聖女に殺される悪役貴族に転生した私ですが、なぜか聖女と一緒に魔王ライフが始まりました

下城米雪

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20.緑の魔族

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 緑の楽園は、主に研究開発を担っている。
 例えば、三色の楽園を囲み、「敵」の探知から隠す防壁を生み出した。他にも独自の技術で魔力伝導体を量産するなど、その貢献度は計り知れない。

 狩猟や農業、そして戦闘を担う赤。
 美容と健康、そして安らぎをもたらす青。
 ひたすらに真理を探究し、その研究によって利をもたらす緑。
 それぞれが協力することで、彼女達の楽園は今日も進化を続けている。

 ──ここは緑の楽園の地下にある研究室。
 ビンに入った怪しい液体が並べられ管と繋がっている。液体は管を通してスライムのような物質へと注がれ、その度にランダムな色の光が発生している。

 それを間近で観察し、実験ノートにメモを記している者が居た。
 薄緑色のショートヘアと深紅の瞳を持ち、自分の背丈より大きな白衣を着た女性。彼女の名はライム。緑の楽園の代表である。

 現在、彼女は実験をしながら部下の報告を聞いていた。
 しばらくは部下に目を向ける様子も無かったが、とある報告を聞き、手を止めた。

「それほんと? スカーレットとアクア負けたの?」
「はっ、確かな情報であります!」

 眠そうな喋り方だが、その頭は誰よりも冴えている。
 彼女は見知った二人を打ち負かした相手について考え始めた。

(スカーレットよりも強い)

 彼女にはスカーレットの負ける姿が想像できない。
 赤の代表が有する戦闘能力は、それくらい圧倒的だった。

(アクアを屈服させられる)

 彼女にはアクアが負けを認める姿をイメージできない。
 青の代表はプライドが高く、あのスカーレットに対しても常に上から目線だった。

「詳細」
「はっ、まずはスカーレット様について説明いたします」

 報告をしているのは白衣を着た女性。
 彼女は手元の資料を捲り、自分の認識と事実を確かめながら説明を始めた。

「対象の名前はイーロン。男性です。スカーレット様は彼に決闘を挑みました。彼はスカーレット様の攻撃を全て回避し、やがて圧倒的な魔力を放出すると、それを見て呆然とするスカーレット様を地面に叩き付け、ギャン泣きさせたそうであります!」
「え、こわ」

 ライムはドン引きした。
 部下は何度も頷くことで彼女に同意して、説明を続ける。 

「アクア様は、『今宵、このアクア様が楽園の支配者になるわ!』と広く喧伝していたようですが、何故かイーロンを個室へ連れ込み接待を始めたようであります!」
「あー」

 ライムは悟った。
 アクアは弱者には高飛車な態度を示すけど、強者には全力で媚びる。恐らく、自慢の青魔法を使って勝負を仕掛けた後、あっさり返り討ちにあったのだろう。

(……戦闘能力はスカーレット以上。青魔法はアクア以上)

 ライムは思う。
 やばいの来ちゃった。

「それから、アクア様はイーロンと共に入浴したようです。側近の者によると、露天風呂から戻ったアクア様は、おちんちん怖い、と呟き続けていたそうであります!」
「えぇ……それ、そういうこと?」
「分かりません。側近の者……コメットは脳に深刻なダメージを負った様子でした。まともな会話が成立せず、今の情報を聞き出すだけでも一時間ほど要しました」
「やばぁ……」

 ライムは震える手で頭を抱えた。
 その深紅の瞳には、じわりと涙が浮かんでいる。

「明日、こちらに来ると思われます」
「拒否する」
「……はい?」
「ライムさんは体調不良。お会いできません」
「……よろしいのでありますか?」
「よろしい」
「承知いたしました!」

 部下は元気な返事をして研究室を去った。
 ライムは床に落とした実験ノートを拾うと、それを震える両手で抱き締める。

「絶対やだ。会いたくない」

 無理無理、むーり。
 戦闘は専門外。野蛮な人はお断り。

「念の為、第二研究室に移動しようかな」

 ライムは全力で逃げることにした。
 そして久々に地上へ出て移動する途中――敵に連れ去られた。
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