初めては好きな人と

riiko

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21 ヒカルさん?

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 なぜか早朝まで体を重ね続けたアルファと二人、僕は煎餅を古い家の居間で食べていた。

「お、これうまいな」
「本当? 良かった。僕のおじさん、お煎餅が大好きなんだ」

 僕も普通に煎餅の話をしたら、臣君がくつろいだ顔から一瞬真顔に戻った。
 臣君、本題忘れてたね? わかるよ、わかる。煎餅は食べたら止まらないし、咀嚼が必要だから、たまに目の前のこと忘れることあるよね。

「ああ、しまった。ついこの昭和な空間でくつろいでいた! ヒカルさんの話だったよね。俺たちはもっと話す必要があるんだった」
「え……ヒカル、さん?」

 一瞬ヒカルさんと言われて、誰だ⁉ と思ったが、叔父の名前だった。おじさんとしか呼ばないから、久しぶりに名前を聞いた。

「そう呼んでいいって言われたから」
「臣君はいつおじさんに会ったの? そもそもこの家に来たっていつの話?」

 叔父からも聞いたことがない。

「奈月がオメガってわかってすぐ。担任に事情話して、奈月の保護者に合わせてほしいって言ったら先生がノリノリで奈月の家に電話して、そしたらヒカルさんが会ってくれることになって、家に招待してくれた」
「えええ、先生にはどんな事情を? 僕たちに何か特別な事情なんて、あの頃なかったよね」
「あったよ。初めての奈月のヒートのとき、俺のオメガだって自覚した。だからそれを先生に言った」

 知らなかった。そんなことがあったの? 担任は僕がオメガになってから、親身になってくれたけど、結局登校が少なくなってたからあまり関わらなかったなぁ。
 臣君は続ける。

「ヒカルさんに、俺が奈月を養えるようになるまでは保護してくださいって頼んだ。それまでは変な虫を付けないでって」
「って、え、僕がオメガだから、もう友達じゃいられなくなったって言ってたから、てっきり嫌われたかと。でも臣君は僕のことを高校時代から好きってい言ってくれて、それも不思議だったんだけど……」
「え、そう思ってたの? あの時の俺、奈月を前にしたら無理やりキスしてたし。今度はキスだけじゃすまなくなるからだよ。貧乏なうちは孕ますわけにいかない」
「孕ますって」

 そういえばそんな話をしてた気がするけど、孕ます相手はオメガ全般のことを言っていたのかと思ったけど、僕のことだったの?

「俺が在学中に起業したら……、成功したら会えるって言っただろう。俺はその目標を胸に今日まで生きてきた」
「言ったけ?」
「言ったよ。俺も興奮してて言葉足りなかったよな、ごめん。でももう逃げられないよ。奈月を抱いた今、もう自分を止めることはできない。今度はうなじを噛んでつがい契約する。奈月、俺と結婚してください」
「え……」
「もう十分養える。俺は奈月といつかできる俺たちの子供を守っていける」
「臣君……」

 臣君は僕のために、この短期間でそこまで頑張ってきたの? だったら、本当のことを言ってもいいかな。叔父の借金を臣君が支払うのは、絶対におかしいけど、僕が他の男に抱かれるのも、臣君からしたら絶対におかしいことだ。
 借金を肩代わりしてほしい、と思っているわけじゃないし、僕を養えるほど稼いでいたとしても、借金の額によっては人を養うことと比べられない。
 借金を抱えているオメガの肩代わりなどできないと判断したなら、僕との関係を諦めてもらう。その方が僕も踏ん切りがつきやすいかもしれない。
 臣君をだまして性技だけを習得するのではなく、臣君に真実を話して、これからの僕の性風俗人生を理解してもらったうえで性技を習得する努力をする。
 それなら、僕は彼をだましていないから、まだ心は穏やかでいられる可能性がある。
 だまして終わらせるより、真実を話して終わらせることの方が正しいように思えてきた。彼がこれまで僕に誠実であったことを考えると、僕も彼に誠実でありたい。

「臣君……、僕、実はっ」
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