日刊幼女みさきちゃん!

下城米雪

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第三章 りょーくんのうた

第十一話:みさきと――力が、欲しいか?

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「みんなぁ! ありがとぉ~!」

 ☆・:゜*オォォォォヾ(o´∀`o)ノォォォォオ*゜:・☆

 大歓声の中、午後四時を知らせるチャイムが鳴った。それを聞いて、課外活動を控えた高学年の児童達がそそくさと会場を後にする。瑠海は彼らに向かって「またきてるみみん☆」と謎の挨拶を飛ばした。

 週に一度の放課後ミニライブ。それが一年生の教室では定例の行事となっていた。今では学校中に噂が広まり、他の学年からも人が集まる程の人気だ。

 五月が始まる頃には一年生の授業も給食を挟んで午後まで続くようになり、ゴールデンウィークが開けた今では、高学年の児童や手の開いている教員に引率される集団下校が無くなった。

 それでも家が遠い児童などは親が途中で迎えに来たりするが、ほとんどの児童は少なくとも二人以上という条件のもと、一年生だけで帰宅するようになっている。はーい二人組みになってー、という残酷な指示は無く、単純に家が近いかどうかで班決めがなされる。これによって問題が起きた前例は無い為、風岡南小学校では、毎年これを採用している。

「おまたせ~」

 ファンが去った後、瑠海は満足そうな表情をして待たせていた二人の元に駆け寄った。

「るみみん!」
「るっみみ~ん☆」

 ゆいと瑠海の間で謎の挨拶が行われている間に、みさきは荷物をランドセルに片付けて席を立った。それを見て、瑠海は少し急いでアイドルグッズを手提げバッグに片付ける。一方で、ゆいは既に片付けを済ませてあったランドセルを肩に通すだけで準備を終わらせた。

 ゆいとみさきが下校で同じ班になるのは当然として、偶然にも瑠海の家は二人が帰る道の途中にあり、この三人で班が作られることになった。

 瑠海の家に着くまで、およそ二十分。さらに二人が別れるまでは十分ちょっと。これだけの時間がかかるのは、家が遠いというよりも彼女達の歩行速度によるところが大きい。きっと六年生になる頃には、登下校にかかる時間は半分くらいになっているだろう。

「こんしゅうも、だいせいこうだったね!」

 門から出てすぐ、ゆいが甲高い声で瑠海に言った。瑠海は「るみみん☆」と勝利のポーズをして、ゆいに応える。と、拍手しているゆいの先、みさきがぼんやり上を見ている事に気が付いた。

「みさき、きょうも、さくし?」
「……ん」

 毎日一緒に帰っているから、三人は互いのことを良く知っている。

 瑠海はランドセルを揺らして二人の一歩前に出ると、後ろ向きで歩きながら言う。

「るみみん☆ おてつだい、するよ!」

 みさきは素直に頷いた。
 作詞の方法なんて知らないから、手伝ってくれるなら嬉しい。

「かしはね、おもいを、のせるんだよ!」
「おもい?」
「そう!」

 ピッと人差し指を立てて、嬉しそうに作詞理論を語る瑠海。みさきは真剣に聞いているけれど、ちょっとピンと来なかった。ゆいは二人の間でるみみん☆

「……むずかしい」
「そんなことないよ!」

 瑠海は両手を広げて、クルクルとみさきの後ろに回りこむ。

「おもってること、きょくにのせるだけで、いいんだよ!」
「おもってること?」
「そう!」

 みさきは足を止めて、ゆっくりと目を閉じた。
 
 自分は何を考えているのだろう。
 サプライズを計画しているのは、りょーくんに喜んで欲しいからだ。みさきはりょーくんのおかげで、いっぱい嬉しい思いをしているから、りょーくんにも同じくらい嬉しくなってほしい。

 だけど、それを歌にするなんて難しい。簡単に言葉は出てこない。

「るみちゃん、おもい、なに?」
「トップアイドル!」

 瑠海が自作する歌詞にはどんな想いがあるのかと問うと、瑠海は瞬時に答えた。

「みんなをえがおにして、ゆうめいになるの!」
「ゆうめい?」
「そう! にっぽんぢゅうのひとに、しってもらうんだよ! るみみん☆」

 瑠海の言っていることは良く分からないけれど、みさきは何だか、りょーくんに似ているような気がした。それが何故かは分からないけれど、どうしてかそう思った。

 その隣でゆいは「かっこいい!!」と拍手していた。

「……んー」

 口を一の字にして考えこむみさき。
 瑠海は「あるこう!」と言って、みさきの背中を押した。

 と、その時。

「――力が、欲しいか?」

 突如として聞こえた声に、三人は同時に振り向いた。
 そこにはランドセルを背負った男の子――同じクラスの蒼真くんが立っていた。

「……ストーカー?」

 瑠海はみさきの背に隠れて、不審者を見るような態度で言った。

「ふん、然様な戯言を吐けるのも今だけだ」

 蒼真は何故かランドセルを地面に下ろすと、みさきに一歩近付いた。

「汝の魂の声を聞き、人の形をした同胞に伝える手段が知りたいのであろう?」

 小学生離れした語彙力だけではなく、とても一年生とは思えない言語能力で痛い発言をする蒼真。瑠海は彼の言っていることがさっぱり分からなくて、気味が悪いから無視しようとみさきの背を引くのだが、みさきとゆいには彼が作詞の手伝いを申し出ていることが分かった。

「わかる?」

 作詞の仕方が分かるの? とみさき。

「無論だ」

 会話が成立したのを見て、瑠海は目を丸くする。
 え、今の日本語だったの?

「唱えよ」
「むむむ?」

 何を? と思ってゆいは目を細めた。
 その反応を見て蒼真は重々しく頷くと、ポケットから子供向けのスマートフォンを取り出した。

「あー! ダメなんだー! スマホもってきてるー!」

 即座に指摘する瑠海。
 蒼真は涼しい顔でスマホを操作して、ゆっくりと口を開いた。

「……我が手にあるのはひとつの箱。開くことは叶わず、閉じることも叶わぬ。だが一度光を灯したならば、それは電光を纏いて宙に溶ける。繋げ、繋げ、繋げよ我が十の僕。九を囲う零より奏でて四つの詩を二度謳う。召喚魔法――お母さん!」

 prrrrrr
 prrrrrr

「もしもしママ? 作詞ってどうやるの?」
『ごめんねソーちゃん、ママちょっと忙しいから後にして』
「え? あ、はーい」

 ……
 ……
 ……

「……健闘を祈る」

 そそくさとランドセルを背負い、そのまま立ち去った蒼真。

「……なにしにきたの?」
「わかんない」

 厳しい表情で言う瑠海に、ゆいは小さく頷いた。
 その隣で、みさきは彼が言いたかったことを考える。

 大人を頼れ、という意味だろうか?

 頼れる大人となると、まっさきに浮かぶのはりょーくんだ。しかし、今回はりょーくんに内緒にしなければならない。

 となると、次に思い浮かんだのは――
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