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2-11.皇帝
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皇帝は強かった。
もしも彼がドスケベアースに居たら、大淫魔に匹敵する力を得たかもしれない。
だが彼はドスケベアースに居なかった。
故に──この結果は必然だったと言える。
「ングィィィィィ!?」
一時間ほど快楽攻撃を続けた結果、ついに皇帝が喘いだ。
「……信じられない」
カリンが呆然とした様子で呟いた。
気持ちは分かる。あの毅然とした皇帝が、こんな声を出すなど信じがたい。
だが、そういうものだ。
駅で擦れ違うダンディな男も、嫁の前では赤ちゃんだったりするものだ。
知らんけど。
「……ツキカゲと言ったか?」
「ほう? まだ人の言葉が話せるのか」
俺の椅子になった皇帝は、荒い息を吐きながら言う。
「……その力、どこで手に入れた」
ふむ、流石は皇帝だ。
力が最優先される世界の頂点に君臨する者として、最も納得感のある質問と言える。
俺はカリンの話を思い出す。
彼女は幻界を守るために皇帝を目指した。理由は兄弟達が幻界の洗礼を浴びたからだ。
なぜ兄弟達は幻界を滅ぼすと決めた?
きっと、理不尽に対抗する術として、力が最も合理的だと考えているからだ。
だからこそ疑問が残る。
「敗者の質問には答えない」
俺は椅子に言う。
「しかし俺は問う。次期皇帝を選挙で決めるのはなぜだ?」
「……皇帝とはなんだ」
「質問しているのは俺だ」
俺は椅子の尻を叩いた。
「ンギュゥィ!? 国のタメェ!」
「国のためだと?」
皇帝は荒い息を吐きながら言う。
「……国は、ハァァン、弱者を……んはぁ……作ってはならない」
「どういうことだ?」
皇帝は呼吸を整える。
「……力が必要なのは弱者だ。弱き者は生きるために力を振るう。誰もが自由に力を振るえば、国は成り立たぬ」
……ふむ。
「その理念、子ども達に教えたのか?」
「……自力で辿り着かなければ、無意味だ」
「惜しいな。実に惜しい」
「……なに?」
俺は立ち上がり、皇帝を見下ろして言う。
「歴史は繰り返される。それはヒトが歴史を学ばないからだ」
「……歴史、だと?」
昭和の時代、人類はインターネットを持たなかった。
あらゆる情報を足で手に入れる必要があり、独占欲を生み出した。
しかし情報革命が起きた。
どのような情報も、知っていて当たり前という時代になった。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
かつては超上流の者しか持ち得なかった思考の域が、スタンダードになった。
故に、人類は飛躍した。
情報革命以降の発展速度は、それ以前の比ではない。
具体例を出す。
職人が言う「数年は見て学べ」は誤りだ。
きちんとマニュアルを作り教育すれば三ヵ月も必要ない。
さて、俺はどうするべきだ?
ここで皇帝に情報社会マウンティングをしても意味は無い。
目的はカリンの願いを叶えること。彼女が愛した幻界を守ることだ。
無論、何もしないという選択肢もある。
エロトラップダンジョンに挑んだことで、現状、彼女こそが最も皇帝に近い。
しかしそれでは兄弟達の憎悪が消えない。
完全無欠のハッピーエンドを手に入れるため、俺がするべきことは──
もしも彼がドスケベアースに居たら、大淫魔に匹敵する力を得たかもしれない。
だが彼はドスケベアースに居なかった。
故に──この結果は必然だったと言える。
「ングィィィィィ!?」
一時間ほど快楽攻撃を続けた結果、ついに皇帝が喘いだ。
「……信じられない」
カリンが呆然とした様子で呟いた。
気持ちは分かる。あの毅然とした皇帝が、こんな声を出すなど信じがたい。
だが、そういうものだ。
駅で擦れ違うダンディな男も、嫁の前では赤ちゃんだったりするものだ。
知らんけど。
「……ツキカゲと言ったか?」
「ほう? まだ人の言葉が話せるのか」
俺の椅子になった皇帝は、荒い息を吐きながら言う。
「……その力、どこで手に入れた」
ふむ、流石は皇帝だ。
力が最優先される世界の頂点に君臨する者として、最も納得感のある質問と言える。
俺はカリンの話を思い出す。
彼女は幻界を守るために皇帝を目指した。理由は兄弟達が幻界の洗礼を浴びたからだ。
なぜ兄弟達は幻界を滅ぼすと決めた?
きっと、理不尽に対抗する術として、力が最も合理的だと考えているからだ。
だからこそ疑問が残る。
「敗者の質問には答えない」
俺は椅子に言う。
「しかし俺は問う。次期皇帝を選挙で決めるのはなぜだ?」
「……皇帝とはなんだ」
「質問しているのは俺だ」
俺は椅子の尻を叩いた。
「ンギュゥィ!? 国のタメェ!」
「国のためだと?」
皇帝は荒い息を吐きながら言う。
「……国は、ハァァン、弱者を……んはぁ……作ってはならない」
「どういうことだ?」
皇帝は呼吸を整える。
「……力が必要なのは弱者だ。弱き者は生きるために力を振るう。誰もが自由に力を振るえば、国は成り立たぬ」
……ふむ。
「その理念、子ども達に教えたのか?」
「……自力で辿り着かなければ、無意味だ」
「惜しいな。実に惜しい」
「……なに?」
俺は立ち上がり、皇帝を見下ろして言う。
「歴史は繰り返される。それはヒトが歴史を学ばないからだ」
「……歴史、だと?」
昭和の時代、人類はインターネットを持たなかった。
あらゆる情報を足で手に入れる必要があり、独占欲を生み出した。
しかし情報革命が起きた。
どのような情報も、知っていて当たり前という時代になった。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
かつては超上流の者しか持ち得なかった思考の域が、スタンダードになった。
故に、人類は飛躍した。
情報革命以降の発展速度は、それ以前の比ではない。
具体例を出す。
職人が言う「数年は見て学べ」は誤りだ。
きちんとマニュアルを作り教育すれば三ヵ月も必要ない。
さて、俺はどうするべきだ?
ここで皇帝に情報社会マウンティングをしても意味は無い。
目的はカリンの願いを叶えること。彼女が愛した幻界を守ることだ。
無論、何もしないという選択肢もある。
エロトラップダンジョンに挑んだことで、現状、彼女こそが最も皇帝に近い。
しかしそれでは兄弟達の憎悪が消えない。
完全無欠のハッピーエンドを手に入れるため、俺がするべきことは──
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