運命を知らないアルファ

riiko

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本編

22、守る努力

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 正樹は療養も兼ねてしばらく自宅待機となり、その間に俺は校内で正樹が過ごしやすくなるよう動いた。今までだったら絶対にやらないことをやっている、周りはそれに驚き、むしろ俺が動いたことに緊急性を感じたらしく、学園内が一気に変わった。

 校長にその後のバース管理をすることを約束させた。

 とあるアルファが、薬でオメガのヒートを起こさせて襲おうとしたと包み隠さず全校生徒に伝えてもらった。退学になったアルファは櫻井だと皆知っている、そして休んでいるオメガも正樹だということも。

 アルファは、ベータ四人に狙っているオメガに発情促進剤入りのドリンクを普通の飲み物として渡すように指示。ベータたちはむしろ協力的に、何も知らないオメガに先生からの差し入れといいペットボトルを渡し、蓋を開け見えないように薬を入れ、その場で飲ませた。そういう経緯を発表した。

 その実行犯は全員警察に引き渡しされた。これは一人のオメガが一生の問題であるつがい契約を交わされる所だったという悪質な犯罪だった。

 騙されたうえ、薬で朦朧としている中、無理矢理のレイプ。凶悪犯罪以外のなにものでもない。むしろつがいが含まれる時点で、ただのレイプよりタチが悪い。

 それらを全校生徒に伝えた。


 俺は生徒会役員である光輝に頼み、これよりフェロモンレイプはいかなる場合でも退学の処置をとり、有無を言わさず警察に引き渡すと宣言させた。そしてその被害者がその後学校に通えなくなるような状況になれば、噂をした者は停学処分、又は誹謗中傷の罪に問い、最悪退学という処分も考える、そう宣言した。


 アルファ代表として挨拶をし、俺のオメガ嫌いの理由を公言した。


「知っての通り、俺はオメガを寄せ付けない。それは今までそういう被害にあってきた自分なりの自衛である。何度も発情誘発剤で好きでもないやつからフェロモンを浴びせられたら、トラウマになって当然だ。だが今回、俺と同じような境遇にさらされたオメガの子を保護した。偶然にも未然に防ぐことができたが、被害にあったオメガが俺みたいに、トラウマになりアルファ嫌いにならないように、皆には彼のサポートを頼みたい。バースによる差別や、バースしか見ない人間を俺は軽蔑する。バース関係なく彼に向き合ってくれることを願っている、アルファやオメガならわかると思うが、フェロモンに抵抗するのは本当に難しい、それを耐えきった強い自制心を持つそのオメガを俺は尊敬する」


 シーンとして、皆が耳を傾ける。そして演説が終わると一斉に大きな拍手を送られた。これで正樹は俺が守ったオメガとして優遇されるだろう。

 少しずつまわりを固めて、正樹は俺のものだということを最終的に本人に気がついてもらえたらそれでいい、そうやって落としていこう。

 舞台は整った。

 あとは正樹を学校に迎え、俺という存在を刷り込もう。俺はもう、正樹を手放さない。時間をかけてじっくりと手に入れてやる。
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