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肉便器にした男(3)※ディオン視点
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学園祭の日。コレットは、フリルのたくさんついた淡いピンク色のドレスを着ていた。平凡な顔立ちのコレットには正直、あまり似合っていなかったけど、誰よりも可愛く感じた。人の目を気にせず、抱いてしまいたいと欲望が高まったし、ダンス後は木陰で抱いて楽しんだ。
そして、今更だけれど、あの時、友人たちとコレットをレイプしたのは失敗だったな、と思うようになってきた。コレットを抱いて、体はスッキリしているのに、気分が重い。
なんでこんなに苛立つのかと思っていたけれど、コレットが先生に見せる恋慕の表情が、友人たちと体を重ねる姿が、不愉快だったのかもしれない。
自覚はなかったけれど、俺は先生や友人たちに嫉妬していたのだ。
「ほんっと、今更だなあ……」
けれど、時を巻き戻すことは出来ない。土下座して謝ったところで、俺をあっさり捨てたアンナのように、コレットを抱く機会さえ失うだけだろう。コレットが俺の子を孕めばいいが、その確率は5分の1であり、楽観的にはなれなかった。
この3年間、抗おうと努力はしたけれど、結局、俺は父のように、好きでもない女と結婚する運命だったのだ。
俺は鬱々とした気分で、俺を見ない女を抱いた。
「こんにちは、ディオン」
そして、学園を卒業する2週間ほど前に、サミュエルが俺の部屋に訪れた。珍しいな、と思って出迎えたのだけれど、サミュエルはとんでもないことを言い出した。
「貴方、コレットを好きでしょう?」
「は? んなわけねーよ、あれは肉便器……」
「きっと自分の気持ちに鈍感なのですね。あれで自覚ないのは驚きます」
血迷い事を言う友人の言葉に、俺は笑い飛ばそうとした。だけど、真剣な目をしたサミュエルに、俺は笑うのをやめた。
「……そう見えるのか?」
「はい」
沈黙が、場を支配した。
「アランの薬学の成績は知っているでしょう? これ凄くいいから、コレットに使ってみて下さい」
「え? でも、あいつに魔法は効かないって……」
「コレットは魔力が高いですからね。でもこれは、ちゃんと効果ありましたよ」
「これの中身なんだ?」
無色透明だが、薬学と言っているからには、ただの水ではなさそうだ。
「惚れ薬です。効果は1週間ほど持続します。偶然出来てしまったらしいのですが、捨てるのも勿体ないしと、相談されました。まぁ、もっとも、そんな事に使うなんてと、アランは渋っていましたけどね」
「――偶然出来たってレベルの話じゃないぞ。禁忌の薬じゃないか。人に使ってはいけないはずだが」
「使うか使わないかは自由です。でも、アラン以外の3人は使いましたよ?」と、その薬を押し付けるように俺に手渡し、サミュエルは去っていった。
「あー……、そうだったのか」
この3週間近く、コレットの体調が悪いから接触は控えるようにと聞かされていたから、もはや妊娠でもしたのだろうかと思っていたのだが、惚れ薬を使って友人たちが楽しんでいたからなのかと、ようやく気が付いた。
俺は迷ったが、飲み物に混ぜて惚れ薬だと言わずに飲ませた。
「ど、どうだ……コレット? 具合は悪くないか……?」
大きな蒼い瞳が、わずかに俺を見た。
その時、俺の時間が、ビクリと止まったような気がした。
「ディオン♡ 大好き♡」
先生にするように、腕を絡ませてくる。コレットは肉便器ではなく、俺の恋人になった。愛情たっぷりな瞳でコレットに見られて、俺は何も考えられなくなった。
ここでやっと、俺はコレットを愛していることを、認めるしかなかった。
「ディオンのせーえき♡ 美味しいから、ぜんぶ飲んじゃう♡」
「くそっ、なんでこんな可愛いんだよ…!!」
何度もベットで鳴かせた。今までのセックスとは充足感が雲泥の差だった。
あっという間に1週間が過ぎた。惚れ薬をくれたサミュエルが再び訪れた。
「どうでした?」まぁ言わなくても、結果は分かりますけど、とサミュエルは笑顔を浮かべていた。
「最高だった……」
「でしょ? 案外好きって認めてしまったら、あとは楽ですよね。あ、アランとエドモン、マティアスもコレットと結婚したがっているから、独占とかはだめですよ。みんなのお馬鹿さんなんなんだから」
「そんなことはわかってる。抜け駆けはしない」
舞踏会で取り合った時点で、皆の気持ちがコレットにあることは見えていた。
そして、今更だけれど、あの時、友人たちとコレットをレイプしたのは失敗だったな、と思うようになってきた。コレットを抱いて、体はスッキリしているのに、気分が重い。
なんでこんなに苛立つのかと思っていたけれど、コレットが先生に見せる恋慕の表情が、友人たちと体を重ねる姿が、不愉快だったのかもしれない。
自覚はなかったけれど、俺は先生や友人たちに嫉妬していたのだ。
「ほんっと、今更だなあ……」
けれど、時を巻き戻すことは出来ない。土下座して謝ったところで、俺をあっさり捨てたアンナのように、コレットを抱く機会さえ失うだけだろう。コレットが俺の子を孕めばいいが、その確率は5分の1であり、楽観的にはなれなかった。
この3年間、抗おうと努力はしたけれど、結局、俺は父のように、好きでもない女と結婚する運命だったのだ。
俺は鬱々とした気分で、俺を見ない女を抱いた。
「こんにちは、ディオン」
そして、学園を卒業する2週間ほど前に、サミュエルが俺の部屋に訪れた。珍しいな、と思って出迎えたのだけれど、サミュエルはとんでもないことを言い出した。
「貴方、コレットを好きでしょう?」
「は? んなわけねーよ、あれは肉便器……」
「きっと自分の気持ちに鈍感なのですね。あれで自覚ないのは驚きます」
血迷い事を言う友人の言葉に、俺は笑い飛ばそうとした。だけど、真剣な目をしたサミュエルに、俺は笑うのをやめた。
「……そう見えるのか?」
「はい」
沈黙が、場を支配した。
「アランの薬学の成績は知っているでしょう? これ凄くいいから、コレットに使ってみて下さい」
「え? でも、あいつに魔法は効かないって……」
「コレットは魔力が高いですからね。でもこれは、ちゃんと効果ありましたよ」
「これの中身なんだ?」
無色透明だが、薬学と言っているからには、ただの水ではなさそうだ。
「惚れ薬です。効果は1週間ほど持続します。偶然出来てしまったらしいのですが、捨てるのも勿体ないしと、相談されました。まぁ、もっとも、そんな事に使うなんてと、アランは渋っていましたけどね」
「――偶然出来たってレベルの話じゃないぞ。禁忌の薬じゃないか。人に使ってはいけないはずだが」
「使うか使わないかは自由です。でも、アラン以外の3人は使いましたよ?」と、その薬を押し付けるように俺に手渡し、サミュエルは去っていった。
「あー……、そうだったのか」
この3週間近く、コレットの体調が悪いから接触は控えるようにと聞かされていたから、もはや妊娠でもしたのだろうかと思っていたのだが、惚れ薬を使って友人たちが楽しんでいたからなのかと、ようやく気が付いた。
俺は迷ったが、飲み物に混ぜて惚れ薬だと言わずに飲ませた。
「ど、どうだ……コレット? 具合は悪くないか……?」
大きな蒼い瞳が、わずかに俺を見た。
その時、俺の時間が、ビクリと止まったような気がした。
「ディオン♡ 大好き♡」
先生にするように、腕を絡ませてくる。コレットは肉便器ではなく、俺の恋人になった。愛情たっぷりな瞳でコレットに見られて、俺は何も考えられなくなった。
ここでやっと、俺はコレットを愛していることを、認めるしかなかった。
「ディオンのせーえき♡ 美味しいから、ぜんぶ飲んじゃう♡」
「くそっ、なんでこんな可愛いんだよ…!!」
何度もベットで鳴かせた。今までのセックスとは充足感が雲泥の差だった。
あっという間に1週間が過ぎた。惚れ薬をくれたサミュエルが再び訪れた。
「どうでした?」まぁ言わなくても、結果は分かりますけど、とサミュエルは笑顔を浮かべていた。
「最高だった……」
「でしょ? 案外好きって認めてしまったら、あとは楽ですよね。あ、アランとエドモン、マティアスもコレットと結婚したがっているから、独占とかはだめですよ。みんなのお馬鹿さんなんなんだから」
「そんなことはわかってる。抜け駆けはしない」
舞踏会で取り合った時点で、皆の気持ちがコレットにあることは見えていた。
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