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LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN.
LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN. 第1話
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交通の便が悪い郊外に佇む聖クライスト学園高等部は幼稚舎から大学までの一貫教育を謳う全寮制の男子校だ。
此処に通う生徒のほとんどが富裕層――セレブの息子で、親の権力のもと我儘で横柄に育ちがちな彼らはこの学舎で日々献身と博愛と常識を教えられている。
親が貿易商を営む会社の社長という天野悠栖もまた幼稚舎の頃からこの学園でそれらを学び、多くの友人と学園生活を謳歌していた。
「悠栖、体験入部の申し込み、今日までだから忘れるなよ」
多くの生徒で賑わう朝の寮の食堂で味噌汁を啜っていた悠栖にかけられるのは、向かい合わせで座って朝食をとっていた親友の汐唯哉の声。
悠栖は味噌汁から口を放すと昨晩寝る前にちゃんと書いたとドヤ顔をして見せる。
だが、書いただけでまだカバンには入れてないだろうと唯哉に行動を見透かされ、ドヤ顔が引き攣る。
「最後の詰めがお前はいつも甘いんだよ。先週返ってきたテストでもケアレスミス連発でクラス最低点叩き出したんだろ?」
「! なんでチカがそれ知ってんだよ? 俺、喋ってねぇーぞ?」
「ああ、悠栖には聞いてないからな」
決して頭が悪いわけじゃないくせに、テストはいつも下から数えた方が早い順位の悠栖。
先生も呆れるレベルのケアレスミスが無ければテストの順位はもっとマシだろうとテストの度に憐れまれてきた。
そして今回の『進学おめでとうテスト』と呼ばれている実力テストではそのケアレスミスのオンパレードで、人生で初めてクラス最下位をとってしまった。
クラスメイトからはここまで来ると笑えないと言われ凹んだ悠栖は、この失態を誰にも話さなかった。
笑い話にしたところで相手はきっと笑ってはくれないと思ったから。
それなのに、何故クラスが違う唯哉が知っているのか? 憤慨する悠栖に与えられた唯哉のヒントは、『悠栖以外から聞いた』と受け取れた。
「朋喜か? 慶史か?」
真っ先に頭に浮かんだ二人の名前を出せば、唯哉はまさかと鼻で笑う。進学早々上級生に喧嘩を売るような真似するわけないだろ? と。
悠栖は唯哉の言葉に眉をひそめ、意味が分からないと顔だけで訴える。
自分の失態を吹聴している相手も気になるが、今の唯哉の言葉の意味も気になったから。
だから教えろと言わんばかりに凄む悠栖の顔芸に、唯哉は肩をすくませた。何度も言ってることなのに理解力が足りなさすぎだ。なんて言いながら。
「藤原と深町。この二人が裏でなんて呼ばれてるか、それぐらいは知ってるだろ? 流石の悠栖でも」
「知ってる。てか、今俺のこと馬鹿にしただろ!?」
「してないしてない。……なんて呼ばれてるか知ってるなら、分かるだろ? 高等部じゃ一年の俺等は下っ端も下っ端。いくら同学年でもおいそれと『姫』と喋るわけにはいかないんだよ。もしも自分から『姫』達に声なんかかけようもんならワンチャン狙ってる上級生から袋叩きにされるに決まってる」
唯哉は「だから藤原と深町と喋ったりするわけないってこと」と先の言葉の意味を教えてくれた。
だが、その話を聞いた悠栖は大袈裟だと思ってしまう。確かに藤原慶史と深町朋喜はタイプが違えど二人とも女の子のように可愛いし綺麗だと思う。
『男子校あるある』で二人が学園の『姫』とか『アイドル』とか『癒し』とか言われているのもまぁ理解できる。
でも、いくら可愛くても、いくら綺麗でも、同性相手に『ワンチャン』を狙う連中なんてそういないだろうに。
(いやまぁ男子校だし寮生活だし溜まるもんがあるってことは分かるけどさ。でも、それでもやっぱ男同士だし、無理じゃね?)
同性を恋愛対象として見ていない限り、男相手に『お相手願いたい』なんて思わないはず。
しかし、そんな結論に至った悠栖は、自分の考えがこの学園では少数派だったことを思い出した。
男ばかりの空間で一〇年以上生活している弊害か、学園には『恋愛対象は女の子。でもセックスだけなら性別問わず』なんて輩が多くいたから。
「やっぱ、理解できねぇー。いくらあいつらが女顔でも、同じもんが付いてんだぜ? それなのによくヤりたいとか思うよな」
「声でかいって。……まぁ俺も本気で好きでもない相手とよくヤる気になるなとは思うけど」
「! だよな! チカは俺と一緒で女の子大好きだもんな!」
「頼むから人の話聞いてくれよ、悠栖」
自分と同じだと笑う悠栖だが、唯哉は一言も『女の子が好き』と言っていない。
おそらく悠栖は唯哉の言葉を『男とセックスする気にはなれない』と捉えたため、『セックスは女の子とするものだと思う』と言葉を曲解し、『女の子が好き』という結論に至ったのだろう。
唯哉はそんな悠栖の思考回路などお見通しなのか、取り乱すことも慌てることもなく悠栖の勘違いを訂正する。相手のことを本気で大事に想っているなら性別は特に問題じゃないと思っている。と。
「え? じゃぁチカって男が好きなわけ?」
「だから人の話を聞けって。俺は一言も『男が好き』だとは言ってないだろうが」
飛躍させるなと苦笑を漏らす唯哉は、思い込みが激しく早合点する親友に自分の考えが伝わるように言葉を咀嚼して説明する。
しかし、根本的な考え方の違いは大きく、いくら唯哉が分かりやすい言葉を選んで説明しようとも悠栖には伝わらない。
唯哉もそれを分かっているのか、ある程度の問答の後、「これ以上は平行線だな」と悠栖にまだ続けるか聞いてくる。
悠栖は微妙な面持ちで首を振ると、まだ食べ終えていないにもかかわらず箸を置いた。
「悠栖? まだ残ってるぞ? 腹でも痛いのか?」
「なぁ、チカから見てもやっぱり中等部の頃よりヤバイって思うか?」
「? 何が?」
首を傾げて見せる唯哉に悠栖は主語が無かったと謝って苦笑いを浮かべた。
すると唯哉は主語が無いのはいつものことだと言って、謝るよりも何のことを言っているのか教えてくれと悠栖と同じく箸を置いた。
きっと唯哉は悠栖が今から話す内容があまり楽しいものではないと察したのだろう。
悠栖は周囲を伺い、他に聞こえないように注意を払った。
「朋喜達だよ。やっぱ、中等部よりもずっと危ないと思うか?」
「それは、『そういう意味』で?」
「『そういう意味』で」
明確な言葉は口にするのも嫌だから避けた。
だが、悠栖の言いたいことはちゃんと唯哉に伝わった。
確認された内容に頷きを返せば、唯哉は声を小さく「危険だと思う」と頷いた。
高校生の性欲は中学生のそれよりもずっと激しく凶悪だと思うから。と、そう言葉を続ける唯哉に、悠栖は不安を隠せない表情で「だよな……」と肩を落とした。
此処に通う生徒のほとんどが富裕層――セレブの息子で、親の権力のもと我儘で横柄に育ちがちな彼らはこの学舎で日々献身と博愛と常識を教えられている。
親が貿易商を営む会社の社長という天野悠栖もまた幼稚舎の頃からこの学園でそれらを学び、多くの友人と学園生活を謳歌していた。
「悠栖、体験入部の申し込み、今日までだから忘れるなよ」
多くの生徒で賑わう朝の寮の食堂で味噌汁を啜っていた悠栖にかけられるのは、向かい合わせで座って朝食をとっていた親友の汐唯哉の声。
悠栖は味噌汁から口を放すと昨晩寝る前にちゃんと書いたとドヤ顔をして見せる。
だが、書いただけでまだカバンには入れてないだろうと唯哉に行動を見透かされ、ドヤ顔が引き攣る。
「最後の詰めがお前はいつも甘いんだよ。先週返ってきたテストでもケアレスミス連発でクラス最低点叩き出したんだろ?」
「! なんでチカがそれ知ってんだよ? 俺、喋ってねぇーぞ?」
「ああ、悠栖には聞いてないからな」
決して頭が悪いわけじゃないくせに、テストはいつも下から数えた方が早い順位の悠栖。
先生も呆れるレベルのケアレスミスが無ければテストの順位はもっとマシだろうとテストの度に憐れまれてきた。
そして今回の『進学おめでとうテスト』と呼ばれている実力テストではそのケアレスミスのオンパレードで、人生で初めてクラス最下位をとってしまった。
クラスメイトからはここまで来ると笑えないと言われ凹んだ悠栖は、この失態を誰にも話さなかった。
笑い話にしたところで相手はきっと笑ってはくれないと思ったから。
それなのに、何故クラスが違う唯哉が知っているのか? 憤慨する悠栖に与えられた唯哉のヒントは、『悠栖以外から聞いた』と受け取れた。
「朋喜か? 慶史か?」
真っ先に頭に浮かんだ二人の名前を出せば、唯哉はまさかと鼻で笑う。進学早々上級生に喧嘩を売るような真似するわけないだろ? と。
悠栖は唯哉の言葉に眉をひそめ、意味が分からないと顔だけで訴える。
自分の失態を吹聴している相手も気になるが、今の唯哉の言葉の意味も気になったから。
だから教えろと言わんばかりに凄む悠栖の顔芸に、唯哉は肩をすくませた。何度も言ってることなのに理解力が足りなさすぎだ。なんて言いながら。
「藤原と深町。この二人が裏でなんて呼ばれてるか、それぐらいは知ってるだろ? 流石の悠栖でも」
「知ってる。てか、今俺のこと馬鹿にしただろ!?」
「してないしてない。……なんて呼ばれてるか知ってるなら、分かるだろ? 高等部じゃ一年の俺等は下っ端も下っ端。いくら同学年でもおいそれと『姫』と喋るわけにはいかないんだよ。もしも自分から『姫』達に声なんかかけようもんならワンチャン狙ってる上級生から袋叩きにされるに決まってる」
唯哉は「だから藤原と深町と喋ったりするわけないってこと」と先の言葉の意味を教えてくれた。
だが、その話を聞いた悠栖は大袈裟だと思ってしまう。確かに藤原慶史と深町朋喜はタイプが違えど二人とも女の子のように可愛いし綺麗だと思う。
『男子校あるある』で二人が学園の『姫』とか『アイドル』とか『癒し』とか言われているのもまぁ理解できる。
でも、いくら可愛くても、いくら綺麗でも、同性相手に『ワンチャン』を狙う連中なんてそういないだろうに。
(いやまぁ男子校だし寮生活だし溜まるもんがあるってことは分かるけどさ。でも、それでもやっぱ男同士だし、無理じゃね?)
同性を恋愛対象として見ていない限り、男相手に『お相手願いたい』なんて思わないはず。
しかし、そんな結論に至った悠栖は、自分の考えがこの学園では少数派だったことを思い出した。
男ばかりの空間で一〇年以上生活している弊害か、学園には『恋愛対象は女の子。でもセックスだけなら性別問わず』なんて輩が多くいたから。
「やっぱ、理解できねぇー。いくらあいつらが女顔でも、同じもんが付いてんだぜ? それなのによくヤりたいとか思うよな」
「声でかいって。……まぁ俺も本気で好きでもない相手とよくヤる気になるなとは思うけど」
「! だよな! チカは俺と一緒で女の子大好きだもんな!」
「頼むから人の話聞いてくれよ、悠栖」
自分と同じだと笑う悠栖だが、唯哉は一言も『女の子が好き』と言っていない。
おそらく悠栖は唯哉の言葉を『男とセックスする気にはなれない』と捉えたため、『セックスは女の子とするものだと思う』と言葉を曲解し、『女の子が好き』という結論に至ったのだろう。
唯哉はそんな悠栖の思考回路などお見通しなのか、取り乱すことも慌てることもなく悠栖の勘違いを訂正する。相手のことを本気で大事に想っているなら性別は特に問題じゃないと思っている。と。
「え? じゃぁチカって男が好きなわけ?」
「だから人の話を聞けって。俺は一言も『男が好き』だとは言ってないだろうが」
飛躍させるなと苦笑を漏らす唯哉は、思い込みが激しく早合点する親友に自分の考えが伝わるように言葉を咀嚼して説明する。
しかし、根本的な考え方の違いは大きく、いくら唯哉が分かりやすい言葉を選んで説明しようとも悠栖には伝わらない。
唯哉もそれを分かっているのか、ある程度の問答の後、「これ以上は平行線だな」と悠栖にまだ続けるか聞いてくる。
悠栖は微妙な面持ちで首を振ると、まだ食べ終えていないにもかかわらず箸を置いた。
「悠栖? まだ残ってるぞ? 腹でも痛いのか?」
「なぁ、チカから見てもやっぱり中等部の頃よりヤバイって思うか?」
「? 何が?」
首を傾げて見せる唯哉に悠栖は主語が無かったと謝って苦笑いを浮かべた。
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きっと唯哉は悠栖が今から話す内容があまり楽しいものではないと察したのだろう。
悠栖は周囲を伺い、他に聞こえないように注意を払った。
「朋喜達だよ。やっぱ、中等部よりもずっと危ないと思うか?」
「それは、『そういう意味』で?」
「『そういう意味』で」
明確な言葉は口にするのも嫌だから避けた。
だが、悠栖の言いたいことはちゃんと唯哉に伝わった。
確認された内容に頷きを返せば、唯哉は声を小さく「危険だと思う」と頷いた。
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