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17 結論は
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そこで明美ちゃんが言う。
「でも、そうだよね。なっちゃんが風俗に入っても入らなくても、臣君はどちらにしても大変な努力をしなくちゃならない……。アルファだからってみんながみんな、誰かの借金をすぐに肩代わりできるほどの財力を持っているとも限らないものね」
明美ちゃんが納得したように語った。
そう、臣君は貧乏だ。
とはいえ今は違うけど、それは再婚相手のお父さんがお金持ちなだけ。お母さんを大切に思っているなら、心配をかけるようなことは臣君はしないと思う。
僕も人の家に迷惑をかけてまでお金なんてほしくない。この身ひとつと叔父の体で賄えるならそうするべきだ。
これは僕たち家族の問題。
「う、うん。臣君は母子家庭で僕と同じくそんなに余裕のある暮らしをしてこなかったんだ。今はお母さんが再婚したからお母さんの心配はなくなったけど。でも臣君は自分の力で起業してるから、相当大変だと思うんだ」
話を聞く限り、義理父の援助は受けてなさそうだった。
受け取ったのはあのマンション一つなのかもしれない。これは僕の想像だけど、新婚家庭に大きな息子は邪魔だからマンション与えたとかかな。わからないけど……
「もし仮に臣君がまだ貧乏でお金がなかったら、お金を工面するところからかぁ。考えてみたらまだ大学一年生で、母子家庭に育ったような家庭だったら人の借金背負うほどの余裕はないよね」
明美ちゃんが残念そうに言った。そこで乙葉君が語る。
「明美ちゃん。まぁアルファならきっと何かしら対処はできるはずだし、今はまだ何も気にせず楽しむべきだと思うんだ。恋が叶ったばかりでヘビーな現状はつらいだけだ」
「そうよね。それに淫乱……だっけ? それは臣君と経験して楽しんで経験値を増やすべき案件よね。相思相愛なら自然といろいろ楽しめそうよね」
「明美ちゃんも言うよね~! そうだよ、俺たちオメガはそういう世界感も必要だから、それが大好きな相手なら本当にラッキーだよ」
二人の意見に、そこはそうだと思った。
「というわけで、奈月は臣君との真剣交際(期限付き)を楽しんでこい!」
「はい!」
僕は勢いよく返事をした。
僕レベルが悩んだところで、時間は平等に流れているし、僕の人生も決まっている。身を任せて今は臣君と普通に楽しんでみたい。そんな欲望がわいてきた。
「お、噂をすればだ」
「え?」
乙葉君がカフェの外を見ていた。その視線を追うと、そこには光り輝く彼がいた。
「あら、お迎え? 朝のお見送りに、バイト帰りはお迎えだなんて、ラブラブ!」
「あ、明美ちゃん、でも、僕バイト終わりにここのカフェに来てるなんて言ってないし、臣君は別の用事かもしれないよ」
「え、そうでもないんじゃない?」
明美ちゃんがそう言うと、カフェの扉が開いた。
「奈月!」
「……おみ、くん」
入口から僕を見つけて手を振って声をかけてきた。
たちまち店内の人が臣君を見る。あんな素敵な人が、満面の笑みで誰かに声をかけている。しかもこの辺は彼の大学の近くだから、臣君の存在を知っている同じ大学の人がいるのかもしれない。いろんな人の視線を集めて、臣君はこちらへやってきた。
「わわわ、来たよ来たよ」
「おお、リアル臣君」
二人が戸惑いつつも、面白そうな声を出していた。
僕は臣君に声をかけられて、固まる。彼とはこの一年なんの接点もなかったのに、いきなり体を交える仲になった。外で話したのも、あの日大学で再会した時だけ。
こんな明るい場所で、こんなかっこいい男から声をかけられて僕はどうしていいかわからない。
「奈月、この人たちは?」
臣君が僕の席の前までやってきた。
「あ、僕のバイト仲間」
「奈月がお世話になってます。俺、奈月の彼氏の戸塚達臣です」
――彼氏!
臣君は「彼氏」と言った。僕の彼氏ってこと? 僕がぽかんとすると、二人も挨拶していた。脳内で「彼氏の戸塚達臣」が消えない。ぼうっとしていると、いつの間にか臣君が僕の隣に座っていて、二人と歓談をしていた。
「奈月、奈月ぃ、おーい」
「あ、乙葉君」
「大丈夫? お前どこか行ってたよ。彼氏が心配してるぞ」
乙葉君がわざと「彼氏」って言ってる。にやにやしてるもん。臣君が僕の顔を覗き込んでいた。近い!
「無理させたよね? 早く帰って休もう。今日も俺んちでさ」
「え?」
「あ、その前に、奈月の叔父さんに挨拶行かないと」
「え?」
「俺たち、付き合いましたって」
臣君は楽しそうに、屈託なく笑った。その顔を見て僕はきゅんきゅんした。付き合っているんだ、僕たち。
僕は今日死んでしまいそうなくらい、幸せだった。
「でも、そうだよね。なっちゃんが風俗に入っても入らなくても、臣君はどちらにしても大変な努力をしなくちゃならない……。アルファだからってみんながみんな、誰かの借金をすぐに肩代わりできるほどの財力を持っているとも限らないものね」
明美ちゃんが納得したように語った。
そう、臣君は貧乏だ。
とはいえ今は違うけど、それは再婚相手のお父さんがお金持ちなだけ。お母さんを大切に思っているなら、心配をかけるようなことは臣君はしないと思う。
僕も人の家に迷惑をかけてまでお金なんてほしくない。この身ひとつと叔父の体で賄えるならそうするべきだ。
これは僕たち家族の問題。
「う、うん。臣君は母子家庭で僕と同じくそんなに余裕のある暮らしをしてこなかったんだ。今はお母さんが再婚したからお母さんの心配はなくなったけど。でも臣君は自分の力で起業してるから、相当大変だと思うんだ」
話を聞く限り、義理父の援助は受けてなさそうだった。
受け取ったのはあのマンション一つなのかもしれない。これは僕の想像だけど、新婚家庭に大きな息子は邪魔だからマンション与えたとかかな。わからないけど……
「もし仮に臣君がまだ貧乏でお金がなかったら、お金を工面するところからかぁ。考えてみたらまだ大学一年生で、母子家庭に育ったような家庭だったら人の借金背負うほどの余裕はないよね」
明美ちゃんが残念そうに言った。そこで乙葉君が語る。
「明美ちゃん。まぁアルファならきっと何かしら対処はできるはずだし、今はまだ何も気にせず楽しむべきだと思うんだ。恋が叶ったばかりでヘビーな現状はつらいだけだ」
「そうよね。それに淫乱……だっけ? それは臣君と経験して楽しんで経験値を増やすべき案件よね。相思相愛なら自然といろいろ楽しめそうよね」
「明美ちゃんも言うよね~! そうだよ、俺たちオメガはそういう世界感も必要だから、それが大好きな相手なら本当にラッキーだよ」
二人の意見に、そこはそうだと思った。
「というわけで、奈月は臣君との真剣交際(期限付き)を楽しんでこい!」
「はい!」
僕は勢いよく返事をした。
僕レベルが悩んだところで、時間は平等に流れているし、僕の人生も決まっている。身を任せて今は臣君と普通に楽しんでみたい。そんな欲望がわいてきた。
「お、噂をすればだ」
「え?」
乙葉君がカフェの外を見ていた。その視線を追うと、そこには光り輝く彼がいた。
「あら、お迎え? 朝のお見送りに、バイト帰りはお迎えだなんて、ラブラブ!」
「あ、明美ちゃん、でも、僕バイト終わりにここのカフェに来てるなんて言ってないし、臣君は別の用事かもしれないよ」
「え、そうでもないんじゃない?」
明美ちゃんがそう言うと、カフェの扉が開いた。
「奈月!」
「……おみ、くん」
入口から僕を見つけて手を振って声をかけてきた。
たちまち店内の人が臣君を見る。あんな素敵な人が、満面の笑みで誰かに声をかけている。しかもこの辺は彼の大学の近くだから、臣君の存在を知っている同じ大学の人がいるのかもしれない。いろんな人の視線を集めて、臣君はこちらへやってきた。
「わわわ、来たよ来たよ」
「おお、リアル臣君」
二人が戸惑いつつも、面白そうな声を出していた。
僕は臣君に声をかけられて、固まる。彼とはこの一年なんの接点もなかったのに、いきなり体を交える仲になった。外で話したのも、あの日大学で再会した時だけ。
こんな明るい場所で、こんなかっこいい男から声をかけられて僕はどうしていいかわからない。
「奈月、この人たちは?」
臣君が僕の席の前までやってきた。
「あ、僕のバイト仲間」
「奈月がお世話になってます。俺、奈月の彼氏の戸塚達臣です」
――彼氏!
臣君は「彼氏」と言った。僕の彼氏ってこと? 僕がぽかんとすると、二人も挨拶していた。脳内で「彼氏の戸塚達臣」が消えない。ぼうっとしていると、いつの間にか臣君が僕の隣に座っていて、二人と歓談をしていた。
「奈月、奈月ぃ、おーい」
「あ、乙葉君」
「大丈夫? お前どこか行ってたよ。彼氏が心配してるぞ」
乙葉君がわざと「彼氏」って言ってる。にやにやしてるもん。臣君が僕の顔を覗き込んでいた。近い!
「無理させたよね? 早く帰って休もう。今日も俺んちでさ」
「え?」
「あ、その前に、奈月の叔父さんに挨拶行かないと」
「え?」
「俺たち、付き合いましたって」
臣君は楽しそうに、屈託なく笑った。その顔を見て僕はきゅんきゅんした。付き合っているんだ、僕たち。
僕は今日死んでしまいそうなくらい、幸せだった。
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