Jimmelle & Rayman I

あにらむあみにむ

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35.Question

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 照明を消して、ホールのソファに座る。窓から漏れ入ってくる薄い光と、バスルームへ続く通路からの光だけで、今の自分には丁度良い明るさだった。疲れを感じていたが、気が落ち着かず、自室で休む気にならなかった。憔悴した彼がバスルームから出てきてちゃんと部屋に戻るのを見届けるまで、多分自分は落ち着かないだろう。故に、こうして待つ。
 ソファに横になりながら、考える。
 ――『感情とは、物事に対して、自らの内に生じる“反応”である。自らの内に生じる反応は、自らのものである。それ自体に、他者が責任を負う必要はない。他者が責任を引き受けるべきは、その反応を引き出す“行動”に対してである』
 ……であるならば、自分の何の“行動”が、彼の中に感情を生じさせ、発露へ――あのような行動へ至らせたのだろう。
 ――『感情は自らが引き受けるべきところであり、他者に引き受けさせるものではない』
 ……本当に、それでいいのだろうか?
 先程見て、聞いた、ぶつけられた感情を、引き受けたくなったわけではない。しかし、それから離れがたい――手放しがたいと思っているような自分が、心中に確かに在る。
 あれから……展示期間中、ジムに襲われてから、十分な時間が経ったと思う――少なくとも自分にとっては。彼が、彼自身の感情を引き受けられるだけの時間。彼自身の内に生じたそれをどのように取り扱っているのかしばらく様子を見ていたが、その結果彼は落ち着きを取り戻しているように見えていた。だから、引き受けることが出来たのだと思ってしまった。しかし、決してそうではなかった。彼は感情の処理に耐えうる限界を超え、先ほどのような言動に至った、のだと思う。
 自分は、時間を与えて様子を見たつもりで、致命的な何かを彼にしてしまっていたのかもしれない。
 『――……傲慢だ』
 気付く。彼の内に生じた感情に対する、彼に対する、自分の態度に。自論を彼の中に勝手に見て当てはめようとしたその姿勢は、正に押し付けだ。
 自分は彼を尊重したつもりで、彼との関係性の上にあぐらをかいていたのではないか。
 ――『待て、その考えすら、どこから来ているのだ?』
 弱気から、こうした考えになっているんじゃないだろうか? 自分を責めてはいないか?
 ……眠気を感じる。悲しみも。今は、考えるべき状態じゃない。
 ――自分は、彼の感情……心を、どうしたいんだ?

 ……少しだけ、目を閉じて休めよう。
 完全に眠るわけじゃない。ジムが出てきたら、きっと、音で、目が覚めるだろう。
 静寂。揺蕩う意識。気持ちが良い。
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