初めては好きな人と

riiko

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5 ミント味のキス

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「とにかく今日病院に行くんだ。オメガだってことは確実だと思うけど、そうだったら発情期の管理とかいろいろ勉強しなくちゃだめだ。自分の身をこれから守るために動いてくれ」
「う、うん」

 またもうんと言ったが、全然意味がわからない。とにかく病院に行けばいいのだろう。

「奈月、これは大切なことだよ。俺たちは未成年だから、バース性の診断には保護者が必要になる。お前は叔父さん一人だったよな? 叔父さんに一緒に病院に付き添ってもらうんだ」

 なんだか深刻な問題になってきたらしい。僕がオメガなわけがないのに。でも臣君があまりに真剣な顔をするから僕は頷くしかなかった。

「わかったよ、今日おじさんに話して一緒に病院に行ってもらうから、安心して」
「ああ、気をしっかり持つんだぞ」

 気をしっかり持つのは臣君の方だと思うよ、とは言えなかった。臣君は倒れてしまうんじゃないかってくらい赤い顔をしているからちょっと心配だ。
 でも僕の言葉を聞いた臣君は安心したように、僕の頭をぽんぽんと撫でた。なぜ撫でる?
 そのとき、僕の体が急に熱くなった。

「あ、あ、なんか熱出てきたかも。今日朝からちょっとだるくて、はぁはぁ」

 頭の上にあった臣君の手が、額に降りてきた。

「大丈夫か? まさか、これって」

 どうしてだかその手を触りたくなってきた。僕は臣君の手を掴むと、その手を顔に近づけて鼻を付け、彼の香りを確認した。

「いい匂い……」
「な、奈月!」

 焦った臣君が手を振り払った。

「ねぇ、臣君、そのタブレット僕にもちょうだい。どうしてもお腹が空いて、ミントのタブレット食べないと収まらないっ」

 自分で何を言っているのかよくわからない。
 だけど、臣君が口に含んだであろうタブレットがどうしてもどうしても食べたかった。彼はタブレットじゃないと先ほど話していたが、どう考えてもタブレットだ。こんないい匂いを一人だけずるい。
 焦っている臣君の顔を、僕は両手で包んだ。

「な、奈月?」

 戸惑うくせに逃げずにいる。僕は彼に勝てることなどひとつもない、それなのに、なぜか今僕は彼より優位にいる気がした。

「それ、頂戴?」
「奈月、タブレットは持ってない。それは俺の匂いだから、え」

 僕は彼の唇に自分の唇を寄せて、口を大きく開けた。食べたい……そう思った瞬間、僕を凝視していた彼に引き寄せられ、きつく抱きしめられた。

「ふぁぁ、臣君いい匂い……」
「奈月!」
 
 臣君の胸に顔を埋めて気持ち良くなっていた。すると臣君ががばっと僕を離した。そして僕をじっと見る。

「奈月……」
「えっ?」

 臣君の顔がどんどん近づいてきて……え、え、え? 僕は臣君にキスをされた。

「ん、んん」

 唇を大きく開き、僕の唇に食らいついてきた。すぐさま舌が僕の口内に侵入する。ああ、そうだった。僕は彼の持っているミントが食べたかった。臣君の中のタブレットを探すが、臣君の舌を必死に追うだけになった。
 図書室にはくちゅくちゅという水音が響く。だんだんと僕の中にミントが満たされると、少し意識が戻ってきた気がした。

 ――あ、いったい僕は今……

「奈月! 奈月っ」
「ふ、はぁ」

 唇が離れたとき、僕は呼吸を求めた。臣君の顔を見ると、うっとりした表情で僕を見ている。え、ど、ど、どういうことぉぉ。

「お、臣君、もうミントはだいじょうっ、んんん」

 またも臣君に唇を食べられた。
 今度こそびっくりして、唇をきつく閉めると、舌でノックされて、なぜか唇を開いてしまった。彼の舌が入り込む。キスされている。なんて気持ちいいんだろう。最初こそ抵抗したけど、抵抗なんてできやしない。おいしいし、気持ちがいい。こんな体験初めてだった。僕たちは長い間キスをした。
 その時、図書室に始業のチャイムが鳴り響いた。
 そこで僕たちのキスは終わった。唇を離したとき、銀糸が僕たちの間に残った。臣君はそこで我に返ったみたいに僕を見て驚いている。
 僕はとっさに彼を突き飛ばして、そのまま下駄箱まで行って帰宅した。
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