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第188話 シロ その5
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「すごい…魔力が無い世界とは思えない…」
シロは電車の窓から外を眺め目をキラキラさせながら驚きを口にした。
「僕もなんか久しぶりに見たら懐かしいというか結構感動してるよ、なんなんこの世界どうやって作ったの?」
正直どっちが異世界かって言われると明らかに僕がいた世界の方が異世界っぽい。
コンクリートに囲まれた世界、自然なんか飾り程度にしか無い世界の方が明らかに異常だよね。
「ゼル!あれは何かしら!?狭い板の中に人が閉じ込められてるわ!」
「なんだろうね?でも楽しそうだし遊んでるんじゃないかな?」
あれね、テレビみたいな看板ね。確かに中の人は楽しそうだからきっと幸せだよ。
一体何駅あるんだろ?僕達は次の駅で降りて街を観光する事にした。地下室の設備で遊んだメンバー達なので案外すぐにこの世界に慣れたようだ。
最初の街と大して変わらないが店が少し違うか?カラオケは…歌が分からないし、ボーリングはもう地下室にある、ゲームセンターも気になるが…。
「あそこに行こう!」
僕が指差したのは映画館、地下室には漫画やら映像作品は無いのにここにはあるのか。相変わらずガッバガバだね。
「ショウ、あそこは何をする場所なの?」
「物語を楽しむ場所だよ、演劇に近いかも」
「演劇かい?あの勇者が魔王に倒されるヤツ?」
魔王領の演劇は大体そうだろうね、でもそれって楽しい?まさかベッドの上なんて事ないよね?それなら是非見に行くよ。
「え、エッチなヤツなの!?」
うん、たぶん違うよ。君くらいなもんじゃない?ベッドの上で敗北した勇者は。
映画の種類は…SF、恋愛、アクション、アニメなんてのもあるのか。結構あるけどどれにしようかな。
「ショウ、この絵すごく綺麗」
シロが指差したのは恋愛映画のポスター。
学園物っぽいけど学校の文化ってシロの世界にあるの?
「これは他人の恋の物語だと思う。向こうの世界って学校ってあるの?」
「学校?」
「文字とかをみんなで勉強する場所だよ、あとは歴史とかだね」
「一応ある、読み書きくらいはできるようにならないと不便。定期的に王都から人が来て子供達に教えてくれる」
確かに本とかみんな読めてたし、案外しっかりしてるんだね。まあそれはそうか。僕達の世界が特別なわけでも無いし。
「この世界では学校って言ってある程度の年齢までみんなで勉強するんだよ。まあそういう場所での恋の話を覗き見る感じだね」
「覗き見るのかい?でも楽しそうだね!」
「ねぇ!良い匂いがするわ!早く入りましょう!」
ホノカに急かされ中に入ると良い匂いの正体のポップコーンを発見、ボタン一つでドドっと出る夢みたいな仕様。
「僕あんまり食べないんだけど映画の時はみんなこれ食べるんだよね。色んな味があるよ」
味の説明をすると全員キャラメル味、お菓子感覚ならこの味一択?
ドリンクバーの飲み物と一緒にトレーに乗せて僕たちはフワフワの通路を歩く。
「なんか独特の雰囲気があるね、落ち着いているというか」
「そうだね、僕はこの雰囲気が結構好きだったりするよ」
恋愛映画は三番の扉らしい、扉を開けると…。
「何も無いけど…」
「ここで演劇を見るのかい?なんというか…何も無いけど…」
「壁に白い布がかかってるだけね…」
それはそう、映画館でスクリーン以外は全て邪魔だよ。
「まあ椅子に座って少し待ってれば始まるよ」
僕は椅子に座りポップコーンとジュースをセット、みんなも同じように座ってしばしの沈黙…。
実は結構楽しみ!映画なんて子供の時以来だよ。
すると開始のブザーと共に部屋が徐々に暗くなっていく。この瞬間ってテンション上がるよね。
「ちょ、ちょっと!夜になっていくわよ!本当にエッチな感じじゃ無いんでしょうね!?」
違うってば、そんな意味不明なウソつく意味ないでしょ。ポンチー君は少し静かにしたまえ。
「ショウ!何か始まった!」
「なるほど!あの中で演劇をするんだね!」
さすがゼルさん頭が良い!子供の頭脳はゼルに似ると良いね!
CMなどは無くいきなり本編、どうやら子供時代に幼馴染と約束をするところからスタートするようだ。
「これは桜だね、ショウの地下室で見たよ。綺麗な花だよね」
「これが演劇?別物じゃない!すごく綺麗!」
「ショウ!これはきっと面白い!」
映画館では静かに!なんて言う人はいないしみんなで騒ぎながら楽しむのも悪く無いかもね。
と、思ったのも束の間、数分もすると全員静かになり物語に集中し始めた。
実際導入から面白いよこれ。
良くある幼馴染の男女が祭りの日、子供の頃にした約束。
「私、将来ゆーたのお嫁さんになる!」
ヒロインのヒナと主人公のユータ、田舎町で育った二人だったが親の都合でヒナが都会に引っ越してしまう。
再開を約束し別れた二人だったがユータは小学校卒業間近に事故で記憶を断片的に失ってしまう。
日常生活に支障は無かった為、中学ではしっかりと青春を謳歌。
しかし田舎の生活に満足出来ていなかったユータは都会の高校の受験を決意し、見事合格。
入学式の日、成長したヒナと再開したユータだったが…。
「ショウ、なんでヒナはユータに声をかけない?成長しても面影はある」
「なんでだろう…しかもあんなに仲良かったのに連絡の一つも寄越さないなんて不自然だね」
そのまま物語は進み、高校で初めて会ったクラスメイトとして二人の距離は縮まるのだがあくまで友達止まり、ユータに恋する他の女の子まで現れる始末。
どうなるのこれ?
「ゼル!大変!ユータが他の女の子に告白されそう!」
「そうだね…でもヒナはもうユータの事を忘れてるんじゃないかな…。子供の頃の約束だし…」
「そんな事ないと思う!女の勘がそう言ってるわ!」
なぜかホノカの女の勘って信憑性あるな…。この元勇者さん感覚で生きてそうだから?
そして物語は進みクラスメイトと夏祭りに行く二人、祭りではしゃぐヒナを見て幼い日の記憶が蘇る…。
「ショウ!ヒナの事を思い出したよ!」
「うーん…でもこれで終わりにはならないような…」
「ゼル!今から二人はきっと幸せになるわね!」
「そうだね!きっとハッピーエンドだね!」
うーん…そんなに簡単な話かな…。
『ヒナちゃん?』
今まで苗字で呼んでいたユータがヒナの名を呼ぶ、ヒナは少し驚き…。
『ユータ君…久しぶり…?かな』
『うん、久しぶり!今まで会ってたけど…。あの、俺はまだ君を!』
ユータの言葉を遮りヒナが口を開く。
『忘れて良かったのにな…』
『え…』
そして突如ヒナは鼻から血を流し倒れた。この映画こっち系か!うわぁ…。
「え!?ショウ!ヒナが!!」
「ちょっとどういう事よ!なんで急に…せっかく思い出したのに!」
「この物語にヒール風呂は出ないのかい!?」
僕の物語以外にそんな都合の良い風呂なんか出ないよ…。あってもリウマチに効く温泉くらいなもん。
呆気に取られたユータだったが状況を理解し救急車を手配、ヒナをおぶって人混みを抜け出し救急車を待つ。
声をかけるが反応は無い、病院に到着しヒナの両親と再会、そこでヒナの病気の事を聞くのであった。
「病気…?なんで?治らないの?」
ハッピーエンドが見たかったな…。
不治の病、短すぎる寿命。子供の頃に引っ越したのは都会の病院で治療を受ける為。
子供心ながらにヒナはユータに心配をかけられないと連絡をしなかった。
そしてユータの事故を両親経由で知った時に完全に諦めると決めた。そういう話だ。
『何歳まで生きられるんですか…』
『二十歳までは無理だろうとお医者様は…』
ヒナの母親から聞いた寿命、余りにも現実味が無く、余りにも無情な話だった…。
「ねぇゼル!なんとかならないかしら!きっとなんとかなるわよね!」
「きっとなんとかなるよ!エリクサーとかがあるんだと思う!」
「ショウ!大丈夫だよね?」
「うーん…」
目を覚ましたヒナの体調は戻っており、両親から全て聞いた事。昔の事を思い出した事を伝えるユータ。
それを寂しそうに聞いていたヒナ…。
切ない…。ありがちな設定だがこういうのは心に来るな…。
『私はずっと覚えてたよ、初恋だもん。ずっとずっと覚えてたよ。ユータはすっかり忘れてたみたいだけどね!』
から元気で喋るヒナだが明らかに無理をしている。
『でも思いだしたよ…。ヒナ、今からでも俺と』
「ダメ、それはダメ。時間が無いの、ユータには今まで通りに友達でいて欲しい。これ以上幸せを貰っちゃったら…私は死ぬのが怖くなるよ…』
『そんな事は…』
それから先の言葉は出なかった。今更すぎた、遅すぎたし早すぎる。
医者にそろそろと言われ何も言えずに部屋を出たユータ。
その頬に伝う大粒の涙。声にならない声。
病室の中では同じように涙を流す少女、僕達はその様子をスクリーン越しにただただ見る事しか出来なかった。
「ショウ…」
シロは相当ショックなのだろう、僕の手に重ねた手は震えていた。
「ゼル!こんなのってないわ!今からでも助けに!」
「大丈夫さ!演劇はハッピーエンドって決まってるからね!」
うーん…。
そして帰り道、何かを決心したユータは走り出す。
家に帰り、涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て驚く両親。
『どうしたんだ?何かあったのか?』
『親父!頼みがあるんだ!金を貸してくれ!』
………。
回復したヒナはまた学校に通い出すがユータは欠席、心配したが連絡する勇気が出ない。
クラスメイトが連絡したが音信不通。
そして数日後、突如として授業中に教室に飛び込んできたユータ、驚く他のクラスメイトをよそにヒナの前まで歩き、
『ヒナちゃん!行こう!』
驚くヒナの手を引くユータ。
『行ってこい!ユータ!』
事前に連絡されていたのだろう。力強い担任の一言を背に受け、二人は教室を飛び出した。
校門には二人の両親と車。
『お父さんお母さん!?なに?どこいくの!?』
『未来だよ、幸せなね』
母親は優しい笑みをこぼしたのだった。
「ゼル!どこに行くのかしら!きっと病気が治るのよね!」
「もちろんさ!きっとユータはエリクサーを探して来たんだよ!」
「ショウ!ヒナが助かるみたい!」
「うーん…」
そして到着したのは教会、訳も分からず困惑するヒナ。
『ヒナちゃん、忘れていてごめん。許せないなら断ってくれていい。これは僕のワガママだよ』
『もしかして結婚式するの!?ダメだよ!だって私は…』
制服姿のまま父親と教会に入っていくヒナ、それを神父の前で待つユータ。
『私は…』
混乱しているヒナの頭にはユータの誓いの言葉は届かない…。
しかし最後のフレーズだけは…サクラの耳に、心に届いた。
➖死が二人を分かつまで➖
『ヒナちゃん、俺と結婚して欲しい。俺はさ、君と別れるその日まで、君と一緒にいたいんだよ』
『私死んじゃうんだよ!?そんな勝手な事できないよ!』
『勝手なのは俺だよ、最初に言った通り断ってくれても構わないよ』
『私だって本当は…ずっと好きだったよ!ずっとずっと忘れなかった!でも…』
そこでヒナの父親が優しく語りかけた。
『ヒナ、お前は死ぬ為に生きているのかい?違うだろ?生きる為に生きてるんだ。自分の心に正直に生きたって良いじゃ無いか。難しい事は考えるもんじゃない、だってお前はまだ子供なんだからね』
『でも私は大人になれない!なれないんだよ!』
『バカを言うな、お前は俺からすれば永遠に子供だよ。好きに生きろ、子供らしく真っ直ぐに生きれば良いんだよ』
『お父さん…』
『ヒナちゃん、答えを聞かせてくれないかな?』
少しの沈黙の後、ヒナは口を開く。
『私は…誓います!死ぬまで!ユータのお嫁さんになります!ずっと夢だった!でも叶わないと思ってた!でも…でも…誓って良いのなら、許されるのなら…私は永遠の愛を誓います!!』
そしてヒナがユータに飛びつきキスをした所でエンドロールが流れた。
みんな色々と考える事があるようだった。
正直無理やりな所もあったけど中々良い話だった…。
しかし死が二人を分つまで…か。僕もいつかシロと別れないといけないのか…。
「ちょっとまっておくれよ、この後はどうなったんだい?ヒナの病気は治ったのかい!?」
「きっと続きがあるのよ!エリクサーを探しに冒険に行くんだわ!」
勝手に冒険に出すなよ…ユータ君の方が早死にする可能性あるだろ。
シロは涙しながら何か考えている。きっと僕と一緒の事を…。
映画が終わり、外に出ると一気に現実に戻された。この感覚も映画の醍醐味だよね。
「ゼル!私達ももっと幸せを楽しみましょう!あそこのデザートが美味しそう!」
「良いね!食べにいこうか!」
ホノカとゼルはクレープ屋に走って行った。
あの二人はポジティブの塊だな。
残された僕とシロ、シロは僕の手を握り口を開いた。
「ショウ、今日の夜にしよう。今日はショウを深くに感じたい。ダメ?」
おや?
シロは電車の窓から外を眺め目をキラキラさせながら驚きを口にした。
「僕もなんか久しぶりに見たら懐かしいというか結構感動してるよ、なんなんこの世界どうやって作ったの?」
正直どっちが異世界かって言われると明らかに僕がいた世界の方が異世界っぽい。
コンクリートに囲まれた世界、自然なんか飾り程度にしか無い世界の方が明らかに異常だよね。
「ゼル!あれは何かしら!?狭い板の中に人が閉じ込められてるわ!」
「なんだろうね?でも楽しそうだし遊んでるんじゃないかな?」
あれね、テレビみたいな看板ね。確かに中の人は楽しそうだからきっと幸せだよ。
一体何駅あるんだろ?僕達は次の駅で降りて街を観光する事にした。地下室の設備で遊んだメンバー達なので案外すぐにこの世界に慣れたようだ。
最初の街と大して変わらないが店が少し違うか?カラオケは…歌が分からないし、ボーリングはもう地下室にある、ゲームセンターも気になるが…。
「あそこに行こう!」
僕が指差したのは映画館、地下室には漫画やら映像作品は無いのにここにはあるのか。相変わらずガッバガバだね。
「ショウ、あそこは何をする場所なの?」
「物語を楽しむ場所だよ、演劇に近いかも」
「演劇かい?あの勇者が魔王に倒されるヤツ?」
魔王領の演劇は大体そうだろうね、でもそれって楽しい?まさかベッドの上なんて事ないよね?それなら是非見に行くよ。
「え、エッチなヤツなの!?」
うん、たぶん違うよ。君くらいなもんじゃない?ベッドの上で敗北した勇者は。
映画の種類は…SF、恋愛、アクション、アニメなんてのもあるのか。結構あるけどどれにしようかな。
「ショウ、この絵すごく綺麗」
シロが指差したのは恋愛映画のポスター。
学園物っぽいけど学校の文化ってシロの世界にあるの?
「これは他人の恋の物語だと思う。向こうの世界って学校ってあるの?」
「学校?」
「文字とかをみんなで勉強する場所だよ、あとは歴史とかだね」
「一応ある、読み書きくらいはできるようにならないと不便。定期的に王都から人が来て子供達に教えてくれる」
確かに本とかみんな読めてたし、案外しっかりしてるんだね。まあそれはそうか。僕達の世界が特別なわけでも無いし。
「この世界では学校って言ってある程度の年齢までみんなで勉強するんだよ。まあそういう場所での恋の話を覗き見る感じだね」
「覗き見るのかい?でも楽しそうだね!」
「ねぇ!良い匂いがするわ!早く入りましょう!」
ホノカに急かされ中に入ると良い匂いの正体のポップコーンを発見、ボタン一つでドドっと出る夢みたいな仕様。
「僕あんまり食べないんだけど映画の時はみんなこれ食べるんだよね。色んな味があるよ」
味の説明をすると全員キャラメル味、お菓子感覚ならこの味一択?
ドリンクバーの飲み物と一緒にトレーに乗せて僕たちはフワフワの通路を歩く。
「なんか独特の雰囲気があるね、落ち着いているというか」
「そうだね、僕はこの雰囲気が結構好きだったりするよ」
恋愛映画は三番の扉らしい、扉を開けると…。
「何も無いけど…」
「ここで演劇を見るのかい?なんというか…何も無いけど…」
「壁に白い布がかかってるだけね…」
それはそう、映画館でスクリーン以外は全て邪魔だよ。
「まあ椅子に座って少し待ってれば始まるよ」
僕は椅子に座りポップコーンとジュースをセット、みんなも同じように座ってしばしの沈黙…。
実は結構楽しみ!映画なんて子供の時以来だよ。
すると開始のブザーと共に部屋が徐々に暗くなっていく。この瞬間ってテンション上がるよね。
「ちょ、ちょっと!夜になっていくわよ!本当にエッチな感じじゃ無いんでしょうね!?」
違うってば、そんな意味不明なウソつく意味ないでしょ。ポンチー君は少し静かにしたまえ。
「ショウ!何か始まった!」
「なるほど!あの中で演劇をするんだね!」
さすがゼルさん頭が良い!子供の頭脳はゼルに似ると良いね!
CMなどは無くいきなり本編、どうやら子供時代に幼馴染と約束をするところからスタートするようだ。
「これは桜だね、ショウの地下室で見たよ。綺麗な花だよね」
「これが演劇?別物じゃない!すごく綺麗!」
「ショウ!これはきっと面白い!」
映画館では静かに!なんて言う人はいないしみんなで騒ぎながら楽しむのも悪く無いかもね。
と、思ったのも束の間、数分もすると全員静かになり物語に集中し始めた。
実際導入から面白いよこれ。
良くある幼馴染の男女が祭りの日、子供の頃にした約束。
「私、将来ゆーたのお嫁さんになる!」
ヒロインのヒナと主人公のユータ、田舎町で育った二人だったが親の都合でヒナが都会に引っ越してしまう。
再開を約束し別れた二人だったがユータは小学校卒業間近に事故で記憶を断片的に失ってしまう。
日常生活に支障は無かった為、中学ではしっかりと青春を謳歌。
しかし田舎の生活に満足出来ていなかったユータは都会の高校の受験を決意し、見事合格。
入学式の日、成長したヒナと再開したユータだったが…。
「ショウ、なんでヒナはユータに声をかけない?成長しても面影はある」
「なんでだろう…しかもあんなに仲良かったのに連絡の一つも寄越さないなんて不自然だね」
そのまま物語は進み、高校で初めて会ったクラスメイトとして二人の距離は縮まるのだがあくまで友達止まり、ユータに恋する他の女の子まで現れる始末。
どうなるのこれ?
「ゼル!大変!ユータが他の女の子に告白されそう!」
「そうだね…でもヒナはもうユータの事を忘れてるんじゃないかな…。子供の頃の約束だし…」
「そんな事ないと思う!女の勘がそう言ってるわ!」
なぜかホノカの女の勘って信憑性あるな…。この元勇者さん感覚で生きてそうだから?
そして物語は進みクラスメイトと夏祭りに行く二人、祭りではしゃぐヒナを見て幼い日の記憶が蘇る…。
「ショウ!ヒナの事を思い出したよ!」
「うーん…でもこれで終わりにはならないような…」
「ゼル!今から二人はきっと幸せになるわね!」
「そうだね!きっとハッピーエンドだね!」
うーん…そんなに簡単な話かな…。
『ヒナちゃん?』
今まで苗字で呼んでいたユータがヒナの名を呼ぶ、ヒナは少し驚き…。
『ユータ君…久しぶり…?かな』
『うん、久しぶり!今まで会ってたけど…。あの、俺はまだ君を!』
ユータの言葉を遮りヒナが口を開く。
『忘れて良かったのにな…』
『え…』
そして突如ヒナは鼻から血を流し倒れた。この映画こっち系か!うわぁ…。
「え!?ショウ!ヒナが!!」
「ちょっとどういう事よ!なんで急に…せっかく思い出したのに!」
「この物語にヒール風呂は出ないのかい!?」
僕の物語以外にそんな都合の良い風呂なんか出ないよ…。あってもリウマチに効く温泉くらいなもん。
呆気に取られたユータだったが状況を理解し救急車を手配、ヒナをおぶって人混みを抜け出し救急車を待つ。
声をかけるが反応は無い、病院に到着しヒナの両親と再会、そこでヒナの病気の事を聞くのであった。
「病気…?なんで?治らないの?」
ハッピーエンドが見たかったな…。
不治の病、短すぎる寿命。子供の頃に引っ越したのは都会の病院で治療を受ける為。
子供心ながらにヒナはユータに心配をかけられないと連絡をしなかった。
そしてユータの事故を両親経由で知った時に完全に諦めると決めた。そういう話だ。
『何歳まで生きられるんですか…』
『二十歳までは無理だろうとお医者様は…』
ヒナの母親から聞いた寿命、余りにも現実味が無く、余りにも無情な話だった…。
「ねぇゼル!なんとかならないかしら!きっとなんとかなるわよね!」
「きっとなんとかなるよ!エリクサーとかがあるんだと思う!」
「ショウ!大丈夫だよね?」
「うーん…」
目を覚ましたヒナの体調は戻っており、両親から全て聞いた事。昔の事を思い出した事を伝えるユータ。
それを寂しそうに聞いていたヒナ…。
切ない…。ありがちな設定だがこういうのは心に来るな…。
『私はずっと覚えてたよ、初恋だもん。ずっとずっと覚えてたよ。ユータはすっかり忘れてたみたいだけどね!』
から元気で喋るヒナだが明らかに無理をしている。
『でも思いだしたよ…。ヒナ、今からでも俺と』
「ダメ、それはダメ。時間が無いの、ユータには今まで通りに友達でいて欲しい。これ以上幸せを貰っちゃったら…私は死ぬのが怖くなるよ…』
『そんな事は…』
それから先の言葉は出なかった。今更すぎた、遅すぎたし早すぎる。
医者にそろそろと言われ何も言えずに部屋を出たユータ。
その頬に伝う大粒の涙。声にならない声。
病室の中では同じように涙を流す少女、僕達はその様子をスクリーン越しにただただ見る事しか出来なかった。
「ショウ…」
シロは相当ショックなのだろう、僕の手に重ねた手は震えていた。
「ゼル!こんなのってないわ!今からでも助けに!」
「大丈夫さ!演劇はハッピーエンドって決まってるからね!」
うーん…。
そして帰り道、何かを決心したユータは走り出す。
家に帰り、涙でぐちゃぐちゃになった顔を見て驚く両親。
『どうしたんだ?何かあったのか?』
『親父!頼みがあるんだ!金を貸してくれ!』
………。
回復したヒナはまた学校に通い出すがユータは欠席、心配したが連絡する勇気が出ない。
クラスメイトが連絡したが音信不通。
そして数日後、突如として授業中に教室に飛び込んできたユータ、驚く他のクラスメイトをよそにヒナの前まで歩き、
『ヒナちゃん!行こう!』
驚くヒナの手を引くユータ。
『行ってこい!ユータ!』
事前に連絡されていたのだろう。力強い担任の一言を背に受け、二人は教室を飛び出した。
校門には二人の両親と車。
『お父さんお母さん!?なに?どこいくの!?』
『未来だよ、幸せなね』
母親は優しい笑みをこぼしたのだった。
「ゼル!どこに行くのかしら!きっと病気が治るのよね!」
「もちろんさ!きっとユータはエリクサーを探して来たんだよ!」
「ショウ!ヒナが助かるみたい!」
「うーん…」
そして到着したのは教会、訳も分からず困惑するヒナ。
『ヒナちゃん、忘れていてごめん。許せないなら断ってくれていい。これは僕のワガママだよ』
『もしかして結婚式するの!?ダメだよ!だって私は…』
制服姿のまま父親と教会に入っていくヒナ、それを神父の前で待つユータ。
『私は…』
混乱しているヒナの頭にはユータの誓いの言葉は届かない…。
しかし最後のフレーズだけは…サクラの耳に、心に届いた。
➖死が二人を分かつまで➖
『ヒナちゃん、俺と結婚して欲しい。俺はさ、君と別れるその日まで、君と一緒にいたいんだよ』
『私死んじゃうんだよ!?そんな勝手な事できないよ!』
『勝手なのは俺だよ、最初に言った通り断ってくれても構わないよ』
『私だって本当は…ずっと好きだったよ!ずっとずっと忘れなかった!でも…』
そこでヒナの父親が優しく語りかけた。
『ヒナ、お前は死ぬ為に生きているのかい?違うだろ?生きる為に生きてるんだ。自分の心に正直に生きたって良いじゃ無いか。難しい事は考えるもんじゃない、だってお前はまだ子供なんだからね』
『でも私は大人になれない!なれないんだよ!』
『バカを言うな、お前は俺からすれば永遠に子供だよ。好きに生きろ、子供らしく真っ直ぐに生きれば良いんだよ』
『お父さん…』
『ヒナちゃん、答えを聞かせてくれないかな?』
少しの沈黙の後、ヒナは口を開く。
『私は…誓います!死ぬまで!ユータのお嫁さんになります!ずっと夢だった!でも叶わないと思ってた!でも…でも…誓って良いのなら、許されるのなら…私は永遠の愛を誓います!!』
そしてヒナがユータに飛びつきキスをした所でエンドロールが流れた。
みんな色々と考える事があるようだった。
正直無理やりな所もあったけど中々良い話だった…。
しかし死が二人を分つまで…か。僕もいつかシロと別れないといけないのか…。
「ちょっとまっておくれよ、この後はどうなったんだい?ヒナの病気は治ったのかい!?」
「きっと続きがあるのよ!エリクサーを探しに冒険に行くんだわ!」
勝手に冒険に出すなよ…ユータ君の方が早死にする可能性あるだろ。
シロは涙しながら何か考えている。きっと僕と一緒の事を…。
映画が終わり、外に出ると一気に現実に戻された。この感覚も映画の醍醐味だよね。
「ゼル!私達ももっと幸せを楽しみましょう!あそこのデザートが美味しそう!」
「良いね!食べにいこうか!」
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おや?
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