幼馴染をわからせたい ~実は両想いだと気が付かない二人は、今日も相手を告らせるために勝負(誘惑)して空回る~

下城米雪

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Case3. 乳首当てゲーム ~決着~

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*  芽衣  *

 はい、また私の勝ち。
 ほんと太一ってバカ。

 生物としての格? は?
 おっぱい触らせたいだけですけど?

 あぁ、それにしても気分が良いわね。
 ふ~ん? 太一って私に認められるために勝負してたんだ~?

 えっへへへ。何それ何それ~♡
 すっごく私のこと意識してるじゃん。

「ところで、どうやって決着を付けるのですか?」

「はぁ? そんなの先に乳首当てられた方が負けに決まってるじゃん」

「それだと自己申告になるのでは?」

「なんで?」

「制服の上から触っても、分からないと思いますが……?」

「あー」

 そうかな?
 ……そうかも。

 ん-、どうしよ。
 あー、うー、あー、よし、決めた。
 気分が良いからサービスしてあげよう。

「受け側はシャツ一枚まで脱ぐのはどう?」

「分かりました。先行はどちらにします?」

「私に譲って」

「……なるほど、そういうことですか」

 ん? 何が?

「分かりました」

 太一って、たまに謎の解釈するんだよね。
 まぁ都合が良いから深く追求しないけど。

「いつでもどうぞ」

 太一は真剣な顔をして言った。

「……」

 私は笑いを堪えた。
 だって……浮いてる。

 これギャグ? ねぇギャグだよね?
 その顔なに? その自信どこから来るの?

「ん-、どの辺かな~?」

 私は俯きながら言った。
 ダメだ笑うな。まだ笑うな。
 
「ここかな~?」

 今日の私は睡眠が足りている。
 だから目的を忘れていない。

 色々な本に書いてあった。
 男の子は、乳首を弄られると嬉しい。

 だから私は、今ここで前に出る!

「えいっ」

 うわ~、やばいやばい!
 触っちゃった! 触っちゃったよ!

「ねぇ、どう? 当たり?」

「……外れです」

「えー? ほんとかなー?」

 指先をクルクルしてみる。

「なんか尖ってるけど?」

「……ニキビです」

「えぇ~? こんな場所に~?」

 指先をクルクルしてみる。

「……あのっ、いつまで触って」

「太一が負けを認めるまで」

「……今日は時間がっ、無い、のでは?」

「誤差だよ。これくらい」

 指先をクルクルしてみる。

「ねぇ、ほら。本当は当たりなんでしょ?」

「何度も言わせないでください。外れです」

 指先をクルクルしてみる。

「……うっ」

「あれ? 今の何? ねぇねぇ、今の何?」

「……なんでも、ありません」

「ふーん、そうなんだね」

 私は少し背伸びをして、彼の耳元に顔を近付ける。

「ほーら、早く負けを認めちゃえ」

「芽依の方こそ、良い加減に……っ、してください」

「あはっ、また可愛い声が出た」

 私は指先をクルクルし続ける。

「太一、もしかして気持ちよくなってる?」

「そんな、わけが……くっ」

「よわよわ太一くんは、芽依ちゃんに男らしいところを見せたいのにぃ、女の子みたいな声を出してます。ごめんなさ~い」

「何をっ、勝手なこと……をっ」

 私はゆっくりと彼の背後に移動する。
 それからギュッと胸を押し当てて、指先をクルクルしながら続けた。

「ほらほら。早く負けを認めないと、本当に女の子になっちゃうぞ?」

 私はサービスを続ける。

「よわよわ太一。今日も負け。芽依ちゃんには勝てない。高校生なのに。私より背が高いのに。でも結局負けちゃう。あはっ、情けな~い」

 私が囁く度に彼のの身体がビクリとする。
 その反応が楽しくて仕方がない。

「ひょっとして、今日は勝てると思った?」

「……」

「あーあ、黙っちゃった。でも、声漏れてるからね? ふふ」

 私は囁き続ける。

「よわよわ太一」
「自信満々なのに、いつも負けちゃう」
「私に認められたいとか言いながら、女の子みたいな声出してる」
「泣きそう?」
「いいよ。泣いちゃえ」

「ざーこ」

 瞬間。

「わっ、ちょっ、えっ」

 太一が振り返り、私の肩を掴んだ。

「ちょっ、なにっ、痛いってば……」

 どこか血走った目で私を見ている。

「……なに。怖いよ」

 まさか。
 来たか?

 これは。
 来たのか?

 理性。
 壊れたか?

「……」

 見つめ合う。
 私は目を閉じた。

 覚悟なら、とっくにできてる。

「……次はッ」

 ん? 次?

「次こそはッ、俺が勝ちます!」

 目を開ける。
 見慣れた涙目がそこにあった。

 そして彼は、全速力で逃げ出した。

「…………」

 取り残された私は、しばらく動けない。

「……………………もう!」

 たっぷり硬直した後、とても形容しがたい感情を大きな声で吐き出した。

「太一のバカ。意気地なし」
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