僕の白い蝶【完結】

ちゃむにい

文字の大きさ
4 / 32

飼育

しおりを挟む
「取り敢えず、何か着せよう。……裸だし寒そうだ。メイリン、頼むよ」
「はい、お任せ下さい」

女の子の裸を見るのは初めてなので、どぎまぎしてしまって、マリオンは直視できなかった。メイリンは蝶人間を、ぬるい湯をかけて体を洗い、タオルで拭った。

「……あれ? ちょっと大きかったかな」

蝶人間は羽化するまで雄か雌か分からないから、どちらでも良いように服を用意していた。けれど当然ながら、個体差もある。
今回羽化した蝶人間は、平均的な蝶人間より身長が低かった。自分の育て方が悪かったせいだろうかと、マリオンは心を痛めた。

「坊ちゃま。心配されずとも、まだ羽化したばかりですから。羽化後でも、身長は伸びると聞いておりますよ。……キッチンメイドのメリーと同じぐらいの身長ですね。借りてきます」

メイリンの提案で、メリーの服を貸して貰って着せることにしたが、胸がメリーより大きいせいか窮屈そうにしていたので、比較的ゆったりとしたメリーの寝間着を着せることにした。

マリオンは寝る間も惜しんで、蝶人間を慈しんで育てた。育つにつれ、蝶人間は身長も伸び、胸も膨らんでいった。奴隷商人が言うように、あの女奴隷よりも大きな胸だった。
けれども、マリオンの胸の内には喜びはなかった。それよりも心配なことがあったからだ。

「僕の白い蝶、エサあげたのに元気ないなあ」

白い蝶――ニーナと名付けた――は飛びもせず、体を休めている。ただ、花の近くで座っているだけだ。親心としては、元気に飛んでいるところが見たかった。
蝶人間専門の医師も招いて診てもらったが、どこも悪くはなかった。

「何か原因があるはずだ……。ニーナが喋れたらいいのに……。このまま死んだらどうしよう」

どこが痛いとも言わない、物言わぬ蝶にマリオンの心は張り裂けそうだった。

「なんでご飯食べないんだろう。ニーナ、ちゃんとご飯食べないと元気になれないぞ……エサ変えてみようかなあ」

元々最高級のエサを取り寄せていたけれど、思い切って変えてみた。けれども、ニーナはほんのちょっぴり食べるだけで、あまり変わらなかった。
ニーナの体重は少しずつ減っていった。

学校に居ても衰弱したニーナのことばかり考えてしまって、何も手に付かなかった。

「お坊ちゃま……!? お早いお戻りで……! 体調でも悪くなられたのですか?」
「元気だよ。でも嫌になったから戻ってきた」
「学業の成績は侯爵様に届きますので、心配されます」
「テストは満点だったよ。問題ないでしょ。僕は真面目に学校に通ってるんだし、優秀な生徒だ。たまにはさぼったっていいだろ」

何もかもが嫌になってしまって、マリオンは学校から途中で帰宅した。何時もより酒の匂いのする侍従の男は慌てた様子で、主人を出迎え、その不自然な様子はマリオンに「また仕事中に酒を飲んでいたのか?」と疑心を抱かせるのに十分だった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

身を引いたのに、皇帝からの溺愛が止まりません ~秘された珠の還る場所~

ささゆき細雪
恋愛
五年前、内乱の混乱のなかで姿を消した最愛の妃・白瑤華(はくようか)。 彼女を失った皇帝・景玄耀(けいげんよう)は、その後ただ一人を想い続けながら執務に追われていた。そんなある日、書類に彼女の名前を発見し、居ても立っても居られなくなる。 ――死んだはずの彼女が、生きている? 同姓同名かもしれないが確かめずにいられなくなった彼は地方巡察を決行。そこで、彼によく似た幼子とともに彼女と再会、地方官吏として働く瑤華と、珠児(しゅじ)を見て、皇帝は決意する――もう二度と、逃がさないと。 「今さら、逃げ道があると思うなよ」 瑤華を玄耀は責めずに、待ちの姿勢で包み込み、囲い込んでいく。 秘された皇子と、選び直した愛。 三人で食卓を囲む幸福が、国をも動かすことになるなんて――?    * * * 後宮から逃げ出して身を引いたのに、皇帝の溺愛は止まらない――これはそんな、中華風異世界ロマンス。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...