21 / 38
21 ヒカルさん?
しおりを挟む
なぜか早朝まで体を重ね続けたアルファと二人、僕は煎餅を古い家の居間で食べていた。
「お、これうまいな」
「本当? 良かった。僕のおじさん、お煎餅が大好きなんだ」
僕も普通に煎餅の話をしたら、臣君がくつろいだ顔から一瞬真顔に戻った。
臣君、本題忘れてたね? わかるよ、わかる。煎餅は食べたら止まらないし、咀嚼が必要だから、たまに目の前のこと忘れることあるよね。
「ああ、しまった。ついこの昭和な空間でくつろいでいた! ヒカルさんの話だったよね。俺たちはもっと話す必要があるんだった」
「え……ヒカル、さん?」
一瞬ヒカルさんと言われて、誰だ⁉ と思ったが、叔父の名前だった。おじさんとしか呼ばないから、久しぶりに名前を聞いた。
「そう呼んでいいって言われたから」
「臣君はいつおじさんに会ったの? そもそもこの家に来たっていつの話?」
叔父からも聞いたことがない。
「奈月がオメガってわかってすぐ。担任に事情話して、奈月の保護者に合わせてほしいって言ったら先生がノリノリで奈月の家に電話して、そしたらヒカルさんが会ってくれることになって、家に招待してくれた」
「えええ、先生にはどんな事情を? 僕たちに何か特別な事情なんて、あの頃なかったよね」
「あったよ。初めての奈月のヒートのとき、俺のオメガだって自覚した。だからそれを先生に言った」
知らなかった。そんなことがあったの? 担任は僕がオメガになってから、親身になってくれたけど、結局登校が少なくなってたからあまり関わらなかったなぁ。
臣君は続ける。
「ヒカルさんに、俺が奈月を養えるようになるまでは保護してくださいって頼んだ。それまでは変な虫を付けないでって」
「って、え、僕がオメガだから、もう友達じゃいられなくなったって言ってたから、てっきり嫌われたかと。でも臣君は僕のことを高校時代から好きってい言ってくれて、それも不思議だったんだけど……」
「え、そう思ってたの? あの時の俺、奈月を前にしたら無理やりキスしてたし。今度はキスだけじゃすまなくなるからだよ。貧乏なうちは孕ますわけにいかない」
「孕ますって」
そういえばそんな話をしてた気がするけど、孕ます相手はオメガ全般のことを言っていたのかと思ったけど、僕のことだったの?
「俺が在学中に起業したら……、成功したら会えるって言っただろう。俺はその目標を胸に今日まで生きてきた」
「言ったけ?」
「言ったよ。俺も興奮してて言葉足りなかったよな、ごめん。でももう逃げられないよ。奈月を抱いた今、もう自分を止めることはできない。今度はうなじを噛んで番契約する。奈月、俺と結婚してください」
「え……」
「もう十分養える。俺は奈月といつかできる俺たちの子供を守っていける」
「臣君……」
臣君は僕のために、この短期間でそこまで頑張ってきたの? だったら、本当のことを言ってもいいかな。叔父の借金を臣君が支払うのは、絶対におかしいけど、僕が他の男に抱かれるのも、臣君からしたら絶対におかしいことだ。
借金を肩代わりしてほしい、と思っているわけじゃないし、僕を養えるほど稼いでいたとしても、借金の額によっては人を養うことと比べられない。
借金を抱えているオメガの肩代わりなどできないと判断したなら、僕との関係を諦めてもらう。その方が僕も踏ん切りがつきやすいかもしれない。
臣君をだまして性技だけを習得するのではなく、臣君に真実を話して、これからの僕の性風俗人生を理解してもらったうえで性技を習得する努力をする。
それなら、僕は彼をだましていないから、まだ心は穏やかでいられる可能性がある。
だまして終わらせるより、真実を話して終わらせることの方が正しいように思えてきた。彼がこれまで僕に誠実であったことを考えると、僕も彼に誠実でありたい。
「臣君……、僕、実はっ」
「お、これうまいな」
「本当? 良かった。僕のおじさん、お煎餅が大好きなんだ」
僕も普通に煎餅の話をしたら、臣君がくつろいだ顔から一瞬真顔に戻った。
臣君、本題忘れてたね? わかるよ、わかる。煎餅は食べたら止まらないし、咀嚼が必要だから、たまに目の前のこと忘れることあるよね。
「ああ、しまった。ついこの昭和な空間でくつろいでいた! ヒカルさんの話だったよね。俺たちはもっと話す必要があるんだった」
「え……ヒカル、さん?」
一瞬ヒカルさんと言われて、誰だ⁉ と思ったが、叔父の名前だった。おじさんとしか呼ばないから、久しぶりに名前を聞いた。
「そう呼んでいいって言われたから」
「臣君はいつおじさんに会ったの? そもそもこの家に来たっていつの話?」
叔父からも聞いたことがない。
「奈月がオメガってわかってすぐ。担任に事情話して、奈月の保護者に合わせてほしいって言ったら先生がノリノリで奈月の家に電話して、そしたらヒカルさんが会ってくれることになって、家に招待してくれた」
「えええ、先生にはどんな事情を? 僕たちに何か特別な事情なんて、あの頃なかったよね」
「あったよ。初めての奈月のヒートのとき、俺のオメガだって自覚した。だからそれを先生に言った」
知らなかった。そんなことがあったの? 担任は僕がオメガになってから、親身になってくれたけど、結局登校が少なくなってたからあまり関わらなかったなぁ。
臣君は続ける。
「ヒカルさんに、俺が奈月を養えるようになるまでは保護してくださいって頼んだ。それまでは変な虫を付けないでって」
「って、え、僕がオメガだから、もう友達じゃいられなくなったって言ってたから、てっきり嫌われたかと。でも臣君は僕のことを高校時代から好きってい言ってくれて、それも不思議だったんだけど……」
「え、そう思ってたの? あの時の俺、奈月を前にしたら無理やりキスしてたし。今度はキスだけじゃすまなくなるからだよ。貧乏なうちは孕ますわけにいかない」
「孕ますって」
そういえばそんな話をしてた気がするけど、孕ます相手はオメガ全般のことを言っていたのかと思ったけど、僕のことだったの?
「俺が在学中に起業したら……、成功したら会えるって言っただろう。俺はその目標を胸に今日まで生きてきた」
「言ったけ?」
「言ったよ。俺も興奮してて言葉足りなかったよな、ごめん。でももう逃げられないよ。奈月を抱いた今、もう自分を止めることはできない。今度はうなじを噛んで番契約する。奈月、俺と結婚してください」
「え……」
「もう十分養える。俺は奈月といつかできる俺たちの子供を守っていける」
「臣君……」
臣君は僕のために、この短期間でそこまで頑張ってきたの? だったら、本当のことを言ってもいいかな。叔父の借金を臣君が支払うのは、絶対におかしいけど、僕が他の男に抱かれるのも、臣君からしたら絶対におかしいことだ。
借金を肩代わりしてほしい、と思っているわけじゃないし、僕を養えるほど稼いでいたとしても、借金の額によっては人を養うことと比べられない。
借金を抱えているオメガの肩代わりなどできないと判断したなら、僕との関係を諦めてもらう。その方が僕も踏ん切りがつきやすいかもしれない。
臣君をだまして性技だけを習得するのではなく、臣君に真実を話して、これからの僕の性風俗人生を理解してもらったうえで性技を習得する努力をする。
それなら、僕は彼をだましていないから、まだ心は穏やかでいられる可能性がある。
だまして終わらせるより、真実を話して終わらせることの方が正しいように思えてきた。彼がこれまで僕に誠実であったことを考えると、僕も彼に誠実でありたい。
「臣君……、僕、実はっ」
222
あなたにおすすめの小説
オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
既成事実さえあれば大丈夫
ふじの
BL
名家出身のオメガであるサミュエルは、第三王子に婚約を一方的に破棄された。名家とはいえ貧乏な家のためにも新しく誰かと番う必要がある。だがサミュエルは行き遅れなので、もはや選んでいる立場ではない。そうだ、既成事実さえあればどこかに嫁げるだろう。そう考えたサミュエルは、ヒート誘発薬を持って夜会に乗り込んだ。そこで出会った美丈夫のアルファ、ハリムと意気投合したが───。
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる