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LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN.
LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN. 第22話
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「悠栖?」
黙り込んだ自分に掛けられる心配そうな声。
こういうところは今までと同じ唯哉なのに、どうしても十数分前まで那鳥に向けていた顔が頭から離れなくて、心だけでなく頭までグルグルしてしまう。
「な、んでもねぇ……。てか、ごめんな? 折角姫神と楽しそうに喋ってたのに変な心配かけちまってさ」
「いや、別に悠栖が謝ることじゃないだろ。 むしろ俺の方こそ邪魔して悪かったな」
実は悠栖、クラスメイトとの交流の時間として、昼休みというこの時間を結構大事にしていた。
だがそれを口に出したことなどなく、誰かに知られる素振りなども見せたことなどなかったはず。
それなのに唯哉は悠栖のそういうところまで見抜いていて、「ありがとうな」と感謝を告げてきた。
「悠栖がクラスでどんな感じなのかとか、ずっと気になってはいたし、今日はいい機会だったよ」
「は、はは……。チカって本当、良い奴だな……」
親友っていうか兄弟っていうか、むしろお父さん的な?
唯哉の頼もしさに何故か無性に泣きたくなって、それを誤魔化すように茶化したら、唯哉は「良い奴が友達にいるからな」と笑った。
その悪戯な笑い顔に、今言った『良い奴』が自分のことなのだろうと悠栖は思い、改めて唯哉が大事だと感じた。
(すっげぇチカのこと大事だし、幸せになって欲しいってマジで思ってるのに、なんで、……なんで応援、してやれねぇーんだろ……)
本気で惚れてるなら男同士の恋愛もアリだと思っていたはずなのに、どうして?
結局自分は何も理解できておらず、『理想』を上辺だけの思いとして口にしていただけなのだろうか?
同性愛に対して偏見はあれど、それでも多少の理解を示せる自分というものに酔っていただけなのだろうか?
(つーか、『理解できる』とかめちゃくちゃ上から目線だな、俺)
考えれば考えるほど、心がぐちゃぐちゃになってしまう。驕った自分は『良い奴』どころか、真逆の存在のように思えた。
落ちた心に、空笑いすらできなくなる。唯哉がそれに気づいて心配そうに顔を覗き込んでくるのは、すぐのことだった。
「お、れの事はいいから、さっさと教室戻れよ。次、移動なんだろ?」
「いやでも―――」
「『でも』じゃねーよ。くだらない理由で遅刻してペナルティ貰うな馬鹿チカ」
持てる元気を総動員して笑顔を貼り付け唯哉を押しやる悠栖。
体格差のせいか、はたまた筋力のせいか、押されても唯哉は数歩動いただけで直ぐに悠栖の腕に抗い心配を露わにする。
良い奴なのは分かっているが、こういう時は空気を読んで立ち去るのがマナーだろうに。
悠栖は眉を下げる唯哉に「さっさと行けって!」と蹴りを入れてしまう。
「おまっ、本気で蹴るなよな」
「本気じゃねーし! 俺が本気で蹴ったら骨折モノだぞ!?」
非難の声が上がるも聞き入れず、「早く行け!」の一点張り。すると漸く、今は何を言っても無駄だと悟ったのか、唯哉は「分かったよ」とため息交じりに肩を落とした。
言われた通り踵を返し、教室へと戻る唯哉。
立ち去る前に掛けられた「部活までには元気になっとけよ」なんて言葉に悠栖はちょっと泣きそうになりながらも元気な声を返し、自分も教室へと戻るのだった。
黙り込んだ自分に掛けられる心配そうな声。
こういうところは今までと同じ唯哉なのに、どうしても十数分前まで那鳥に向けていた顔が頭から離れなくて、心だけでなく頭までグルグルしてしまう。
「な、んでもねぇ……。てか、ごめんな? 折角姫神と楽しそうに喋ってたのに変な心配かけちまってさ」
「いや、別に悠栖が謝ることじゃないだろ。 むしろ俺の方こそ邪魔して悪かったな」
実は悠栖、クラスメイトとの交流の時間として、昼休みというこの時間を結構大事にしていた。
だがそれを口に出したことなどなく、誰かに知られる素振りなども見せたことなどなかったはず。
それなのに唯哉は悠栖のそういうところまで見抜いていて、「ありがとうな」と感謝を告げてきた。
「悠栖がクラスでどんな感じなのかとか、ずっと気になってはいたし、今日はいい機会だったよ」
「は、はは……。チカって本当、良い奴だな……」
親友っていうか兄弟っていうか、むしろお父さん的な?
唯哉の頼もしさに何故か無性に泣きたくなって、それを誤魔化すように茶化したら、唯哉は「良い奴が友達にいるからな」と笑った。
その悪戯な笑い顔に、今言った『良い奴』が自分のことなのだろうと悠栖は思い、改めて唯哉が大事だと感じた。
(すっげぇチカのこと大事だし、幸せになって欲しいってマジで思ってるのに、なんで、……なんで応援、してやれねぇーんだろ……)
本気で惚れてるなら男同士の恋愛もアリだと思っていたはずなのに、どうして?
結局自分は何も理解できておらず、『理想』を上辺だけの思いとして口にしていただけなのだろうか?
同性愛に対して偏見はあれど、それでも多少の理解を示せる自分というものに酔っていただけなのだろうか?
(つーか、『理解できる』とかめちゃくちゃ上から目線だな、俺)
考えれば考えるほど、心がぐちゃぐちゃになってしまう。驕った自分は『良い奴』どころか、真逆の存在のように思えた。
落ちた心に、空笑いすらできなくなる。唯哉がそれに気づいて心配そうに顔を覗き込んでくるのは、すぐのことだった。
「お、れの事はいいから、さっさと教室戻れよ。次、移動なんだろ?」
「いやでも―――」
「『でも』じゃねーよ。くだらない理由で遅刻してペナルティ貰うな馬鹿チカ」
持てる元気を総動員して笑顔を貼り付け唯哉を押しやる悠栖。
体格差のせいか、はたまた筋力のせいか、押されても唯哉は数歩動いただけで直ぐに悠栖の腕に抗い心配を露わにする。
良い奴なのは分かっているが、こういう時は空気を読んで立ち去るのがマナーだろうに。
悠栖は眉を下げる唯哉に「さっさと行けって!」と蹴りを入れてしまう。
「おまっ、本気で蹴るなよな」
「本気じゃねーし! 俺が本気で蹴ったら骨折モノだぞ!?」
非難の声が上がるも聞き入れず、「早く行け!」の一点張り。すると漸く、今は何を言っても無駄だと悟ったのか、唯哉は「分かったよ」とため息交じりに肩を落とした。
言われた通り踵を返し、教室へと戻る唯哉。
立ち去る前に掛けられた「部活までには元気になっとけよ」なんて言葉に悠栖はちょっと泣きそうになりながらも元気な声を返し、自分も教室へと戻るのだった。
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