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8 僕のミッション
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「ど、どして退学? なにかあった?」
明美ちゃんが聞いてきた。
「うん。僕のおじさんが借金が返せなくなって、それでおじさんはもうマグロ漁船に乗ってるんだけど、僕はこっちで闇金社長が用意してくれた仕事をすることになったんだ」
「や、闇金……な、なんてこった!?」
「乙葉君、時代劇みたいな反応するね」
明美ちゃんはぽかんとしていた。
「この令和の時代に、借金でマグロ漁船って、コント?」
「いやいや、リアルだよ」
明美ちゃんは信じられない! という顔をしてきた。
「そ、それは……、なっちゃんの仕事は、大丈夫な仕事なの?」
「うん、大丈夫かはわからないけど、体を売る仕事らしくて……」
「え? なっちゃんが? か、からだ!?」
「うん、僕が、はは。まさかこんなオメガにそんな使い方があるなんてね」
明美ちゃんの言いたいことはわかる。僕みたいな平凡なベータみたいな男が、体を売るって……。そもそも僕がオメガだということ自体、ネタだと思ってるに違いない。
「なな、な、なんてこったーーーーーぁ!」
乙葉君が席を立って、頭を抱えて叫び出した。さすがに僕も明美ちゃんも驚いた。
「ちょ、乙葉君、うるさいよ?」
「いや、だって、お前、まだ清いよな? そんなことしたことないだろ? それなのに、なんでいきなりそんな人生ハードモードになってんだよ!? まさに借金で体売るって、まだそんな時代錯誤なことが」
「ははは、借金って怖いよね」
「はははじゃない! 処女のお前にそんなこと務まるかぁ! それに臣君はどうすんだよ! あんなに陰から気持ち悪いくらい見てて好きだったんじゃないのか?」
乙葉君はテーブルを叩いた。
明美ちゃんは、どうどうと乙葉君をなだめている。同じオメガ男性だから、僕のこと本気で心配してくれているのがわかるけど、わかるけど、気持ち悪いって……失礼じゃない?
「ストーカーみたいだったかもしれないけど、彼に気づかれてないならセーフじゃない?」
「今はそんな話じゃない! そしてアウトだ」
怒られた。
「なっちゃん、その仕事しか方法はないの? 借金ってそれで返せる額なの? いつまでそんなことするのか聞いた? 弁護士とかもっといろいろ手はあるんじゃない?」
さすが明美ちゃん。
確かにあるのかもしれないが、肝心の叔父はもう海の上。僕が借りた借金でもないし、そもそも家が担保として取られたら僕の寝泊まりするところもなくなるから、寮生活はありがたいかもしれない。この真冬に路上に放り出されて食べ物もないなど生きていけない。寮に入れば家と布団とごはんがある。
「でも、仕方ないよ。もうサインしちゃったし。とにかく一年生が終わるまではまだ今まで通り過ごしていいみたいだから」
「そんな……」
明美ちゃんが悲しそうな顔をする。
「あ、でも、僕にひとつ課題があるの。闇金社長に、たくさん経験しとけって言われたの。処女じゃ使い物にならないから淫乱になって仕事始めなくちゃいけないらしいんだけど、どうしよう、僕そんな相手いないし」
「「え」」
今度こそ二人がドン引きしている。
「どうしたら初体験できると思う? 二人とも引いてるのはわかるけど、僕は経験ないし、仕事としてやらなくちゃいけない課題なんだ」
感情はともかく、あの闇金社長の威圧的な顔を思い出したら、なにがなんでも処女を脱しなければ殺されてしまう。
命がかかっているから必死だ。僕の必死な形相に乙葉君が口を開いた。
「だったらさ、ダメもとで、臣君誘ってみたら?」
「え?」
「これから風俗……の、くだりはさておき。お前が臣君を見ているだけの状態を脱する時がきたんだよ。当たって砕けたら、俺の彼氏に抱いてくれるアルファを見つけてもらうから、とにかく一度臣君を落としてこい。オメガの初体験はアルファに限るからな」
乙葉君は真面目な顔をしていた。今度ばかりは冗談ではなさそう。
「乙葉君の言う通りだよ、なっちゃん。とにかく彼を落としてみて。アルファの彼がなっちゃんに本気になったら何か変わるかも」
「いやいや、変わらないよ? それに臣君と僕は縁が切れてるし、話しかけたところでどうかはわからないよ」
そうなのだ。だから僕はストーカーみたいに彼の行動範囲でバイトをしている。ただ眺めるだけでもいい。近くにいたかった。
そこで乙葉君が。
「やってみなくちゃわからないだろう。オメガだからって搾取されるだけでいいと思ってるのか? 俺たちオメガだってアルファを搾取できるんだよ。俺の彼氏は現に俺に跪いている」
「え、今なんの話? 乙葉君の女王様っぷりの話とか今関係ないんですけど……」
明美ちゃんが呆れた顔で乙葉君を見ていた。
「とにかくだ! 臣君に砕けたら俺がお前の初体験の相手は見つけるから安心しろ。まずは臣君に砕けないと紹介しないからな」
「わ、わかった。紹介ありがとう。僕、臣君に砕けてくる!」
明美ちゃんは、あちゃーという顔をしている。乙葉君はノリノリだった。僕が誰かを探すことは不可能だから、紹介してもらえるならこんなありがたいことはない。
「期限は一週間だ。お前には時間がない! そこまでに落とせなければ俺が奈月の初体験の相手を連れてくるから、とりあえずがむしゃらに頑張れ!」
「はい! 教官!」
そこで呆れた顔の明美ちゃんが、大学に行く時間になったのでお開きとなった。
「とにかく、なっちゃん。悲観しないで、ってしてなさそうね。くれぐれも誰彼構わず誘わないで、まずは彼を落として。万が一だめでも、乙葉君の彼氏の紹介なら、もしかしたら極上アルファがいて、借金返済の役に立ってくれる人を紹介してくれるかもしれないしね」
「そうだそうだ! カレピのセレブ力をこういうときに発揮しないとな」
二人は僕が風俗に落ちるのを阻止しようとしてくれているけど、きっと無理だ。闇金社長はいうなればやくざ。そんな人と僕は契約書を交わしてしまったし、万が一アルファを紹介してもらったところで、僕みたいなオメガを救いたいなんてアルファがいるとは思えない。
「ありがとう、とにかく僕、明日彼の大学行ってなんとか声かけてみるね!」
二人の厚意はありがたかったので、まずは一週間を期限にして臣君に近づくことにした。
明美ちゃんが聞いてきた。
「うん。僕のおじさんが借金が返せなくなって、それでおじさんはもうマグロ漁船に乗ってるんだけど、僕はこっちで闇金社長が用意してくれた仕事をすることになったんだ」
「や、闇金……な、なんてこった!?」
「乙葉君、時代劇みたいな反応するね」
明美ちゃんはぽかんとしていた。
「この令和の時代に、借金でマグロ漁船って、コント?」
「いやいや、リアルだよ」
明美ちゃんは信じられない! という顔をしてきた。
「そ、それは……、なっちゃんの仕事は、大丈夫な仕事なの?」
「うん、大丈夫かはわからないけど、体を売る仕事らしくて……」
「え? なっちゃんが? か、からだ!?」
「うん、僕が、はは。まさかこんなオメガにそんな使い方があるなんてね」
明美ちゃんの言いたいことはわかる。僕みたいな平凡なベータみたいな男が、体を売るって……。そもそも僕がオメガだということ自体、ネタだと思ってるに違いない。
「なな、な、なんてこったーーーーーぁ!」
乙葉君が席を立って、頭を抱えて叫び出した。さすがに僕も明美ちゃんも驚いた。
「ちょ、乙葉君、うるさいよ?」
「いや、だって、お前、まだ清いよな? そんなことしたことないだろ? それなのに、なんでいきなりそんな人生ハードモードになってんだよ!? まさに借金で体売るって、まだそんな時代錯誤なことが」
「ははは、借金って怖いよね」
「はははじゃない! 処女のお前にそんなこと務まるかぁ! それに臣君はどうすんだよ! あんなに陰から気持ち悪いくらい見てて好きだったんじゃないのか?」
乙葉君はテーブルを叩いた。
明美ちゃんは、どうどうと乙葉君をなだめている。同じオメガ男性だから、僕のこと本気で心配してくれているのがわかるけど、わかるけど、気持ち悪いって……失礼じゃない?
「ストーカーみたいだったかもしれないけど、彼に気づかれてないならセーフじゃない?」
「今はそんな話じゃない! そしてアウトだ」
怒られた。
「なっちゃん、その仕事しか方法はないの? 借金ってそれで返せる額なの? いつまでそんなことするのか聞いた? 弁護士とかもっといろいろ手はあるんじゃない?」
さすが明美ちゃん。
確かにあるのかもしれないが、肝心の叔父はもう海の上。僕が借りた借金でもないし、そもそも家が担保として取られたら僕の寝泊まりするところもなくなるから、寮生活はありがたいかもしれない。この真冬に路上に放り出されて食べ物もないなど生きていけない。寮に入れば家と布団とごはんがある。
「でも、仕方ないよ。もうサインしちゃったし。とにかく一年生が終わるまではまだ今まで通り過ごしていいみたいだから」
「そんな……」
明美ちゃんが悲しそうな顔をする。
「あ、でも、僕にひとつ課題があるの。闇金社長に、たくさん経験しとけって言われたの。処女じゃ使い物にならないから淫乱になって仕事始めなくちゃいけないらしいんだけど、どうしよう、僕そんな相手いないし」
「「え」」
今度こそ二人がドン引きしている。
「どうしたら初体験できると思う? 二人とも引いてるのはわかるけど、僕は経験ないし、仕事としてやらなくちゃいけない課題なんだ」
感情はともかく、あの闇金社長の威圧的な顔を思い出したら、なにがなんでも処女を脱しなければ殺されてしまう。
命がかかっているから必死だ。僕の必死な形相に乙葉君が口を開いた。
「だったらさ、ダメもとで、臣君誘ってみたら?」
「え?」
「これから風俗……の、くだりはさておき。お前が臣君を見ているだけの状態を脱する時がきたんだよ。当たって砕けたら、俺の彼氏に抱いてくれるアルファを見つけてもらうから、とにかく一度臣君を落としてこい。オメガの初体験はアルファに限るからな」
乙葉君は真面目な顔をしていた。今度ばかりは冗談ではなさそう。
「乙葉君の言う通りだよ、なっちゃん。とにかく彼を落としてみて。アルファの彼がなっちゃんに本気になったら何か変わるかも」
「いやいや、変わらないよ? それに臣君と僕は縁が切れてるし、話しかけたところでどうかはわからないよ」
そうなのだ。だから僕はストーカーみたいに彼の行動範囲でバイトをしている。ただ眺めるだけでもいい。近くにいたかった。
そこで乙葉君が。
「やってみなくちゃわからないだろう。オメガだからって搾取されるだけでいいと思ってるのか? 俺たちオメガだってアルファを搾取できるんだよ。俺の彼氏は現に俺に跪いている」
「え、今なんの話? 乙葉君の女王様っぷりの話とか今関係ないんですけど……」
明美ちゃんが呆れた顔で乙葉君を見ていた。
「とにかくだ! 臣君に砕けたら俺がお前の初体験の相手は見つけるから安心しろ。まずは臣君に砕けないと紹介しないからな」
「わ、わかった。紹介ありがとう。僕、臣君に砕けてくる!」
明美ちゃんは、あちゃーという顔をしている。乙葉君はノリノリだった。僕が誰かを探すことは不可能だから、紹介してもらえるならこんなありがたいことはない。
「期限は一週間だ。お前には時間がない! そこまでに落とせなければ俺が奈月の初体験の相手を連れてくるから、とりあえずがむしゃらに頑張れ!」
「はい! 教官!」
そこで呆れた顔の明美ちゃんが、大学に行く時間になったのでお開きとなった。
「とにかく、なっちゃん。悲観しないで、ってしてなさそうね。くれぐれも誰彼構わず誘わないで、まずは彼を落として。万が一だめでも、乙葉君の彼氏の紹介なら、もしかしたら極上アルファがいて、借金返済の役に立ってくれる人を紹介してくれるかもしれないしね」
「そうだそうだ! カレピのセレブ力をこういうときに発揮しないとな」
二人は僕が風俗に落ちるのを阻止しようとしてくれているけど、きっと無理だ。闇金社長はいうなればやくざ。そんな人と僕は契約書を交わしてしまったし、万が一アルファを紹介してもらったところで、僕みたいなオメガを救いたいなんてアルファがいるとは思えない。
「ありがとう、とにかく僕、明日彼の大学行ってなんとか声かけてみるね!」
二人の厚意はありがたかったので、まずは一週間を期限にして臣君に近づくことにした。
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