LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN.

鏡由良

文字の大きさ
32 / 54
LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN.

LOVE IS SOMETHING YOU FALL IN. 第31話

しおりを挟む
「あのさ、もうずっと前から知ってた事、改めて言っていいかな?」
「え、それ拒否権あるのか? あるなら拒否したいんだけど」
「悠栖には聞いてないからどうでもいいかな! 朋喜と葵に聞いてるだけだし?」
 昼休みが半分過ぎた頃、午後の授業で絶対当てられると分かっていたのに予習を忘れていた悠栖が那鳥に頼み込んでノートを写させてもらっていたら、それまで珍しく大人しくしていた慶史が身を乗り出して「我慢の限界」と訴えてきた。
 那鳥のノートを隠す様に机に上体を預けてくる慶史はとても邪魔だ。
 時間が無いから後にしてくれと慶史を押し退けながら申し出を却下したら、拒否権どころか会話する権利ももらえなかった。
 慶史のこういう悪態はいつもの事だが、授業までにノートを写し終えたい悠栖の今日の機嫌はあまり良くないようで、いつもなら笑って扱いに突っ込みを入れるだろうシーンで露骨に顔を顰められてしまった。
「ゆ、悠栖、落ち着いて? 慶史は僕達が何とかするから、ね?」
 売られた喧嘩を買おうとした悠栖の様子をいち早く察した葵が、慶史を宥めながらも「邪魔してごめんね?」と代わりに謝ってくる。
 慶史には腹が立つが葵を困らせるわけにはいかない。悠栖は怒りをグッと堪えて分かったと息を吐いた。
 耳だけは友人達へと意識を向けながら、ノートに視線を落としペンを再び走らせる悠栖。
 挑発に乗ってこなかったと慶史は不満そうな声を漏らしたが、すぐにまた葵に怒られ、悠栖を煽るのは諦めた。
「で、慶史君は何が言いたいの?」
「みんな知ってる事だよ。……悠栖は馬鹿だってそういう話」
「! 慶史! どうしてそんなに悠栖に意地悪するの!?」
 気になると朋喜が話題を戻し、それに慶史が応え、そして葵が声を荒げて怒り出す。
 最初からなんとなく悪口だろうと思っていたから大して驚かなかったものの、やっぱり腹は立つ。
 だから悠栖は与えられた不快感に反撃を試みることにした。
 きっと返り討ちに合うだろうが、やられっぱなしは性に合わない。
「マモ、諦めろって。慶史の性格の悪さは生まれる前からのもんだぞ。きっと」
「悠栖、どうしたの? ここ最近ずっと『らしく』ないよ?」
「別にどうもしてねぇーよ? 慶史に言われっぱなしで腹が立っただけ」
 俺らしいってそもそも何?
 そんなことを笑顔で尋ねる悠栖は気づいていない。それがとても棘がある言い方だったとは、まったく。
 悠栖がピリピリしているということを友人達はずっと感じていたのだろう。
 笑顔で毒を吐く悠栖に、そのストレスが自分達の想像以上だと察して返す言葉を失ってしまった。
 シンと静まり返ったせいで、教室の喧騒がよく耳に届いた。
 騒々しいその音の数々に悠栖は「煩いな……」と舌打ちをして、顔を顰めたままノートへと視線を戻す。
 あまり物事を深く考えていないような笑顔で愛想をそこら中に振りまいていた悠栖を最近教室でも寮室でも見ていない朋喜は『原因』に心当たりがあるのか、「意地張ると長いって知ってたけど……」とわざとらしく大きなため息を吐いた。
「ねぇ、いつ解決するの? 朋喜が言ったんでしょ? 『暫く様子を見よう』って」
「そんなの僕が知りたいよ。あの時は見守ることが最善だと思ったってだけだし」
「えぇ……無責任……」
「分かってるよ。でも、こればっかりは僕だけじゃどうしようもないことじゃない?」
 悠栖の目の前で繰り広げられる大きな声の内緒話。
 当然悠栖にも葵にも聞こえていて、気が立っている悠栖は『余計なお世話』に自身の額に青筋が浮かんでいるような気がした。
 ペンを走らせる手が止まり、怒りを抑えようとした反動で手が震える。
 余裕が無さ過ぎてオロオロして自分の名前を呼んでくる葵に『平気』と笑ってやることもできなかった。
 なおも内緒話を装って言葉を交わす二人。悠栖が我慢の限界を迎えるのは時間の問題のように思われた。
 だがその時、教室中にクラスメイトの大きな声が響いた。
「大ニュース大ニュース!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...