異世界召喚×××女勇者の受難

ちゃむにい

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「これかぁ……」

神殿には、天馬に跨った女神様の像が安置されていた。何かと戦うところなのだろうか、女神様は大粒のエメラルドが埋まった杖を掲げており、その姿は神々しいまでに美しかった。
小百合は、どうか翔を助けて下さいと、目を閉じて祈った。

そして数秒後、小百合は目を見開いて驚いた。

「服は!?」

そう。素っ裸だったのである。
小百合は学校の制服を着ていたはずだが、靴下さえなくなってしまっている。

慌てて前を手で隠したが、この誰も居ない奇妙な空間の中では無意味であるような気がして、しばらくしてから手を離した。

眼前には何もなく、物音一つしなかった。

これが神域なのだろうか、と思ったが、何もない、ただ白いだけの通路が永遠に続いているのを見て、とんでもないところに来てしまった、と感じた。

「衣服の着用は許されておりません。穢れておりますので」
「貴方は……?」

唐突に背後から声をかけられて、小百合はビクリと背を震わせた。神様だろうかと思って振り返ってみると、背中から白い翼の生えた、金髪碧眼の幼い少女がいた。

「神様に仕えている者です。名前はありませんが、人間は私のことを天使と呼びます」

神々しい気配を感じ、小百合は緊張したが、素っ裸なのを思い出して、再び大事な場所を手で隠した。

「勇者様。申し訳ありませんが、時間がありません。すぐにご用意しますので、神様に謁見し、神通の儀を行う前に、身を清めてください」

淡々と喋る天使から、聞き捨てならない言葉を聞かされ、小百合は聞き返した。

「神通の儀とは何ですか?」
「ご存知ないのですか?」

天使は、きょとんと豆鉄砲を食らったような顔で小百合を見た。

「……ああ、異世界から召喚されたばかりの方なのですね? どこまで説明を受けていらっしゃいますか? 勇者様は神様と交わる事で神力を授かるのです」
「交わるって、まさか……」

天使の話を聞いて、ひしひしと嫌な予感が した。身を清めてから交わるとなると、どうしても、あれしかないような気がした。

「人間が子供を作る時と同じ方法を用います」
「何それ……!? 聞いてないし!!?」

翔が死ぬかもしれない――
そう思ったらいても立ってもいられなくて、召喚した神官の詳しい説明を聞くのを後回しにして、ここに来たのだ。

小百合が勇者であるという事は聞いたが、こちらの世界の事情は何一つ知らない。
天使は焦る小百合を値踏みするように見てから、微笑んだ。

「貴方様は神様に選ばれたのです。そうでなければ例え勇者でも、神域に立ち入る事は出来ません。……湯がご用意出来たようです。神様がお待ちですので、早くお入りください」

天使は「お手伝いしますね。こちらです」と言って、光の扉を開け、戸惑う小百合を、湯へ案内した。

そこは、開放的な空間になっていた。深紅の薔薇の花と白い薔薇の花びらを浮かべた湯に、趣のある床や柱。そして、真っ青な空と雲海が目に飛び込んできた。まるで現実味のない風景が広がっている。

それは、この世のものではないような気がして――

――小百合は半ば放心状態で天使に体を洗ってもらうと、お湯に入った。
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