Jimmelle & Rayman I

あにらむあみにむ

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1.安息地

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 決して広くはない。が、多くの人で賑わう展示会場。
 ハンガーにかけられ、ワイヤーにつるされ、トルソーに着せられた、意匠を凝らした服の数々。
 そして自身でもその身に作品を纏いながら、本展示会場の主役であるレイマンは来訪客に囲まれて大いに話に花を咲かせていた。

 誇らしく思う。彼女は今や業界で中堅のデザイナーであり、こうして故郷の国で展示会を開くことが叶った。
 無名の頃から共に走ってきたマネージャーとして、彼女の世界観が存分に展開され、それに人々が浸る様を目にするのは何とも言えない満足感がある。
 壁際から会場を見渡す。展示物に乱れがないか、どのような人々が来場しているか、自分の対応が必要な客はいないか、スタッフの配置は十分か――目を配らせていると、いつの間にか話を終えることができたらしいレイマンが、早足にこちらへやってきた。
 「とうとう自由を手に入れたよ、一瞬だけ」
 「おつかれ」
 どれだけ話していたのか、わずかに息を荒くさせながらも、晴れ晴れとした表情で笑うそいつの手から紙袋を預かる。
 「これはメーカーの方々から貰ったお菓子。それと、名刺を受け取り過ぎて僕はもう持てない」
 「大盛況だな」
 ポケットから取り出された、蓋の締まり切らないケースから名刺の束を受け取る。代わりに、切れかけていた彼女自身の名刺を渡して補充させた。その流れで水のボトルも渡して飲ませる。
 よほど喉が渇いて――もとい涸れていたのか、勢いよく呷っては半分以上を一気に空にした。
 「はー、ありがとう!」
 息を吹き返したかのような息継ぎに次いで、実に感情のこもった礼。ボトルを返しながらまたすぐに新たな来訪者に気付き、「行ってくる」と再び人々のもとへ戻って囲まれ出した。
 間違いなくこれから話題となっていくデザイナーで、世界的活躍の可能性がある、この空間の主役で、皆の人気者。
 本来は、決して外向的な性格ではない。デザイナーとして、主催者として、本人が出て話すことが必要だと考えているからああしている。体力を消耗し、精神を摩耗し、疲れ、そうして隙間を縫っては俺のもとへやってくる。気の置けない、信頼している、安心できる領域に身を置いて休めるために。
 絶えない挨拶と談笑の隙間を縫った、束の間の休息。
 この場において、俺がそいつにとってのホームとなっていることが、何よりの優越感を満たした。
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