初めては好きな人と

riiko

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19 叔父さんは…

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 僕たちは、落ち葉でいっぱいのイチョウ並木を手をつないで歩いた。

「これから奈月の家に行っていい?」
「あ、あの。いいけど、でもおじさんはいないよ」
「まだ仕事中かぁ。いきなりじゃ迷惑かな」

 仕事は仕事だけど、家の隣の町工場……ではなく、マグロ漁船。さて、臣君になんて言おうかな。

「あの、おじさんはちょっと前から仕事で海に行ってて、家にはいないんだ」
「え? じゃあ奈月は今、一人暮らしなの?」
「そ、ういうことになるかな」

 臣君が急に怖い顔をして、僕の腕を掴んできた。

「危ないよ、オメガの一人暮らしだなんて! いますぐ俺の家に荷物をまとめて移動しよう」
「え⁉」
「俺のつがいになる人を、古民家みたいなセキュリティーの低いところに置いておけない」
「こ、古民家?」
「とにかく、奈月の家に荷物取りに行こう」
「あ、うん」

 臣君は僕とつがいになるつもりなのだろうか。それは、たぶん無理だと思う。つがいのいるオメガは他の人と体を交えることができない。僕はこれから――

「奈月?」
「あ、うん。ごめん」

 立ったままぼうっとしてしまった。
 そうだった。いったん風俗に行くことは考えず、今は臣君と楽しむんだ。臣君にたくさん抱いてもらって、性技を身につけなければならない。臣君は再び僕の手を取り歩き出した。
 タクシーに乗ると臣君は僕の家の住所を言った。

「あれ? 臣君に僕の家の住所話したことあった? たしかに駅くらいは伝えていたとは思うけど」
「ああ、高校時代に奈月の家に行ったことあるんだ」
「え? そんなことあった?」

 臣君とは学校でしか会ったことはないはず。
 お互い勉強もだけど、バイトが忙しくて休暇なんてなかったので、外で遊ぶことはなかった。だから、大学生になったら臣君と遊べると思って、わくわくしながら受験勉強していたのに、オメガになってからすべてが崩れ落ちた……
 一瞬でつらい過去を思い出したが、その中に臣君が家に来た記憶はない。

「奈月の知らないところでね」
「え? どういうこと?」
「あ、運転手さん。その信号の手前で止めてください」

 どうやら家についてしまった。そこで臣君が支払いをすると、タクシーの扉が開くと、臣君は驚いていた。

「あれ? 工場は? もしかして、閉めたの? そもそもなんで叔父さんは海に?」
「あ、うん。実は会社たたんだんだ」
「え、なにかあった?」
「あ、とりあえずうち上がって」

 町工場の隣にある古い一軒家が我が家。
 古民家と言われれば古いからそうかもしれない。臣君はいつのまに、僕の実家が町工場をしていることを知っていた?
 僕はただ普通に付き合いたての楽しい時間を過ごしたいのに、そんな時間を過ごす前に現実に直面してるのだろうか。
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