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イギリス編
16、久しぶりのアルファ
しおりを挟むこの間ダメ出しをされた撮影が、今日また始まる。匂いは流石に取れたし、なんなら体の跡も消えた。ビリーの望むキスマークだらけの撮影はどうやってするんだろう。
そんな疑問を感じていたら、類がスタジオ入りした。
「kai、俺の都合がつかなくて待たせてごめんね」
「ううん、僕の方こそ浅はかな行動のせいで迷惑かけてごめんなさい」
「いや、仕方ないよ。ベータにはわからないフェロモンのことだもん。今日はすごくいい香りがする、本来のkaiの香りなんだね」
「ベータに香りなんかないでしょう」
「なんていうか、まっさらな感じかな、気にしないで。今日も一段と美人だね」
類はさらっと僕を誉めてくれた。こういうところがやり手のアルファっぽいのに、童貞なんだよね。不思議だ‼
「みんな揃ったね、kai今日も綺麗だよ、その衣装も似合っているね」
「ふふ、ありがとう。腕と首だけ、重圧感は半端ないけどね」
今日はベッドシーン。レストランでプロポーズ、その後に二人の契りをする。以前の撮影時にレストランでのシーンは済んでいたので、その時の衣装をまた着用している。二人ともスーツ、僕はシャツの下にはラノキリアのシンプルなネックガード、僕と類の手首には以前のデートシーンの撮影時にも着けていたお揃いの時計。
この服を脱がすところから撮影は始まる。
「ルイ、kaiを……恋人を抱くんだよ。その手順で進めて、カメラは気にせず二人とも初めての夜を恥ずかしいけど、興奮する。そんな感じでやってね、って実際やっちゃダメだぞ!」
「……やらないよ」
このイケオジは何を言っているんだ。というか、類が童貞なのは知らないのか。普通知らないよね、類ほどのアルファなら場慣れしているくらいに思われているはずだ。
「でも、今のkaiは肌が綺麗すぎるから、ルイがキスマークと噛み跡も首元につけるんだ」
「えっ!? なんで俺? こんなみんなの前でkaiの体を舐めろ……と?」
「うん、だって君は他のアルファの匂いダメでしょ、今日のためにkaiは全てのアルファとの関係を絶ったんだよ。もうカイにキスマークをつけられるアルファはルイしかいないからね」
「え……そうなの?」
そうきたか‼ ビリーがビジョンを簡単に変えるはずがなかった。ビリーからは撮影まで誰とも寝るな、クリーンでいろと言われたから、お題のキスマークどうするのかと思っていたけど、まさかの相手役に撮影中にお願いするとは。
僕はこっそりと類に話しかけた。
「類……大丈夫? 嫌ならこの仕事自体、類なら断る権利あると思うよ? プロでもない子が人前でラブシーンなんて無理だよ。類じゃなくても、ビリーなら誰かアルファを見繕えるだろうし」
「いや、やるよ。だって海斗は、アルファと関係を絶てたんでしょ、その相手役が海斗にのめり込んで次のセフレ候補に上がるのも、なんだかダメだと思う」
驚いた、あの時の僕の話から何か察したのかな?
爽に開発された体だけが残ったって、そこまで赤裸々に話して、それ以来アルファとは体だけの関係しか求めてこなかったってことは、僕にとってセフレは必要だと理解したんだろうな。だけど前回の執着アルファの話は類の耳にまで入った。「待て」ができる体になったのなら、アルファホイホイにならないようにと無茶振りな撮影にも付き合うと言っているようなものだ。類は自分のことより他人のことを思いやる優しい子だと思う。
「わかった、僕と初めてをしよう。テーマから考えて僕が類を誘導するのは違うから、類からきて。僕を抱くのを想像して、類がしたいような愛撫をしてね。セックスには正解も間違いもない、類が僕を求めてくれればそれが類と僕だから」
「……わかった」
撮影が始まった。パシャパシャとシャッター音が響く中、僕と類のベッドシーンが始まる。
最初の指示は、類が僕の服を脱がす。さすが類、場慣れしていないはずなのに仕事だと完璧にこなせるんだ。僕はなんだかドキドキしてきちゃった、でも今日の撮影はこれで正解だから良かった。オメガの僕は初めて番になる人と寝る、そんなドキドキする瞬間。お互いに何度もデートをして手首にはお揃いの時計。
そしてもう一つお揃いのネックレスも今日はセットになった。カラーを外した後も、裸のお互いの体を飾るアイテム。ただの裸ならなんの宣伝にもならないからね。
服を脱がされ下着だけになった僕は、そっと類に近寄る。そしてぼそっと類にだけ聞こえるようにつぶやいた。
「キスして……」
類は僕を見て、目を見開いた。そして目の奥が変わった。えっ、何。僕は捕食者にとらえられた小動物のような気持になった。
――食べられちゃう――
次の瞬間、スイッチの入った類がキスをしてきた、そしてのっけから激しいやつ。
「んっ、ふっ、んん、くちゅん」
「ちゅっ、ジュルっ、はぁ、海斗っ‼」
「あっ、ちょっ、んんん」
僕は類にされるままに、快楽に墜ちた。キスが気持ちいい、先ほどからスタジオの空気が変わった、パシャパシャとシャッターの音だけが響く、時折僕たちの水音と、誰かが喉を鳴らすゴクリとする音。それほどまでに静まったスタジオは、もう類の世界観が出来上がっていた。
キスが終わると、ルイは僕をベッドにおろして、うつ伏せにして背中を舐めた。
「ああっ」
ちゅっ、ちゅっとついばむようにキスを落とす、そして背骨一つ一つ確かめるように下から舐めあげていき、うなじにかかると、僕の首に思いっきり吸い付いた。
「んん……はっ」
男に貪られることに慣れているはずなのに、いつも以上に、ううん、今まで以上に気持ちいい、ただ体にキスを受けているだけなのに、僕の前はもう緩く反応していた。
仰向けになったらみんなにバレちゃう。そんな恥じらいも交じり類を振り返って、もう抑えてって言おうとして下から見上げたら、そのまま仰向けにされた。そして僕の胸に吸い付く。乳首を舐められて、吸われて、僕の背中がのけぞった、そして完全に勃ってしまった。
「ああ、や、やめて」
「気持ちいの間違いでしょ? もう感じている」
「ああ、恥ずかしいっ」
僕の前も触れられた。汗と類の唾液とで僕の胸も首も濡れている。僕は思わず時計をした手首を自分の口元にもっていった、僕は自分を守るようにそうした、そして類はその僕の手首を掴んで唇を奪おうとした。
「カットカット‼」
「あっ」
類の目が元に戻った、僕は息を切らしながら、安堵した。
「はぁっ、はっ、お、終わり?」
まだ二人の吐息のかかる距離にいる、類はハッとして、僕を上から押さえつけて見下ろした体制のまま、固まっている。
「類?」
「あっ、ごめん、俺っ」
みんながわぁって大声を上げた。
「凄く良かった‼ 二人ともなんてセクシーなの。とってもイイわ」
「ああ、迫真の演技だった。まるで今から二人がセックスするかのような触れ合いだ、ブラボー。kaiのその手を顔にもっていくところと、それを抑えるルイの手首の時計の交差はよく魅力を出せていた! オメガの戸惑いと、アルファの執着、それに時計が絡み合ってとても良かった。二人とも上手くやったよ」
カメラマンのアマンダとビリーが絶賛した、周りのスタッフからも拍手が届いた。それほどまでに迫真に迫る演技、というかあれは本気でしょ。現に僕の股間は今大変なことになっている、ちらっと見た類の股間もだった。二人気まずい空気になった中、周りのみんなは演技が上手いって褒めている。
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