初めては好きな人と

riiko

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2 淫乱オメガになるために?

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「おお、お帰り」
「あ、ただいま。え、おじさんその荷物は?」

 帰宅すると、叔父が大量の荷物をまとめていた。

「俺は今日から漁業へ行って、早く借金分を稼いでくる」
「え、もうなの?」
「そっちはどうだった? やれそうな仕事だったのか」

 叔父はオメガがどういう風に搾取されるか知らないようだ。というか、僕も知らなかった。
 僕はオメガというには普通すぎる容姿で、周りからはベータと思われている。僕自身はオメガを隠していないけれど、あえて言うタイミングというものがなかった。オメガ性でたいして困ったことがないのだから、オメガの生き方をほぼ知らずに生きてきた。
 だから、正直自分がこのような状況になった今でもよくわかっていないかもしれない。どこかドラマのような展開に、頭がついていかなかった。
 叔父が単純に接客業だと思っているのは、闇金からそう言われたのだろう。やはり、ここでも叔父は騙されている。そもそも僕みたいな普通の容姿のオメガが、そういう仕事を求められるとは思わなかったのだろう。

 闇金の社長から言われたことは二つ。

 一つは、僕のような平凡な見た目でもオメガというだけで抱きたいオジサンがいるということで、僕はソープ、デリヘルなどの仕事、いわゆる体を売って金を稼ぐ仕事をするらしい。それが大金を稼ぐ手っ取り早い方法だった。
 もう一つは、仕事を始めるまでに処女を捨てて淫乱になってこいとのこと。
 可愛いオメガなら初物でも人気が出るけれど、僕程度の容姿なら淫乱でない限り売れないと言われてしまった。淫乱になるまで世話をする気はないから死ぬ気で淫乱になって来いって、怖い顔した闇金社長に命令されてきた。
 僕は恐怖を感じて、契約書にサインしてその場を去った。そんなこと、叔父に言えるわけもなく……

「う、うん。ベータ相手に接客するホールスタッフ? みたいな感じだった」

 ベータのオジサン相手の性風俗だけど……とは言えない。

「そうか。なんでオメガ限定なんだろな」
「あ、それは、えっと。アルファやベータに接客されるより、オメガのような底辺っていう人種のほうがいいんじゃないのかなあ?」

 僕の言葉に叔父がすかさず反応する。

「オメガは底辺じゃない! オメガのお前にそんなこと言わせて、本当にすまない。おじさんがすべて悪かった」

 咄嗟に僕は嘘をついた。
 今から過酷なマグロ漁に行く叔父に心配をかけたくなかった。
 ひょっとして叔父も売られてしまうのではないかと心配した僕は、勇気を振り絞って闇金社長に聞いたら、そこは本当にマグロ漁だと教えてもらえたので少し安心した。いや、マグロ漁だから安心というのはおかしいけれど、そこだけは騙されていなかった。

「だ、大丈夫だから。おじさんこそ体壊さないで早く僕を迎えに来てね」
「ああ、必ず!」

 叔父は僕を力いっぱい抱きしめて、そしてマグロ漁へと行ってしまった。
 さて、僕はこれから自分を売るために、誰かに抱かれなければならない。
 あの闇金社長を前に、まだ処女でしたと言えない雰囲気がある。
 しかし淫乱になれって……とんでもないことを条件にされてしまった。僕は十九年間誰とも付き合ったことがないし、オメガといえど発情期は軽かったから、自分が乱れる姿など想像できない。本当にベータみたいなオメガだ。
 だから、光輝くあの人に近づくこともできなかった。
 僕は、ずっと彼を見てきた。高校時代からずっと――。それも、もう終わり
 僕はアルファと関わることなく、体を売る人生を始めなくてはいけない。とはいえ、大学に行くと友人に会い授業を受ける日常は変わらずやって来た。しかし確実に僕の未来はここにない。今を楽しみたいと思うけれど、そうも言っていられない。

 淫乱って……

 その前に処女をどう無くせばいいのかわからない。大学生活も高校生活の延長で、僕はベータだと思われている。だから僕を誘うアルファなどいないし、かといってベータ男だと思われていても僕に興味を持つ女の子はいない。容姿が整っていないと自覚しているし、僕自身、誰かに惹かれることはなかった。ただ一人を除いては……

 僕の中で唯一、光り輝く人に出会ったことがある。それは高校時代のことだった。
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