運命を知らないアルファ

riiko

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本編

24、周りへの牽制

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 俺が正樹の温もりと鼓動を堪能していると、現実に引き戻された。

「正樹っ、おいアルファ! 正樹を離せ」
「こいつは俺のものだ。それに正樹は約束を破ったから連れて行く」

 正樹との幸せな時間を邪魔しやがって!!

「約束? 本人嫌がっているだろう、そもそもお前のものじゃな、」
「は? 俺のだ、正樹の首にいているのが見えないのか?」
「なんだ、それ。首輪くらいあんなことがあったんだからするだろう」
「これは俺が付けた。俺の指紋でしか解除できない。なあ? 正樹」

 俺は見せたくはないが、正樹の首にハマる西条家紋入りのネックガードを見せつけた。これを見れば、正樹のうなじを俺が予約していることがわかるだろう。

「……なにそれ。正樹、お前西条に脅されているのか?」
「違うっ、これは。脅されてはない、首輪をした方が安全だから、くれたんだ」

 良かった。俺に脅されているって言われたら俺、ショックで立ち直れなかったよぉ。安全だってわかってくれている、さすが俺の正樹だぁ――。

「そいつはアルファで、オメガのお前が近づいていい相手じゃない、優しく近づいてくるアルファが危険なのは櫻井のことで思い知っただろ?」
「そうだけど、でも、実際櫻井から助けてくれたんだ」

 友人に俺のことを必死に説明してくれる正樹、愛おしくてそして嬉しくて仕方なかった。

 それにしても近藤というベータはしつこいなぁ。

 これくらい心配してくれるやつがいるなら、安心なのか? この男、櫻井の正樹への恋心に気がついていたみたいだが、まさかあんな悪人だとは思わなかったのだろう。そりゃそうだ、櫻井は腐ってもアルファ、ベータがそんなアルファの策略に気がつくのは難しいだろう。被害者の正樹本人まで未だに櫻井のことを悪人扱いせずに、どこかまだ友人として信じている部分があるみたいだった。

 こいつら頭、緩くないか? 

 いや正樹はそういう素直なところも可愛いからいいんだけどさ。でも櫻井は犯罪者だよ!? 了承も無いオメガに薬を知らない内に飲ませて、そして発情を引き出して抱くだけじゃなくて無断でつがいにまでするって、結構酷い犯罪じゃないか? 

 なんでこんなに和やかなんだ?

 オメガってそういう人種? いや正樹はオメガだけど、ベータ歴が長かったから中身はほぼベータみたいなものだって百合子さんが言っていた。だからオメガとしての危機感が薄かったって。

「そういうことだ、俺と正樹は深い繋がりができた。俺たちの間ではバースなんてたいした問題じゃない」
「そうか? 西条の正樹への接し方は、まさにアルファのオメガに対するそれに見えるけど? 正樹をそう言う目で見ているんだろ?」

 もちろん見ている、俺はすぐに返答しようと言葉を発した。俺は櫻井とは違う、正樹を好きという気持ちを隠す必要はない。むしろ正樹の友人にも俺の立ち位置を知っておいてもらいたいくらいだ。

「見て」
「見ていないっ!!」

 照れたのか? 言葉を被せられ、正樹が最後まで言わせてくれなかった。

「近藤! そんなわけないだろう? 俺は男でオメガ扱いしたい相手じゃない。俺たちはそんなんじゃないからっ、西条と話あるから先にあきらと飯くっていて?」

 明? ああ、正樹の仲のいい友達だな。正樹は目の前の近藤と、明という二人のベータと、櫻井というアルファと四人仲が良かった。これは片想いの時に調査した情報だった。

「そんなの! 結局、櫻井だって正樹をそういう目で見ていただろ。俺たちはお前を本当に心配しているんだよっ、あの時助けられなかったし、櫻井の気持ちは気がついていたけど、まさかあんな犯罪紛いなことするとは思ってなかったんだ」
「大丈夫だって。あのことはもう良いから! 心配してくれてありがとう。こいつ、ちょっと距離感がおかしいけど問題ないから、ってか司もう離せっ」

 正樹は友達と俺に挟まれて困っていたが俺を取ってくれた。その後、人の目を避けるようにトイレに連れ込まれたのをいいことに俺は正樹にキスをして、そしてそのまま抱くと言った。もともとこんなところで済ませるつもりはない、家の経営しているホテルに連れ込むことにした。

 庶民の正樹は、うちのホテルに驚いていた。そんな顔を見るのはなんともたまらない。今までの女はさも当たり前と言う風に、俺のホテルに出入りしていた。

 新鮮だった。親のホテルだからって御曹司がこんな風に私的に使っちゃダメだって諭された。そういう常識もあってアルファの管理もできるなんて、なんてできた嫁だ。可愛すぎだろう!!

 俺も働いていると知ったら、赤い顔して自分の価値観だけで変な言いがかりつけてごめんと謝った。素直すぎだろ!! すぐに怒って、そして自分の非を認めてきちんと謝罪ができる。なんて素晴らしい男なんだ。正樹はもうバース関係なく、人間性が出来過ぎだ。俺はますます惹かれていった。

 もう正樹以外に考えられない、愛してしまったんだ。こいつを逃さない、俺のモノにする。初めてアルファの本能が目覚めた。

 散々抱いたあと、俺はついに正樹に告白した。
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