3 / 38
3 アルファのクラスメートとベータの僕
しおりを挟む
僕の通っている高校は、ほぼベータの生徒だった。
ベータで、私立を目指さない普通の家庭の子ならここに行くだろうと言われる高校に通っていた。
オメガやアルファは専門校がたくさんあるので、あえて普通の高校には通わない。彼らはフェロモンという特性を持つため、安定していないと言われる十代は事故が起こらないように気を付けている。
僕はきっと彼に会わなければずっとベータとして過ごせたと思う。
彼が僕をオメガにした――というと語弊があるが、彼に出会って僕はオメガを自覚した。
彼、戸塚達臣はクラスメートで普通に会話する一人。
臣君は、僕の通う高校で唯一のアルファだった。入学当初モテモテだった臣君は、告白されてもすべて断っていた。そのうち誰も臣君に接することはなくなり、「孤高のアルファ様」と言われるようになった。
そんな臣君だけど、二年の時にクラスメートになってから僕はたびたび彼と話すようになった。そのきっかけはたまたま図書室で会ったとき、僕の身長では届かないところの本を取ってくれたこと。
臣君が図書室で勉強していたのを初めて見た時は、割と勤勉なことを知って驚いた記憶がある。僕の中では、アルファってなんでもできるって勝手なイメージがあったから……
その時の僕も試験勉強をしていて、ちょうど同じ教科書を見ていたから、勇気を振り絞って話しかけたら彼は優しく勉強を教えてくれた。
図書室で勉強する人があまりいなかったのもあり、それ以降も臣君と会うようになった。
そんな他愛もない話をするただのクラスメートだったけれど、図書室で会う頻度が増えてきた頃、少しだけ個人的な会話をするようになっていった。
そんなある日、彼の本質に少し触れたようなことがあった。臣君がぼそりと話したことがある。
「俺、勉強好きなんだよね」
「じゃあ、なんでこんな普通の高校に来たの? 臣君ならもっとレベルの高いところを狙えたんじゃない?」
臣君は笑って答えた。
「俺んち、母子家庭で貧乏だからアルファが通うような私立は無理だったんだ。それにここにはアルファもオメガもいないから気が楽だしね。でも大学は国立を狙ってる。それで学生のうちに起業して母親に楽をさせてあげたい」
「え。臣君、凄いね」
僕は素で驚いた。
僕だって母子家庭ならぬ、叔父と二人家庭。叔父に苦労はさせたくないけれど、楽をさせてあげたいまでは思っていなかった。
まだ高校生なのに、臣君と僕はまるで違って恥ずかしかった。
「そうか? 奈月だってよく一人で勉強してるじゃないか。成績だって悪くないだろ」
学年一位の臣君に僕を認識されているとは思ってもいなかった。叔父に迷惑をかけないように、せめて学生の内はできることは何でもしておきたかった。臣君同様、僕も国立を目指していた。
「僕も、保護者に迷惑かけずに大学進学したいから……お金かからない場所は狙っているけど。おじさんに楽をさせてあげたいなんてことまで考えてなかった。臣君すごいね」
「そんなの俺と同じじゃない? 自分が行きたい場所よりも、自分が行ける場所を考えてるんだから、奈月は偉いよ」
「え……」
笑いながら話す臣君を見ていたら、アルファだからとか、そんなの関係ないと思った。
ただ目標があるからそれに必死な人。そして僕のことをバカにせずに誉めてくれた。
僕の家はそんなに裕福ではなかったから、彼が自分のことを恥ずかしがらずに貧乏と言ったことに好感が持てた。
別に貧乏が恥ずかしいことじゃないし、叔父が一生懸命に僕を育ててくれることに僕は感謝しかない。せめて大学費用は抑えたいと思って勉強を頑張っていたところ、臣君も同じような理由で頑張っていたことに驚いてしまった。
彼の方が先を見ていたのだ。
それからよく図書室で一緒に勉強するようになった。臣君に色々教えてもらって僕の成績が上がったんだ。
そんな穏やかな日々が過ぎていき、僕たちは三年生になった。
そろそろ受験に向けて動き出さないといけないという頃に、僕たちの関係に変化が訪れた。
ベータで、私立を目指さない普通の家庭の子ならここに行くだろうと言われる高校に通っていた。
オメガやアルファは専門校がたくさんあるので、あえて普通の高校には通わない。彼らはフェロモンという特性を持つため、安定していないと言われる十代は事故が起こらないように気を付けている。
僕はきっと彼に会わなければずっとベータとして過ごせたと思う。
彼が僕をオメガにした――というと語弊があるが、彼に出会って僕はオメガを自覚した。
彼、戸塚達臣はクラスメートで普通に会話する一人。
臣君は、僕の通う高校で唯一のアルファだった。入学当初モテモテだった臣君は、告白されてもすべて断っていた。そのうち誰も臣君に接することはなくなり、「孤高のアルファ様」と言われるようになった。
そんな臣君だけど、二年の時にクラスメートになってから僕はたびたび彼と話すようになった。そのきっかけはたまたま図書室で会ったとき、僕の身長では届かないところの本を取ってくれたこと。
臣君が図書室で勉強していたのを初めて見た時は、割と勤勉なことを知って驚いた記憶がある。僕の中では、アルファってなんでもできるって勝手なイメージがあったから……
その時の僕も試験勉強をしていて、ちょうど同じ教科書を見ていたから、勇気を振り絞って話しかけたら彼は優しく勉強を教えてくれた。
図書室で勉強する人があまりいなかったのもあり、それ以降も臣君と会うようになった。
そんな他愛もない話をするただのクラスメートだったけれど、図書室で会う頻度が増えてきた頃、少しだけ個人的な会話をするようになっていった。
そんなある日、彼の本質に少し触れたようなことがあった。臣君がぼそりと話したことがある。
「俺、勉強好きなんだよね」
「じゃあ、なんでこんな普通の高校に来たの? 臣君ならもっとレベルの高いところを狙えたんじゃない?」
臣君は笑って答えた。
「俺んち、母子家庭で貧乏だからアルファが通うような私立は無理だったんだ。それにここにはアルファもオメガもいないから気が楽だしね。でも大学は国立を狙ってる。それで学生のうちに起業して母親に楽をさせてあげたい」
「え。臣君、凄いね」
僕は素で驚いた。
僕だって母子家庭ならぬ、叔父と二人家庭。叔父に苦労はさせたくないけれど、楽をさせてあげたいまでは思っていなかった。
まだ高校生なのに、臣君と僕はまるで違って恥ずかしかった。
「そうか? 奈月だってよく一人で勉強してるじゃないか。成績だって悪くないだろ」
学年一位の臣君に僕を認識されているとは思ってもいなかった。叔父に迷惑をかけないように、せめて学生の内はできることは何でもしておきたかった。臣君同様、僕も国立を目指していた。
「僕も、保護者に迷惑かけずに大学進学したいから……お金かからない場所は狙っているけど。おじさんに楽をさせてあげたいなんてことまで考えてなかった。臣君すごいね」
「そんなの俺と同じじゃない? 自分が行きたい場所よりも、自分が行ける場所を考えてるんだから、奈月は偉いよ」
「え……」
笑いながら話す臣君を見ていたら、アルファだからとか、そんなの関係ないと思った。
ただ目標があるからそれに必死な人。そして僕のことをバカにせずに誉めてくれた。
僕の家はそんなに裕福ではなかったから、彼が自分のことを恥ずかしがらずに貧乏と言ったことに好感が持てた。
別に貧乏が恥ずかしいことじゃないし、叔父が一生懸命に僕を育ててくれることに僕は感謝しかない。せめて大学費用は抑えたいと思って勉強を頑張っていたところ、臣君も同じような理由で頑張っていたことに驚いてしまった。
彼の方が先を見ていたのだ。
それからよく図書室で一緒に勉強するようになった。臣君に色々教えてもらって僕の成績が上がったんだ。
そんな穏やかな日々が過ぎていき、僕たちは三年生になった。
そろそろ受験に向けて動き出さないといけないという頃に、僕たちの関係に変化が訪れた。
231
あなたにおすすめの小説
オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
既成事実さえあれば大丈夫
ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる