【完結】99回処刑されたツンデレ令嬢、100回目の人生で溺愛させる

下城米雪

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プロローグ

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 何か幸せそうな音が聞こえた。

 目は見えない。
 薄っすらと光を感じる程度で、何も分からない。

 恐怖は無い。
 過去に100回ほど体験しているからだ。

 ああ、またか。
 またわたくしは、処刑されてしまったのか。


 ──1度目の人生。
 今にして思えば、わたくしは処刑されて当然だった。

 他者を見下し、勝手気ままに生きていた。高い身分の家に生まれたことで、自分が神のような存在だと勘違いしていたのだ。

 ある日のこと。
 わたくしの婚約者に手を出そうとした平民を〇〇して××で▽▽させてやったら、婚約者に大勢の前で言われた。

「リーゼロッテ! 貴様との婚約を破棄する!」

 その少し後、1度目の人生が終わった。

 苦しかった。
 悲鳴をあげても誰も助けてくれなかった。

 痛くて、怖くて、とても後悔した。
 その苦痛が消えた後、2度目の人生が始まった。

 わたくしは前世の記憶を保持していた。
 理由は、きっと1度目の人生で魂に刻まれた『完全記憶』という恩恵によるものだ。

 死者の魂は天へ昇り神に漂白され転生する。
 漂白された魂は無となり、以前の記憶は何も残らない。

 だから2度目のわたくしは思ってしまった。
 神が創った理すらも捻じ曲げる恩恵を持った自分は、まさしく神のような存在なのかもしれない。

 結果。

「リリアナ! 貴様との婚約を破棄する!」

 こうなった。

 2度目は一瞬だった。
 その場で斬首され、嘲笑う者達を見ながら意識を失った。

 直ぐに3度目の人生が始まった。
 流石に少しは学習した。他者を敬う心を養うと誓った。

 しかし処刑された。
 何度も何度も、どれだけ悔い改めても処刑され続けた。

 その記憶が全て残っている。
 恐怖と苦痛と後悔が、全て残っている。

 わたくしは理解しました。
 この恩恵は祝福ではなく、呪いだったのです。


「──リズベット」


 音が聞こえた。
 今回はリズベットという名を与えられたらしい。

 非常に覚えにくいですわ。
 何せ、100回連続で1文字目が「リ」なのですから。

 名前だけではなく容姿や身分も同じでしたわね。
 どうせ今回も金髪なのでしょう。貴族なのでしょう。直ぐに婚約者ができるのでしょう。そして学園で平民に浮気され何をしても「貴様と婚約破棄する!」からの処刑コースなのでしょう。はいはい。もう慣れました。慣れましたわよ! うわーん!

「あらあら、元気な鳴き声ですね」

 泣いてないわよ! 嘆いているのよ!
 わたくし、千年以上は生きてましてよ? 敬い遊ばせ!?

「ははは、この子はきっと元気な子になるだろうな」

「はい。楽しみですね」

 ならないわよ!
 わたくし、もう学習しましたから!

 流石に、さーすーがーに!
 完ッッ璧に理解しましたから!

 口は災いの元!
 喋らなければ大丈夫!

 そう思って無言を貫いたら人形姫とか気味が悪いとか言われ処刑されたことが4回ほどありますわ!!!

 どーすればいいのよ!?
 うわーん! わたくしの魂は呪われてますわ!
 きっと今回も処刑されてしまうのよ! やだー!

「ははは、本当に元気な泣き声だな」

 ええそうですね! 
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