初めては好きな人と

riiko

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37 初めては好きな人と

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 叔父たちと一緒に夕飯を済ませ、楽しい時間を過ごした。そして二人は帰っていった。 
 ビルさんは、見た目は完璧な外国人だったけど、アメリカ人と日本人のハーフだった。アメリカと都内に家を持っているので、叔父とは都内の家で暮らし始めたと言っていた。
 僕たちの生まれ育った家と土地は売りに出していて、この年末で買い手は決まっていた。でもそれでいいと思った。叔父はこれからビルさんと。僕はこれから臣君と暮らしていく。
 僕と叔父は、またいつでも会えるんだ。
 叔父はマグロ漁船を大層気に入ったらしく、また二人で海に出ると言っていた。叔父は漁師になるらしい。それを見守るアルファのビルさん。うん、不思議な感じだけど、いろんな夫夫ふうふがいるし本人たちがそれで満足してるならそれでいいのだと思う。
 僕は復学、というか退学をやめて今まで通り大学に通うことになった。勢いで結婚までが早かったが、子供は大学を卒業してからにしようと話し合った。今は二人だけの時間を過ごそうという意見で重なった。
 臣君は事業をしながら大学に通う。
 僕たちは、出会う前となんら変わらない生活に戻るだけ。ただ、二人が夫夫ふうふになってつがいになった。そして一緒に生きていく。

 年が明けてからは、日常を取り戻した。いつもの早朝カフェバイト。
 結婚したけれど、二人ともまだ学生。これからは学生らしい生活をしようということになった。一緒に暮らして一緒にご飯を食べて一緒に眠る。恋人からやり直そうと、臣君に言われた。
 僕たちは恋人期間がなさすぎるので、今は同棲しているカップルという設定で過ごしていた。とはいえすでにつがいにもなっているから、安心して彼に愛されているし、僕も彼を愛している。
 臣君が養ってくれているのだけど、大学生らしくバイトは続けた。臣君は学業の他に事業があるので忙しいし、日中は二人で過ごす時間はそんなに取れないこともあり、僕がバイトを続けることは同意してくれた。
 僕も臣君も貧乏が長かったから、仕事に追われている方が性に合っている。そんなところもよく似ている二人だった。
 乙葉君からは似たもの夫夫ふうふと言われてからかわれている。誉め言葉でしかないけどね!

「奈月~、旦那兼彼氏がお通りだよ~!」

 今日もバイト中、乙葉君が僕に声をかけてきた。朝のいつもの時間、うん。時間通りだった。僕はカウンターの中に一緒にいた明美ちゃんに言った。

「明美ちゃん、フロア行ってくるね」
「うん、行っといで! 今日の臣君、堪能しなさい、なっちゃん」
「もう、その今日の臣君ってやめてよ」
「ふふふ、家でも会ってるのに、また通学路も見張るって、本人認定のストーカー行為って楽しそう」

 乙葉君がフロアから手招きしてくる。「早く早く!」とはしゃいでいた。乙葉君も結局バイトが楽しくなってきたので、当初の目的である僕を見張るということが終わっても続けていた。
 乙葉君は臣君のスパイだったけど、実際にバイトはしてみたかったと話していた。束縛彼氏からバイトを許されるミッションをもらって、働くことを楽しんでいたみたい。臣君のスパイはただのきっかけであって、僕とはちゃんと友達だった。
 その後も新婚夫夫ふうふを見守るっていう名目で、バイトが許されたらしい。

「乙葉君お待たせ、あ、臣君! 今日も通学姿もかっこいい」
「はいはい」

 臣君が外からこちらを見て手を振った。

「臣君、行ってらっしゃい」

 僕はもう、ちゃんと彼に向っていってらっしゃいを言えている。もちろんガラス越しで聞こえてはいないけど認識されている。もう隠れてない。正々堂々とこの言葉を言えている自分が、毎日嬉しくて仕方ない。
 こういった、付き合いたてのカップルみたいなことも楽しんでいた。彼に出会って恋をして、騙そうとして奮闘したり、でも結局愛していることを知るだけだった。
 こうしてすべての「初めて」を好きな人と迎えている。

 僕は幸せだ。


 FIN
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