで雲英に見せたことのない優しい表情を浮かべた。
「葵は俺の一番の理解者でありたいと思ってくれてるんだ。だから、海音には負けないってよく言ってる」
それは可愛い独占欲で、愛しい人からの想いが嬉しくて最近は『葵が一番俺を理解してくれてるよ』と言えなくなっている自分がいるから困ったものだ。
心配しなくとも、葵がいつだって一番なのに。
(そもそも一番とかじゃないんだよな。葵だけなんだから)
葵か、葵以外か。それが虎の認識だから、順位付けなど意味のない事だ。
「うげ……、恋人にはそんな甘ったるい顔見せてるのか、お前」
「甘ったるいかどうかは知らないが、葵以外にも笑えとはよく言われるな」
「あー。お前、全然笑わないもんな。俺が知ってるお前の笑い顔って人を馬鹿にしてるムカつくやつだけだし」
気持ち悪いけど、珍しいものを見れた。
そう言った雲英はこれまで海音から散々言われた言葉を続け、もう少し人間らしい生き方をしろと注意を投げてきた。
「海音が困るから、か?」
「そうだよ。お前の悪態のフォローばかりで可哀想だろうが」
「そうだな……。お前が素直に『羨ましい』って言えば考えてやるかな」
「! べ、別に羨ましくなんかねぇーし!」
海音のことが好きで好きで堪らないくせに、何故意地を張るのか。
自分にはもう全部バレているのだから、素直に認めても何の損もないだろうに。
ツンデレはお前だろうという言葉を飲み込んだ虎はあわあわと慌てふためいている雲英を横目に進みの遅い時間を確かめた。
時計を見れば、間もなく昼時という時間。葵の授業が終わるまであと3時間弱といったところか。
時間の進みは異様なまでに遅いが、それでも確実に過ぎているから安堵する。
(午前の授業は確か30分までだったはずだし、昼休みなら電話しても大丈夫だよな?)
葵の体調が心配だから。なんて、自分への言い訳だ。本当はただ声が聞きたいだけ。
虎は時計から雲英に視線を戻すと、そろそろ恋人を迎えに行くために帰ることを伝えた。
「漸くかよ」
「睡眠の邪魔して悪かった。……寝不足のせいで仕事でミスなんてしないでくれよ?」
「誰のせいで寝不足になるかもしれないと思ってんだ!」
お前は鬼か!
そう喚く雲英に、虎は意地悪く笑う。家に招き入れた方が悪い。と。
「暴君過ぎるな!? 確信犯の癖に!」
「『確信犯』か。確かにな。海音が居てお前が断るわけないって分かってたし」
「ああそうだな!?」
ムカつくと不貞腐れる雲英に、虎は「お邪魔様」と立ち上がる。
すると慌てて止めてくる男に、やっぱりバレたかと内心肩を竦ませた。
「なんだよ」
「海音、連れて帰れよ!?」
「なんで? 一緒に居たいだろ?」
「お前は俺を犯罪者にしたいのか!?」
「自室で二人きりだと我慢できないか?」
「当たり前だろうが! 絶対、絶対襲う!」
間髪入れずに認めた雲英は縋る眼差しで虎の腕を掴んでいる。二人きりになったら本気で不味いことになりそうなのだろう。
いっそ襲ってしまえばいい。と思わなくもないが、もしもこれが葵に好意を寄せる誰かだったら? と考えた虎は無責任な言葉を飲み込んだ。
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