運命を知らないアルファ

riiko

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本編

29、番になりたい

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俺の気持ちは伝えたし、一刻も早く正樹を本当の意味で手に入れたかった。俺は自分の気持ちを包み隠すことなく正樹に伝えた、つがいになりたいと。

 それが正樹を惑わすことになるなんてその時は全く思いもしなかった。

「俺、今度の正樹の発情期、薬を飲むことやめようかな。正樹をしっかり味わいたい」
「えっ!?」

 そんなに驚くところか?

「な、何言っているんだよ。司の嫌いなオメガ臭なんて嗅いだら、俺のこと嫌いになるだろ、変な気は起こすな、ってかなんで抱く前提なんだよ!?」

 可愛いな、オメガ臭って。
 
「オメガ臭なんて変な匂いは正樹からしない、薬を飲んでいても正樹は時々ふんわりと優しい香りがしてくる。ハーブみたいな、それが正樹の香りなんだろ? もっと嗅いでいたいって思うんだ。だからヒートで本来の匂いを確かめたい、それに散々お預けくらっているんだ、抱くよ」
「へっ」

 正樹は困ったように戸惑っている。

「どうしたの? 司はフェロモンの香り嫌いだろう、なのになんでそんなこと言うの?」
「本当にダメなのかな? 俺はお前の香りならオメガの香りもいいんじゃないかって思う、ヒートで香りを嗅いで、それで受け入れられるならつがいにしたい」
「ダメだ!!」

 こんなに拒絶されると思わなかったから、俺も少し傷ついた。でもどうして。

つがいにするのがダメなのか?」
「ダメに決まっているだろう。そんなことに俺の匂いを確かめるのもダメだ、そもそも酷くないか? 匂いを確かめて、それで司が耐えられなかったら駄目で、耐えられたらつがい? そんな自分勝手な理由で俺を見極められるなんてたまらない、そんなの俺自身じゃない! バースは関係ないとか言って、司が一番バースを気にしている!」

 そんなつもりはなかったが、いや、俺は人一倍バース性を気にしながら生きてきた。でも誤解しないで欲しい、俺は正樹の香りに恋をしたんじゃない、真山正樹という男に恋をしたんだ。いつになく必死に正樹に伝えた。

「そんな理由じゃない、確かに正樹の香りは俺が唯一いい匂いだと認識できるフェロモンだけど、でもそれ抜きにしても正樹が欲しい。好きになった相手がたまたまオメガだっただけ、それに俺達はアルファとオメガだ。つがいになれる関係性なら、好きならつがいになった方がいい、正樹だって俺の匂い確かめたくないのか?」
「いい、そんなこと知らなくて。匂いに惑わされるような関係にはなりたくない。きちんと司と絆を結んで、それで俺本来を好きって思って欲しい。俺も司の匂いなんてなくても司を好きだって思いたい」

 やはりお前は!! 俺と同じでフェロモンなんかに、バース性なんかに惑わされない本物の男だ。俺は嬉しくなった。

「俺が匂いを感じないこと心配している? 普段から少しだけ漏れているその香りはたまらなく好きなんだ。もうすでに匂い抜きにしても好きだよ」

 気付くと俺は正樹を抱きしめていた。愛おしさがこぼれるとは、こういうことなのか? 首元にキスをした。正樹は感じたようビクっとした。

「正樹、あんまり学校で可愛いこと言わないでよ。このまま抱きたくなる」
「いいよ、抱けよ」

 珍しく正樹が受け入れた? 

 でも俺は、正樹が大事だから売り言葉に買い言葉みたいな状況で正樹を抱きたくない。きちんとお互いが最上になった時、心が繋がった時にまたあの幸せを味わいたい。決して所かまわず無理させたいわけではないんだ。

「本当にどうしたの? 俺は正樹という人間が好きだよ。誰にも、アルファにも媚びなくてヒートにも争って、フェロモンに任せて性欲に溺れない強い心も。ヒート中のオメガは誰でもいいから抱いて欲しいって言うのに、初めて会った時、正樹は俺に近づくなって言った。そんなオメガは初めてだったんだ、だから俺必死に耐えた。それからオメガ嫌いの俺なのに気づけば正樹を目で追って、好きになっていたんだ。こうやって付き合ってからもどんどん好きになる。芯が通った心も、やさしいところも、可愛いところも、全てがたまらない、愛しているよ」

 正樹が真っ赤な顔をした。

「な、んだよ。恥ずかしいこと言うなよ。抱くんじゃないの?」
「煽るなよ、抱かない、こんなところで簡単には抱かないよ。正樹は大事にする俺の大切な人だ」

 泣きそうな正樹、いったいお前は何を考えているんだ?

「そんな潤んだ目をされたらたまらないな。困らせてごめんね」

 それから正樹は少し考えたようなそぶりを見せて、俺にそっとキスをした。

「司、好きだよ」
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