回帰したシリルの見る夢は

riiko

文字の大きさ
23 / 54
外伝 儚く散った公爵令息

5 フランディル 1

しおりを挟む
 シリルと気持ちが繋がった。しかし、もうお別れの時でもあった。

 シリルが最後の力を振り絞り、私に思いの丈を伝える。

「ダメだよ、フラン。僕たちはもう間違えたらいけない、最後にあなたの本音を聞けて良かった。生まれ変われるなら、またあなたを捜す。僕は、何度でもあなたに還るから……」

 私の胸の中で最後の言葉を話すと、微笑みながら瞳を閉じるシリル。

「シリル! ああ! シリルっ、シリルっ、あ、あぁ、あああ」

 固く目を閉ざしたシリルを抱きしめ、ひたすら泣き叫び続けた。医師がシリルの死を確認すると、皆が気を利かせて部屋を出ていった。

「シリル、シリル、」

 どれくらいの時間ベッドの上でそうしていたのだろう。いつの間にかシリルは冷たくなっていた。

「シリル……」

 私と抱えられたシリルを見守る人がそこいた。

「フランディル、もうシリルを解放してあげないさい。この子の両親にも会せてあげないと」
「うっ、うう、は、母上」
「お前の気持ちはわかるけど、シリルのことを理解してあげなさい。この子は若くして両親と引き離された。まだほんの子供だよ。最後のその綺麗な顔を、ゼバン公爵にも見せてあげよう。シリルだっていつまでもお前に独占されていたら、浮かばれないよ」
「うっ、は、はい」

 シリルがこの世を去って一日もの時間が経っていたらしく、私は力が抜けて全く動けなくなっていた。母が騎士たちを呼び、私を騎士に託した。扉が開くと、ゼバン公爵とその奥方、そしてシリルの兄アランがいた。憔悴しきった私には目もくれず、三人はシリルの眠る寝台に走っていき、悲痛な叫び声と、泣き声がその部屋に響き渡った。
 胸が張り裂けそうだった。
 罪悪感より、私は半身を失った喪失感で、もう何もできなかった。彼の両親にかける言葉なんて探すことすらできないままに、呆然として母の専属騎士に引き取られた。
 どうしてこんな事態になってしまったのか、今さら足掻いても遅いことはわかっているが、時間を戻すことができるのなら、あの日、あの場所……最悪の出会いの場所に戻り、すべてをやり直したい。シリルがアシュリーを知った日に戻り、それまで疑問を持つことなくしてきた王族の罪をシリルに謝り、そんな自分を受け入れて欲しいと、懺悔して、求婚したい。叶うならばシリルを抱きしめたい。
 ――あの日、あの場所で……
しおりを挟む
感想 593

あなたにおすすめの小説

愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます

まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。 するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。 初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。 しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。 でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。 執着系α×天然Ω 年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。 Rシーンは※付けます

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます! 婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

βな俺は王太子に愛されてΩとなる

ふき
BL
王太子ユリウスの“運命”として幼い時から共にいるルカ。 けれど彼は、Ωではなくβだった。 それを知るのは、ユリウスただ一人。 真実を知りながら二人は、穏やかで、誰にも触れられない日々を過ごす。 だが、王太子としての責務が二人の運命を軋ませていく。 偽りとも言える関係の中で、それでも手を離さなかったのは―― 愛か、執着か。 ※性描写あり ※独自オメガバース設定あり ※ビッチングあり

白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる
BL
フレア王国の第3王子シルティ(18歳.Ω)は、王宮騎士団の団長を務める、キーファ侯爵家現当主のアリウス(29歳.α)に、ずっと片想いをしている。 そんなシルティは、Ωの成人王族の務めとして、自分は隣国のαの王族に輿入れするのだろうと、人生を半ば諦めていた。 だが、ある日突然、父である国王から、アリウスとの婚姻を勧められる。 二つ返事でアリウスとの婚姻を受けたシルティだったが、何もできない自分の事を、アリウスは迷惑に思っていないだろうかと心配になる。 ─が、そんなシルティの心配をよそに、アリウスは天にも登る気持ち(無表情)で、いそいそと婚姻の準備を進めていた。 受けを好きすぎて、発情期にしか触れる事ができない攻めと、発情期の記憶が一切ない受けのお話です。 拗らせ両片想いの大人の恋(?) オメガバースの設定をお借りしています。ぼんやり設定です。 Rシーンは※つけます。 1話1,000~2,000字程度です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。