初めては好きな人と

riiko

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3 アルファのクラスメートとベータの僕

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 僕の通っている高校は、ほぼベータの生徒だった。
 ベータで、私立を目指さない普通の家庭の子ならここに行くだろうと言われる高校に通っていた。
 オメガやアルファは専門校がたくさんあるので、あえて普通の高校には通わない。彼らはフェロモンという特性を持つため、安定していないと言われる十代は事故が起こらないように気を付けている。
 僕はきっと彼に会わなければずっとベータとして過ごせたと思う。
 彼が僕をオメガにした――というと語弊があるが、彼に出会って僕はオメガを自覚した。
 彼、戸塚達臣とつかたつおみはクラスメートで普通に会話する一人。
 おみ君は、僕の通う高校で唯一のアルファだった。入学当初モテモテだった臣君は、告白されてもすべて断っていた。そのうち誰も臣君に接することはなくなり、「孤高のアルファ様」と言われるようになった。
 そんな臣君だけど、二年の時にクラスメートになってから僕はたびたび彼と話すようになった。そのきっかけはたまたま図書室で会ったとき、僕の身長では届かないところの本を取ってくれたこと。
 臣君が図書室で勉強していたのを初めて見た時は、割と勤勉なことを知って驚いた記憶がある。僕の中では、アルファってなんでもできるって勝手なイメージがあったから……
 その時の僕も試験勉強をしていて、ちょうど同じ教科書を見ていたから、勇気を振り絞って話しかけたら彼は優しく勉強を教えてくれた。
 図書室で勉強する人があまりいなかったのもあり、それ以降も臣君と会うようになった。
 そんな他愛もない話をするただのクラスメートだったけれど、図書室で会う頻度が増えてきた頃、少しだけ個人的な会話をするようになっていった。
 そんなある日、彼の本質に少し触れたようなことがあった。臣君がぼそりと話したことがある。

「俺、勉強好きなんだよね」
「じゃあ、なんでこんな普通の高校に来たの? 臣君ならもっとレベルの高いところを狙えたんじゃない?」

 臣君は笑って答えた。

「俺んち、母子家庭で貧乏だからアルファが通うような私立は無理だったんだ。それにここにはアルファもオメガもいないから気が楽だしね。でも大学は国立を狙ってる。それで学生のうちに起業して母親に楽をさせてあげたい」
「え。臣君、凄いね」

 僕は素で驚いた。
 僕だって母子家庭ならぬ、叔父と二人家庭。叔父に苦労はさせたくないけれど、楽をさせてあげたいまでは思っていなかった。
 まだ高校生なのに、臣君と僕はまるで違って恥ずかしかった。

「そうか? 奈月だってよく一人で勉強してるじゃないか。成績だって悪くないだろ」

 学年一位の臣君に僕を認識されているとは思ってもいなかった。叔父に迷惑をかけないように、せめて学生の内はできることは何でもしておきたかった。臣君同様、僕も国立を目指していた。

「僕も、保護者に迷惑かけずに大学進学したいから……お金かからない場所は狙っているけど。おじさんに楽をさせてあげたいなんてことまで考えてなかった。臣君すごいね」
「そんなの俺と同じじゃない? 自分が行きたい場所よりも、自分が行ける場所を考えてるんだから、奈月は偉いよ」
「え……」

 笑いながら話す臣君を見ていたら、アルファだからとか、そんなの関係ないと思った。
 ただ目標があるからそれに必死な人。そして僕のことをバカにせずに誉めてくれた。
 僕の家はそんなに裕福ではなかったから、彼が自分のことを恥ずかしがらずに貧乏と言ったことに好感が持てた。
 別に貧乏が恥ずかしいことじゃないし、叔父が一生懸命に僕を育ててくれることに僕は感謝しかない。せめて大学費用は抑えたいと思って勉強を頑張っていたところ、臣君も同じような理由で頑張っていたことに驚いてしまった。
 彼の方が先を見ていたのだ。

 それからよく図書室で一緒に勉強するようになった。臣君に色々教えてもらって僕の成績が上がったんだ。
 そんな穏やかな日々が過ぎていき、僕たちは三年生になった。
 そろそろ受験に向けて動き出さないといけないという頃に、僕たちの関係に変化が訪れた。
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