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その後(エドモン編)下編
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「マーガレット。イザベルをお願いね」
イザベルのことはマーガレットに頼んで、私は大きな鳥型の魔物、ロックバードを次々に収納しては氷室に入れる。サミュエルは魔法で氷を出せるので、屋敷の地下に氷室で貯蔵室を作ってくれた。
私は魔物を狩ったことがないため、収納スキルもレベルが低く、それほど物を入れることは出来ないため、何かしと重宝している。大型の魔物が数匹入るほどの収納スペースはあるが、無制限では入らない。そのため、季節によって価格変動の大きい希少部位のみ収納する事にしている。
ロックバードの肝は薬にもなるので良い値で取引されるが、相場も水物だ。渡り鳥なので、この辺りでは今の時期にしか獲ることが出来ない。つまり、最も市場に出回る今の時期が最も安いということだ。
「お前さんにかかったら、商売あがったりだよ」と馴染みの店主には言われるが、こちらも養う子供が多く、家計に余裕があるとはお世辞にも言えないので、このやり方は続けていく。
買い取り価格が高く、品薄の時期に持っていけば、それだけ高く売れる。収納スキルを使って、痛みやすい特産の生薬などを、流行り病の発生している遠方の領地へ輸送することも出来、人々の役にも立つのだと気が付いたのは「せっかく良いスキルを持っているのに、宝の持ち腐れですよね」とサミュエルに指摘されてからだった。
「えーっとロックバードは尾羽が高いのよね……」
収納からの出し入れにも慎重さが求められる。これだけの量の魔物はすぐに解体出来ない。なるべく傷まないよう
に、お腹の部分を下にして置いていく。
今回は殆どがロックバードのため、無心で作業していると、
「あれ? ちょっと! これは死んでないじゃない!」
ふわふわの白いドラゴンがギャアと鳴いたので、私は思わず飛びのいた。
「あ、すまんすまん。この間ペットが欲しいって言っていただろう? それはコレットのペットに良いかなと思って、買ってきたベビードラゴンだ」
たしかに可愛い。
目も大きく、愛玩用だろうか。卵から孵して育てると、人に懐くと聞いたことがある。
お腹がすいてそうだったので、こっそり後で食べようと思っていた肉団子をあげた。
「それならそうと、言ってよね。飛びついてくるし、びっくりしたわ! だいたい、貴方は一言足りないのよ。家に帰ってくる日にちも言わないで帰ってくるし!」
「休みなんて、あってないようなものだ。手紙を出すより、こいつに乗って帰ってくるほうが早いんだよ。……それよりも、俺が居なくて寂しかったか」
「貴方が、まるで捨て猫を拾ってくるかのように連れてくる、新人の世話が忙しくて、ちっとも寂しくありません。いくら身寄りがいないとはいえ、ここは孤児院じゃないんですからね」と文句を言うと、その太い眉をヘの字にして困ったような顔をした。
「コレット以上に信頼できる人間がいない」と言うものだから噴飯ものである。
弟のアランとはまるで似ていないと思っていたが、年を重ねるにつれ、いたるところにその優しい性根が見え隠れした。
「まるで大型犬にでも懐かれたみたい」 はぁ、とため息をつきながら、私はエドモンの短い髪を撫でた。
「今6か月目? その割にはなんだか大きいね」
私のお腹には第5子が授かっていた。今回はエドモンの子だ。だから、贈り物だなんて、似合わないことをしてきたのだろうか。
「貴方に似たんでしょうよ。お腹もすごい蹴るのよ」
「それは凄い。良い軍人になれるだろうな」
笑って、エドモンはその胎動を確かめるのだった。
イザベルのことはマーガレットに頼んで、私は大きな鳥型の魔物、ロックバードを次々に収納しては氷室に入れる。サミュエルは魔法で氷を出せるので、屋敷の地下に氷室で貯蔵室を作ってくれた。
私は魔物を狩ったことがないため、収納スキルもレベルが低く、それほど物を入れることは出来ないため、何かしと重宝している。大型の魔物が数匹入るほどの収納スペースはあるが、無制限では入らない。そのため、季節によって価格変動の大きい希少部位のみ収納する事にしている。
ロックバードの肝は薬にもなるので良い値で取引されるが、相場も水物だ。渡り鳥なので、この辺りでは今の時期にしか獲ることが出来ない。つまり、最も市場に出回る今の時期が最も安いということだ。
「お前さんにかかったら、商売あがったりだよ」と馴染みの店主には言われるが、こちらも養う子供が多く、家計に余裕があるとはお世辞にも言えないので、このやり方は続けていく。
買い取り価格が高く、品薄の時期に持っていけば、それだけ高く売れる。収納スキルを使って、痛みやすい特産の生薬などを、流行り病の発生している遠方の領地へ輸送することも出来、人々の役にも立つのだと気が付いたのは「せっかく良いスキルを持っているのに、宝の持ち腐れですよね」とサミュエルに指摘されてからだった。
「えーっとロックバードは尾羽が高いのよね……」
収納からの出し入れにも慎重さが求められる。これだけの量の魔物はすぐに解体出来ない。なるべく傷まないよう
に、お腹の部分を下にして置いていく。
今回は殆どがロックバードのため、無心で作業していると、
「あれ? ちょっと! これは死んでないじゃない!」
ふわふわの白いドラゴンがギャアと鳴いたので、私は思わず飛びのいた。
「あ、すまんすまん。この間ペットが欲しいって言っていただろう? それはコレットのペットに良いかなと思って、買ってきたベビードラゴンだ」
たしかに可愛い。
目も大きく、愛玩用だろうか。卵から孵して育てると、人に懐くと聞いたことがある。
お腹がすいてそうだったので、こっそり後で食べようと思っていた肉団子をあげた。
「それならそうと、言ってよね。飛びついてくるし、びっくりしたわ! だいたい、貴方は一言足りないのよ。家に帰ってくる日にちも言わないで帰ってくるし!」
「休みなんて、あってないようなものだ。手紙を出すより、こいつに乗って帰ってくるほうが早いんだよ。……それよりも、俺が居なくて寂しかったか」
「貴方が、まるで捨て猫を拾ってくるかのように連れてくる、新人の世話が忙しくて、ちっとも寂しくありません。いくら身寄りがいないとはいえ、ここは孤児院じゃないんですからね」と文句を言うと、その太い眉をヘの字にして困ったような顔をした。
「コレット以上に信頼できる人間がいない」と言うものだから噴飯ものである。
弟のアランとはまるで似ていないと思っていたが、年を重ねるにつれ、いたるところにその優しい性根が見え隠れした。
「まるで大型犬にでも懐かれたみたい」 はぁ、とため息をつきながら、私はエドモンの短い髪を撫でた。
「今6か月目? その割にはなんだか大きいね」
私のお腹には第5子が授かっていた。今回はエドモンの子だ。だから、贈り物だなんて、似合わないことをしてきたのだろうか。
「貴方に似たんでしょうよ。お腹もすごい蹴るのよ」
「それは凄い。良い軍人になれるだろうな」
笑って、エドモンはその胎動を確かめるのだった。
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