ゴブリン転生【完結】

ちゃむにい

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親友 ※勇者視点

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「あ~……、もう1回だ!」

むきになるとこもそっくりだ。その姿を見て、俺は点と点が線になったような気がした。

「なぁ……。今、楽しいか?」
「は? まぁ、このゲームは面白いと思うけど」
「ゲームじゃなくて、リアルの話」
「ああ、楽しいな。……なんかこう、生きてるなって感じがする」
「そっかー、良かったな……」

あー、なんで今まで気が付かなかったんだろう。俺って馬鹿だな、と頭をかく。

こんなゲームで一喜一憂するような、人間くさいゴブリンなんて、居るわけないじゃないか。

痺れを切らしたのか、「何時までこんなところに居る気だ? お前にはお前の人生があるだろう。死んだお前のクラスメイトやらも、別に牢屋に入って欲しいだなんて望んでいないんじゃないか?」って言われたこともあったっけ。

ずっと不思議だった。やけに親切だから。

勇者なんて、ゴブリンのこいつにとっては危険因子でしかないはずなのに。

さっきだってそうだ。俺が選択することを待っている。俺なんて、とっとと殺すか日本に送り返せばいいのに「牢屋に居たい」という俺の気持ちに配慮したのだろう。
なんてお人好しなんだ。だけど、そうゆうやつなんだよな、と亡くなった友人の笑顔を思い出し、涙が溢れて溢れて止まらなかった。
そんな俺に「ど、どうしたんだ? 腹でも痛いのか?」とゴブリンは、狼狽えた様子で言った。

「なぁ、お前の名前、何て言うんだ?」

一瞬の無言の後に「ミゲルと名乗っている」とゴブリンは言った。

「ミゲルか。奇遇だな、俺が好きだったゲームキャラの名前じゃないか」
「……そうなのか。こちらではありふれた名前らしいぞ」
「なあミゲル。……俺と、友達になってくれないか?」

あいつとは、ずっと友達だと思っていた。それどころか、親友だと思っていた。
でも、面と向かって言ったことはなかった。理由なんてない。ただ、恥ずかしかったからだ。
その事を、あいつが―― 倉崎海斗が死んでから、ずっと後悔していた。

――やっと本人に言うことが出来て、わだかまりが解けたような気がした。

「俺はゴブリンだぞ?」
「そうだな」

ミゲルは豆鉄砲を飛ばされたような顔をしている。
おいおい、ゴブリンの癖に表情豊かだな。

「友達になってくれるよな?」
「……あぁ」

心の揺れ動きが表情に出ないから、あんまり表情に出ないゴブリンなのかなって思ってたけど、そうでもなかったらしい。

「俺、牢屋出るわ。もうこんな年だから、あまり大したことは出来ないかもしれないけど、ミゲルの手助けがしたい。いいかな?」
「お前、勇者だろ? ゴブリン手助けしていいのか? 人間に憎まれるぞ」
「その人間に投獄されていたんだぜ? お前が来なかったら死んでいたかもしれない。いわば、ミゲルは恩人だよ」

俺はニカっっと笑って、ミゲルと握手した。その後、ミゲルの息子、Aエイにはゲームの師匠と崇められ、調子に乗った俺はテクニックや裏技などを伝授するのであった。

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