初めては好きな人と

riiko

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22 その電話

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 良いところで、居間に電話の音が鳴り響いてきた。
 僕が急に鳴った電話の音に驚くと、臣君が笑った。

「真剣な話のときに、なんだろね。電話出ていいよ」
「あ、うん」

 受話器を取った。すると、そこから聞こえる声は叔父だった。

『奈月、叔父さんだ』
「え、おじさん? どうしたの? 海でけがしてない?」
『ああ。大丈夫だ』

 臣君が「ヒカルさん?」と小声で言ってくるので、僕はうなづく。臣君が電話を耳元で聞いてきた。
 僕も臣君に聞こえるように、二人で耳を寄せ合った。

『奈月、風俗は行くな!』
「え……」
「え」

 僕と臣君が同時に声を出した。叔父には聞こえてないようでまくしたてる。

『お前、風俗だって納得して、闇金社長と契約したらしいな。なんてことしてんだ! 俺は、お前をそんな風に育てた覚えはない!』
「……」

 隣にいる臣君の顔を見れなかった。なぜ叔父にばれたんだ? というか、叔父はオメガ専門カフェはただのコーヒーショップだと思い込んでいたはずなのに……

『聞いてるのか⁉︎ とにかく、借金は俺がなんとかする。ただ問題なのは、お前が個人的に交わした契約書だ』
「え、どういうこと?」
『契約破棄の場合、違約金は現金で500万。それを払わない限り、お前の風俗入りは止められない』

 そんな契約内容は知らなかったが、なぜ叔父が今更その内容まで知っているのだろうか。家を出たときはそんなこと絶対に知らなかったはず。海の上でどんな情報が手に入ったのか気になった。
 そこで臣君が、受話器を僕の手から受け取った。

「ヒカルさん、どういうことですか? ヒカルさんは工場たたんだだけじゃなくて、借金もしてるんですか? 今どこです? 奈月が風俗ってどういうことですか⁉」
『え、た、達臣君?』

 叔父が驚いた声を出したのを、僕も耳を澄まして叔父の声を聴いていた。

「俺、言ったじゃないですか。奈月を俺が迎えに行くまでお願いしますって!」
『す、すまん』

 臣君の怒る声を初めて聴いて、僕は隣でちびりそうになっていた。叔父も焦っている感じが声から伝わる。急いで何かを伝えようとして電話をかけてきたのだろうが、まっさきに臣君から怒られてしまった。
 叔父が続ける。

『だから、俺は安全なオメガ専門寮に預けるつもりで……、って今はその話じゃなくて!』
「払いますよ、今すぐ現金で500万。それで奈月は風俗に行かなくて済むんですね。奈月のことはご心配なく。あとは奈月から詳しく聞きますから」
『ちょ、達臣くん、まだ話は――』

 プープーと通話が切れた音がする。臣君が受話器を置いた。せっかくの叔父との会話はできず、怒った臣君が目の前にいる。

 ちょっと怖い。
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