幼馴染をわからせたい ~実は両想いだと気が付かない二人は、今日も相手を告らせるために勝負(誘惑)して空回る~

下城米雪

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Case1. 反省会。太一の場合

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 懺悔します。
 俺は彼女に「愛してる」と伝えることを考えた時、遠い未来を幻視しました。

 その過程で、頭に浮かんだのです。
 綺麗な教会。純白のドレスを身に纏った彼女のベールを持ち上げ、微かに赤らんだ表情を見ながら、ゆっくりと唇を重ねる場面が。

 無論、耐えました。
 即座に煩悩を振り払い現実に戻ったのです。

 これはゲーム。ただのゲーム。
 心の伴わない言葉を伝えるだけ。

 そんな風に……思えるはずがない!
 何故なら俺は本当に彼女を愛している!

 だからこそ。
 今この場で懺悔させてください。

 ──大好きだよ。

 その言葉を耳にした瞬間。
 俺は煩悩に支配されたのです。

 言い訳をさせてください!
 おかしいのです! 彼女は!

 なぜ耳元で喋る!?
 なぜ息を吹きかけるように喋る!?

 あの癖は直すべきだ!
 あれでは、いつ俺の理性がオーバーヒートするか分からない!

「次のページ、穂村さん読んでみて」

「はい」

 その声を聞き、ビクリと肩が揺れる。
 俺は姿勢を正し、唇を嚙みながら全身に力を込めた。

 そして、チラと彼女を見る。

 あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?
 うあああああああああああああ!?

 なんと美しい立ち姿なんだ!?
 まさしく地上に舞い降りた天使! 穢れを知らぬ無垢な乙女!

 自分が許せない!
 彼女に対して、邪なことを考えるなど!

 ……あぁ、やはり俺はダメだ。

 今のままでは彼女に相応しくない。
 もっと修行して、精神的にも肉体的にも強くなる必要がある。

 そもそも今は授業中です。
 芽衣を見なさい。美しい姿勢で、集中して授業を聞いています。

 その姿を見るだけで分かる。
 今の彼女には、雑念など、ひとつもない。

 ……ほんの少し、悔しい。

 俺だけが彼女を意識している。
 たった一言でこんなにも心を乱している。

 一方で彼女は「好き」という発言を全く躊躇しなかった。今も俺のことなど欠片も考えていないのでしょう。

「……」

 文武両道で品行方正な幼馴染。
 彼女と釣り合う男になるためには、この程度で心を乱してはならない。

 反省しよう。
 今日の勝負、俺は無様だった。

 次は必ず違う結果にする。
 だから今は邪念を捨て、心を鍛えたい。

 しかし、思ってしまう。
 彼女の頭の中を覗きたい。

 今、彼女は何を考えているのでしょうか?
 凛とした表情で見つめるノートには、どのような文字が記されているのでしょうか?

 それがとても気になって、1限目の授業は全く集中できなかった。
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