運命を知りたくないベータ

riiko

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イギリス編

20、幸せの時間

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 こんなに穏やかな日々が来ると思わなかった。類の家に引っ越して驚いたのはその広さ。実家が持っているマンションだと言うけど、実家って日本でしょ。なんでイギリスに家持っているんだろうと思ったけど、納得の答えだった。

『ラノキリア専属モデルkaiカイのお相手は、日本のサクラジュエリー御曹司だった』

 パパラッチが取った写真に出た見出しがこれ。僕、雑誌見て初めて知ったよ。類はそんなとこの子だったわけ?

 やはり類の実家はすごかった。日本で有名ジュエリーブランドの桜ジュエリーという会社の御曹司。だからビリーと類の親が友達なのかと納得したけれど、それを知って少し気後れした。僕はこんな華やかな世界にはいるけれど、めちゃくちゃ庶民だ。そんな謎のモデルが御曹司の恋人だなんて、世界的にも知られてしまった。

「ごめん、隠していたつもりはないんだけど、俺の実家のことまで言うタイミングがなくて」
「ううん、いいけど。でもそんなお坊ちゃんならなおさら、僕みたいなベータと付き合うなんて、お家の人によく思われないんじゃないの?」
「ああ、さっそく実家から連絡きたけど、よくやったって言われたよ。有名モデルのカイだよ、両親も兄弟も喜んで大変だった! もともとカイのバース性は謎だからベータとは思ってなかったみたいだし、俺もそこは海斗のプライベートだから伝えてない」

 そうだったのか、きっと僕がベータと知ればご両親は反対するだろう。高校生の息子に、オメガの子をつがいにできなかったことに怒った類の親だ。僕がオメガでないなら交際は反対するだろう。

「気を使ってくれてありがとう、類の両親だけど……僕のバースを伝えたところで他の人に漏れないとも限らないから、僕がモデルでいる間は黙っていてほしい」

 それはつまり、僕とは別れる時がくるから言う必要はないということ。どうせ類もいつかはオメガをつがいにする日がくるのだから。

「うん、俺の両親は息子の俺から見ても信用ならない人だから、言わない方がいいし、俺も付き合っているのは濁した。まだマスコミが騒ぎ立てているだけで、俺たちの真実はビリーと海斗の事務所しか知らないしね。誰と付き合おうが親は関係ない、もちろん結婚する時は言うけどさ、でも俺は三男だから海斗との結婚は問題ないよ、上二人の兄たちにはもう子供もいるし俺に跡取りは必要ないから」
「そうだね……ってえ? 結婚!?」

 類は照れた顔して僕を見た。

「海斗はまだリハビリかもしれないけど、俺は本気だよ。俺まだ結婚できない年だけど、十八歳になったら改めてプロポーズするから」
「ええ!? 僕たち付き合い始めたばかりだよ」
「なんだろう、海斗とは空気感というか、なにかがしっくりくるんだ。説明は難しいけど本能から求める感じ」

 類は大丈夫かな? 以前のオメガとの話もそうだけど、いきなりそんな人生決める決断早くない? それともアルファってそういうもの?

「僕にアルファとオメガのそれを求められても困るよ」
「そんなことは求めていないけど、フェロモンじゃなくて心が震えるってそれこそ本気の愛だと思わない?」

 僕は驚いた、アルファからそんなこと言われたのは初めてだった。

「類……急ぎすぎないで、僕の方から告白して始まった関係なのに、どうしたの? まさか類がそこまで僕にはまってくれているとは思ってなかったから、驚いた」
「ごめん、前科があるから惚れっぽいって呆れられても仕方ないけど、でも海斗に初めて会った時から惹かれていた。有名モデルだから憧れなのかと思っていたけど、話すと中身も好きになっていた。海斗が過去を話してくれた時、俺が守りたいって思ったんだ。だから海斗が体だけの関係が欲しいのはわかっていても、どうしても心も繋がりたくて、俺の方が海斗に本気で惚れている。温度差があるのもわかっているけど、でもわかって欲しい。俺は本気で海斗とのこれからを考えているから」
「……類」

 こんな真剣に言ってくれる類が愛おしい。

 だけど僕はまだ今一つアルファを信用できない部分がある、それはフェロモンに左右されるということ。あんなに愛を誓った爽だって、たった一瞬の出会いで僕を捨てた。だから類だって、もし運命に出会ったらわからない。僕だって今までにないくらいに真剣に類を想い始めているけれど、だからこそ本気になったら怖いことも知っている僕は、ズルい逃げ方をするんだ。

「ありがとう、僕も類に真剣だよ。でも今はもっと気軽に楽しもうよ、まだ僕たちお互いのことをほとんど知らないし」
「そうだね、ごめん。俺まだ海斗から何一つ信用を得られるようなことしてないのに、いきなりこんなんじゃ、軽い男って思われても仕方ないよね」
「いや、軽くはないよ。そこまで童貞でいたくらいなんだから」

 それを聞いて、類は照れくさそうに笑った。

「海斗、いつまでも童貞言うよね。それこそここまで大事にしてきた童貞をもらってくれたからには、それなりに責任感じてくれる? 俺のこともっと真剣に受け取って欲しい」

 それを言われちゃうと責任重大な気がしてきた。

「そうだね、貴重なアルファの初めてをもらったんだもの、僕はこれでも真面目に類のこと想っているよ、ただゆっくり進めたいだけ」
「そうだね、これからは一緒に暮らすし、お互いのこともっと擦り合わせていこう」

 それからの僕と類は昔からの知り合いなのかなと思えるくらい、全てがしっくりきた。

 簡単に始まった同棲だったけれども、朝起きた瞬間から僕の幸せは始まって、そしてお互い日中は別々に過ごすも、夜には家でまた再会する。

 お互いの好きな食事をして、お互いの好みを知る。いつもディナーは二人きりで過ごす、そして一緒にお風呂に入ってその後は愛し合う。とても自然な流れの中に愛が入り込んできた。疲れて眠りに落ちて、そして朝一番に好きな人の顔を見る。

 そんな穏やかな日々が自然に始まって、一日ごとに一つずつピースがはまっていくかのように、日が経つごとにしっくりくる。僕が類を求め、そして類が僕を求める、片方だけの欲望ではなくお互いにお互いを求める関係。

 僕にまたこんな日々が来るとは思わなかった。ううん、きっとこんな日々は初めてだった。いろんな過去の経験があるからこそ、今の幸せがわかる。

 僕はいつの間にか、類を愛してしまった。
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