Jimmelle & Rayman I

あにらむあみにむ

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40.Suspension of Judgment

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 『うーーん』
 片づけを終えて着衣を整えてから、再びベッドの上でうつぶせに、頬に手を付いて考えていた。
 自らの身に起きたこと。結局、自分がオーガズムを得られるようになった理由は、体の変化には無かった。確信を得られたのは、状況でもなく、手段でもなく、ただ、ジムという存在の影響。
 何故それが快楽へと至らしめたのか。自分が内側に抱く、ジムに対する何か――恐らくは感情とされるものが、原因だろう。
 だが、自分は彼に対して性的欲望は抱いてこなかった。では、恋愛感情かとも問うが、それも違うと思う。情愛、友愛、ああでもない、こうでもないと考えながら、結局のところ気付く。何と呼称すればよいのか解らない、しかし確実にそこにある、情の存在に。
 そこで、ふと別の疑問が過った。
 ――そもそも自分は、何故「ジムとの関係を継続できるか」という問いを立てなかった?
 当たり前に通過してしまって、考えていなかった地点に気付く。あの日――襲われた直後から、あまりにも自然に、「関係を継続させるか」ではなく、「どう関係を継続させていくか」について考えていた。
 『……根深いな』
 抱く情に、我ながら感慨に思う。しかし、これはどうあっても否定が出来ない。
 万一、この“情”が状況に対する正当化のための感情――いわゆる認知的不協和の解消――である可能性も疑うが、それも直感的に否定してしまう。もしそうであるならば、こんなに考えてなどいないのだ。
 『んー……』
 これは、保留。保留だ。あるものは仕方がない。名付けてどうにかなるものでもない。名を与えられるようになったら、その時に呼称すれば良い。今ただ在る、自分自身の感情。
 そうして、同時に自然と思い至る。
 何故彼の感情を引き受けたく、なっているのかについて。これも、この“情”故だろうと。
 色々な考えに、問いに、辻褄が合ってくる気がする。
 『……うん、よし』
 思考のまとまりに確信を得て、ベッドから起き上がった。
 バスルームへと行くために着替えと、ついでに洗濯するために借りっぱなしだった毛布を手に取って部屋を出る。
 階段を降り、ホールへ出てまもない場所にあるソファに、その姿を見付けた。
 「あれ、ジム」
 背中を丸めて座っている彼に声をかける。休業日のこんな夜の時間にホールにいるのは珍しい。
 「どうしたの」
 「………………どう、したって…………お前…………」
 やたらと長い間と、訝し気な目を向けられ、気まずそうな雰囲気を出されて、こちらがしり込みしそうになる。首をかしげて窺うと、言葉が続けられた。
 「……な、なんで、部屋から出てきてんだ……」
 「な、なんでって……お風呂に入るから」
 この答え方で合っているのか、質問の真意が解らないまま答える。厳かな話し方に当てられて、なんてことのない返答なのに自分まで言葉が詰まった。
 「あ、あー……まあ、そうか……そうだよな……」
 しかしそれで良かったのか、曖昧な感じではあるが納得をされた。一層こちらはわからない。
 だが、「そういえば」と思い付く。
 「ねえ、僕、君の毛布を借りっぱなしだった。洗った後に返すね」
 手にしたそれを軽く掲げて見せると、驚いたような――信じられない物でもみるような顔を、顰めたまま向けられる。歯切れの悪い曖昧な相槌。
 こちらとしても妙な使い方をしてしまった――決して汚したわけではないが――背景があるので、ばつが悪く、腕の中にしまい込むように抱え直した。
 「あの……“何”?」
 「いや…………何でもない」
 “何でもない”。明らかに妙な動揺を見せておいて、“何でもない“。
 そそくさと立ち上がって自室へ帰っていく姿を見ながら、首をかしげた。
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