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婚約者《処刑人》が決まる
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生まれた直後は情緒が不安定になる。
どうやら精神が身体に引っ張られるようで、落ち着くまでには2年ほど要する。
此度の生、わたくしは大人しく生きることに決めました。
目立たず、静かに、安らかに、今度こそ処刑されない人生を歩む。そんな確固たる意志を持ち、気が付けば5歳。
「リ~ズちゃん、可愛い私のリ~ズちゃん!」
此度のわたくしは、母から異常に愛されていた。
本当におかしい。
これまでの母は長くとも3年で余所余所しくなっていた。母親とはそういう存在のはずだ。
……まさか、早くも効果が出ている?
何が違うのか。
考えられることはひとつ。
わたくしが、静かに生きた結果!
やりましたわ!
この調子で生きれば、今度こそ寿命で死ねますわ!
「あらあら、リズちゃん、なんだか嬉しそうね」
わたくしを膝に乗せた母が、顔を覗き込みながら言った。
蒼い瞳と美しい金髪。
既視感がすっごいですわ。
記憶に残る99人の母、全員この外見でしたので。
しかし、なぜでしょう。
今回の母は、過去の母達よりも優しく見えます。
「リ~ズちゃん、これなーんだ」
「……指ですわね」
「せーかい! 何本ある?」
「……一本ですわ」
「すごーい! じゃあ、これは?」
「……二本ですわ」
「きゃ~! 天才よ! 流石私のリズちゃんだわー!」
それから、なんでしょう。
褒める基準が、とても低いですわ。
「そんなリズちゃんに嬉しいお知らせがあります」
「……なんですか?」
「昨日、リズちゃんの婚約者が決まりました」
「……こん、やく、しゃ?」
「ええ。まだ早いとは思ったのですが、むしろ早いうちから相手をちょうきょ、いえ、仲良くしておいた方が、リズちゃんの将来のためになると決意したのです。って、まだ難しいかな?」
……。
…………。
………………。
いやぁぁああああああああ!
やだやだやだ! 婚約やーだ!
絶対に破棄されますわ!
何かしら理由を付けて殺されますわ!
「今日、相手の子が来るみたいよ。楽しみにしててね」
「……」
ど、ど、どうしましょう。
どうにかして防がなければ。
そうだ。直接伝えましょう。
この母ならば、あるいは、ということも!
「……お母さま」
「なあに?」
わたくしは小さな手で母のドレスを摑み、精一杯の愛嬌を込めて言った。
「……こんやくしゃ、いらないですわ」
「きゅん!」
よし! 効果は抜群ですわね!
「母に任せてください。心配無用です」
「……いらないって、言いましたわ」
「最高の婚約者を用意しますからね!」
「……はい」
やっぱり呪いですわ! わたくしの話を聞いてくれない!
どうせこの母も最期は「貴女を産んだことが人生で唯一の汚点でした」とか言うに違いありませんわ!
いやぁぁぁあああああ!
どうやら精神が身体に引っ張られるようで、落ち着くまでには2年ほど要する。
此度の生、わたくしは大人しく生きることに決めました。
目立たず、静かに、安らかに、今度こそ処刑されない人生を歩む。そんな確固たる意志を持ち、気が付けば5歳。
「リ~ズちゃん、可愛い私のリ~ズちゃん!」
此度のわたくしは、母から異常に愛されていた。
本当におかしい。
これまでの母は長くとも3年で余所余所しくなっていた。母親とはそういう存在のはずだ。
……まさか、早くも効果が出ている?
何が違うのか。
考えられることはひとつ。
わたくしが、静かに生きた結果!
やりましたわ!
この調子で生きれば、今度こそ寿命で死ねますわ!
「あらあら、リズちゃん、なんだか嬉しそうね」
わたくしを膝に乗せた母が、顔を覗き込みながら言った。
蒼い瞳と美しい金髪。
既視感がすっごいですわ。
記憶に残る99人の母、全員この外見でしたので。
しかし、なぜでしょう。
今回の母は、過去の母達よりも優しく見えます。
「リ~ズちゃん、これなーんだ」
「……指ですわね」
「せーかい! 何本ある?」
「……一本ですわ」
「すごーい! じゃあ、これは?」
「……二本ですわ」
「きゃ~! 天才よ! 流石私のリズちゃんだわー!」
それから、なんでしょう。
褒める基準が、とても低いですわ。
「そんなリズちゃんに嬉しいお知らせがあります」
「……なんですか?」
「昨日、リズちゃんの婚約者が決まりました」
「……こん、やく、しゃ?」
「ええ。まだ早いとは思ったのですが、むしろ早いうちから相手をちょうきょ、いえ、仲良くしておいた方が、リズちゃんの将来のためになると決意したのです。って、まだ難しいかな?」
……。
…………。
………………。
いやぁぁああああああああ!
やだやだやだ! 婚約やーだ!
絶対に破棄されますわ!
何かしら理由を付けて殺されますわ!
「今日、相手の子が来るみたいよ。楽しみにしててね」
「……」
ど、ど、どうしましょう。
どうにかして防がなければ。
そうだ。直接伝えましょう。
この母ならば、あるいは、ということも!
「……お母さま」
「なあに?」
わたくしは小さな手で母のドレスを摑み、精一杯の愛嬌を込めて言った。
「……こんやくしゃ、いらないですわ」
「きゅん!」
よし! 効果は抜群ですわね!
「母に任せてください。心配無用です」
「……いらないって、言いましたわ」
「最高の婚約者を用意しますからね!」
「……はい」
やっぱり呪いですわ! わたくしの話を聞いてくれない!
どうせこの母も最期は「貴女を産んだことが人生で唯一の汚点でした」とか言うに違いありませんわ!
いやぁぁぁあああああ!
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